みやざきの味と花101ロゴ 厚焼き卵
 
 

●濃密口当たりに驚き
 日南市飫肥の名物「厚焼き卵」を初めて口にした人は、その上品で優雅な味に驚く。プリンに似ているが、色、味ともに、もっと濃密で、プリプリツルツルとした何とも言えない口当たりである。料理というより高級菓子に近い。
 地鶏(じどり)の卵をふんだんに使うのが特徴。深さ5、6センチ、30センチ四方の赤銅なべに、卵20個から30個を溶かして入れ、薄いだし汁を加える。それに砂糖と酒、みりんを少量、よく混ぜて炭火にかける。なべのふたの上にも炭火を載せて、上下からじわじわと、夏なら1時間、冬は1時間20分ほどゆっくりと焼き上げる。
 日南市の出身で、テレビの料理番組などでも活躍している料理研究家の堀江泰子さんは、厚焼き卵は郷土の誇りだと言う。帰郷すると土産は必ず厚焼き卵。自分でも研究しているが、あの名人芸にはとてもかなわないと語る。
 由来は江戸時代にさかのぼる。飫肥藩士、間瀬田泰右衛門が焼き始めたと伝えられる。現在の間瀬田厚焼本家の当主、泰啓さんは十代目になる。
 昔は、卵や砂糖は貴重品で、殿様か上級武士の口にしか入らなかった。厚焼き卵も正月や元服の祝い事、藩が催す花見や観月の宴で出されるくらいだった。
 後に江戸参勤交代で、道中の無事を願って家臣から献上されるようになった。殿様はまず出発前に、そして細島の港に着くまでに、それから船に乗ってと、三度に分けて食べるのが楽しみだったという。
 江戸時代から飫肥に伝わる郷土舞踊に「泰平踊」がある。深編みがさに羽二重熨斗目(のしめ)の着流しと朱鞘(しゅざや)太刀の落とし差し、腰に印籠(いんろう)のあで姿で踊る。その優美なたたずまいを見ると、なぜか厚焼き卵が目に浮かぶ。伝統の芸術品ともいえる厚焼き卵には、そんな風格と、華麗さが漂うのである。
渡辺 綱纜
メモ
 飫肥の本町通りには、復元した商人町がある。白壁とかわら屋根に統一、時代劇風の街並みは歩いていて楽しい。その中の一軒に「厚焼」の行灯(あんどん)とのれんが目につく。行灯には「飫肥城下江戸ヨリ海陸三百四十三里 ませだ屋」とある。厚焼き卵の店は、ほかに同じ本町通に「卵の厚やきこだま」と「おびの茶屋」の2軒があるが、それぞれ焼く量に限りがあり、予約した方がよい。





厚焼き卵の写真
濃密な味は伝統の芸術品

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