みやざきの味と花101ロゴ 甘乳蘇
 
 

●いにしえの甘さ今に
 「手作りの古代乳製品」という触れ込みで、山之口町から栄養に優れた珍味が登場した。「甘乳蘇(かんにゅうそ)」。製品化されてまだ6年だが、既に東京のデパートで販売されるなど、宮崎産乳製品のニューフェースとして着実に浸透している。
 全国的に宮崎の酪農の地位はいまひとつ。生乳生産も1993(平成5)年129,000トンに対し、98(同10)年126,300トンと、頭打ちの状態。そうした中、独自の乳製品として生まれたのが甘乳蘇。
 山之口町富吉で中西牧場を経営する中西広(50)、六子(48)さん夫妻の手作り。生産調整でせっかく搾った生乳を捨てていたことから、六子さんが他県の酪農家に学んで見よう見まねで作ったものを94(平成6)年10月、山之口町の国道269号にオープンした道の駅に置いたところ、好評だった。
 作り方は牛乳30キロをなべで8時間煮つめ、水分を蒸発させるだけ。添加物はいっさい使用しない。そうすると10分の1の3キロに濃縮された甘乳蘇の出来上がり。製法は単純だが、火加減、また湿度が多いと香ばしさに欠けるなど、天候にも製品の良しあしが左右される。六子さん自身の「気持ちが穏やかなときでないと、豊かな風味は出ない」というこだわりもあり、作業は細やか。
 名前は奈良・平安時代、同じ製法で作られた「蘇(酥)」という乳製品の記録があり、そこから取った。当時は甘味料がなく、貴族・高級官僚が美容健康食として愛用していたという。平安時代の日本最古の医学書「医心方」には「蘇は筋力がつき、胆が強くなり、肌や体に潤い、つやが出る」とある。甘乳蘇は文字どおり、いにしえの味を今に「蘇(よみがえ)」らせた。チーズのようなくせがなく、軟らかく、ほのかな甘さが特徴。夫婦手作りの味でファン層も広がっている。
南村 正明
メモ
 製品は固形にして一箱(40グラム2本)1,000円で販売。薄くスライス、サイコロ状に切って食べる。酒のつまみにも好まれる。搾乳したばかりの牛乳から水分を抜いただけで、栄養価はそのまま。中西六子さんによると、大量生産はしておらず、現在は胃腸が弱く、骨粗鬆(しょう)症などの体の調子の悪い人に優先的に分けているという。





甘乳蘇の写真
ほのかな甘さで
いにしえの味を伝える

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