みやざきの味と花101ロゴ 山桜
 
 

●気高さと奥ゆかしさ
 「朝日に匂う山桜花」と古歌にあるように、日本本来の桜の花は山桜である。
 吉野桜は染井吉野という江戸時代以後の改良種。本当の吉野山(奈良)の桜は全部山桜で、だからこそ日本を代表する桜の名所となっているのである。
 宮崎県にはかなりの山桜が残っているが、名所といえるのはまだ少ない。
 鵜戸神宮の森の山桜が毎年2月の終わりには咲き、観光客が「さすがは南国宮崎」とびっくりするのを見て、当時の宮崎交通社長・岩切章太郎氏は「春は峠の桜から」と、堀切峠に山桜の名所を作ろうと思い立った。
 1936(昭和11)年に、ドイツのヒトラー・ユーゲントが来県したのを記念して、堀切峠の手前の山道に、2,000本の山桜を植えた。ところがいつまでたっても、ものにならない。そればかりか少し大きくなると切られてしまう。実は、地元には彼岸になると山桜の花を墓に上げる習慣があって、みな切られてしまうのであった。
 がっかりした岩切氏のところへ、地元の若い人たちが来て、「協力しましょう」ということになり、宮崎交通と共同で山桜の植栽が始まった。10,000本を目標に、毎年植えていった。
 戦後岩切氏は、えびの高原に通じる北霧島有料道路(現在の県道1号)沿いに、3,000本あまりの山桜を植えた。
 日南海岸より遅咲きで3月から5月にかけて、環野から赤松千本原にかけてだんだんと咲き上り、観光客の目を楽しませた。
 山桜は、バラ科サクラ属ヤマザクラ群に属し、宮城県以南から九州にかけて分布する落葉高木。花はもちろん、葉芽の芽だし色も美しい。赤芽と茶芽、黄芽、緑芽などがあり、この芽が花が咲くのと同時に開くので一層美しい。
 花には芳香があり、その気高さと奥ゆかしさがたたえられて、日本の国花となった。
渡辺 綱纜
メモ
 岩切章太郎氏は生前こう述べている。「あるアメリカ人の批評に”日本には桜の花はあるが、桜の木は一本もない”という一語があった。春になると、花見だ、桜祭りだと桜の花で大騒ぎをする。それほど、桜の花と日本人とは切り離せぬくらいに深い関係があるが、その大事な桜の木を一体私どもは平素どう取り扱っているのだろうか。日本人は本当に桜の木を愛しているのだろうか」





山桜の写真
気高さと奥ゆかしさで、
遠目にも美しさが映える

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