みやざきの味と花101ロゴ コブシ
 
 

●昔から五穀豊穣占う
 宮崎の穏やかな早春の空いっぱいに咲き誇る白いコブシの花は、清純で美しく、いち早く山里に春を知らせる。三好達治の詩集「花筐(はながたみ)」の中に「山なみ遠(とほ)に春はきて こぶしの花は天上に 雲はかなたにかへれども かへるべしらに越ゆる路」という孤高隠せいの心境を歌った四行詩がある。純白のコブシの花が、青空を背景とした山路に見事に咲いているさまがありありと見えてくる。
 モクレン科・落葉中高木で、別名ヤマアララギという。通常見られるのは高さ8〜15メートル、直径20〜30センチぐらいまでである。早春、ヤマザクラよりも早く葉が出る前の裸木の小枝の先に、直径約10センチ、よい香りを持つ6弁の白花が1個ずつ群れ開く。本県では県北部の山野に同じモクレン科・落葉高木で、「タムシバ」というよく似た花が自生している。花びらも同じ6枚だが、花の根元にコブシは1枚の葉が付いているのに、タムシバは葉がないので容易に区別できる。
 コブシは北海道から本州、四国、九州に分布する日本特産種である。日本の本草書や文芸では辛夷(しんい)という字をコブシに当ててきたが、本草学本家の中国で辛夷といっているのは、モクレン科モクレン(シモクレン)のことで、コブシは中国には分布していない。秋に熟すと、赤色の種子を白い糸でつり下げる。
 コブシの花を心待ちする人は少なくない。昔から農作を予兆する花として、多くのことわざも残している。「コブシの花が多い年は豊作、少なければ凶作」「コブシの花が上を向いて咲く年は雨風が少なく豊作。横を向いて咲く年は風の日が多く、下を向いて咲く年は雨が多くて凶作」などで、天候の長期予報に使われていた。
 コブシは、宮崎の春一番を飾り立てながら、五穀豊穣(ほうじょう)を占う花の一つである。
大谷 優
メモ
 和名は、つぼみが拳(こぶし)の形に似ているからとも、実が拳のようだからともいう。若いつぼみは漢方で辛夷という。シトラール・シネオールを含み、鼻の疾患薬、また花は香水の原料に用いられる。樹皮、枝葉からはコブシ油を採る。宮崎市源藤町の国道220号・宮崎南バイパス、高岡町田之平の同268号沿いのコブシ並木は見事に育ち、道行く人の目を楽しませている。





コブシの写真
風情豊かな花びらが郷愁を誘う

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