みやざきの味と花101ロゴ ノカイドウ
 
 

●ピンクから真っ白に
 霧島山を代表する植物と言えばミヤマキリシマとノカイドウであろう。えびの高原のキャンプ場付近が最も多く、霧島山全体で現在三百数十株が見つかっている。道路わきにもたくさん見られるため、開花期には容易に観賞できる。花の時期は5月中旬。つぼみのころはピンク色で、花が開くとしだいに真っ白に変化していく。株全体が花で埋まり、そのあでやかさは一見に値する。
 この時期は、花を一目見ようと、訪れる観光客も多い。かつてえびの高原を訪れた作家の檀一雄は「野海棠 花白々と 山明る」と詠んだ。
 ノカイドウは漢字で書くと野海棠となり、野生の海棠ということになる。学名は「マルス・スポンタネア・マキノ」という。マルスとは「リンゴの仲間」、スポンタネアとは「野生の」という意味で、実はノカイドウはリンゴの一種なのである。ただ、果実の大きさは1センチにも満たなく、普通のリンゴに比べるとはるかに小さいし、食べることはできない。ちなみにマキノとは、この植物の命名者である牧野富太郎のことである。
 ノカイドウの方言にトリトマラズというのがある。これはもちろん鳥止まらずの意味で、針状の短い枝が多く、鳥が止まりにくいことに由来している。
 ノカイドウは世界中で霧島山にだけしか生えていない。国の天然記念物にも指定されている貴重品であるが、近年、その生育に黄信号がともっている。原因の一つは、アカマツなどが大きくなってきたこと。ノカイドウは太陽の光を好む低木であることから、他の木が大きくなってくると生育が阻害されてしまう。もう一つは、シカによる食害。枝葉や発芽した若い苗が食べられ、次世代の株が育たないなど深刻な問題となっている。県は十年計画で保護に乗り出した。
斉藤 政美
メモ
 バラ科の低木。渓流沿いの湿った環境に生える。花期は年によって若干異なるが、だいたい5月中旬である。上旬のつぼみのころも十分楽しめるが、五分咲きくらいのころが全体がピンクみを帯びて一番美しい。国立公園内にあり、また国の天然記念物に指定されていることから、枝葉から実にいたるまですべて採集禁止。天然記念物に指定されたのは1923(大正12)年3月。





ノカイドウの写真
あでやかな色合いが
観光客の目を奪う

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