みやざきの神話と伝承101ロゴ 59 丸目山の乳岩様
 
 
 
       
  ●乳の出祈り神社建立
 清武と田野町境の山地に荒平山(標高602.9メートル)がある。この山の北東の麓(ふもと)に丸目という集落があり、丸目から田野町の方に峠を越えると、そこが沓掛である。
 この峠にかかる山陵を丸目山と呼んでおり、そこに乳岩様という場所がある。岩屋の天井部分に、乳首のように2つの丸い岩が出ている。
 この岩には、次のような伝説があって、昔から乳岩様として信仰されている。
 ホオリノミコト(山幸・ヒコホホデミノミコト)が、海神の国から帰国すると、トヨタマヒメがその後を追ってきた。そしてトヨタマヒメは鵜戸の岩屋で、ウガヤフキアエズノミコトを産んだ。しかし、ホオリノミコトがトヨタマヒメがお産をするところをのぞき見たので、トヨタマヒメは海神の国に帰ってしまった。その後トヨタマヒメは愛児の養育のために、妹のタマヨリヒメを遣わした。
 ある日、ホオリノミコトはタマヨリヒメとともに狭野宮(高原町)に向かった。
 鵜戸から七浦七峠を越えて青島に至り、さらに木花を通って丸目の峠を越え、田野に下りようとした。
 ちょうど丸目の峠にかかったころから、ウガヤフキアエズノミコトが腹をすかし、乳を欲しがってしきりに泣き声をたてた。タマヨリヒメは自分の乳首を与えて、あやそうとしたが、乳は出なかった。
 困って思案に暮れているとき、ふとわきの方を見ると、近くの岩屋の天井に丸い乳首のような岩があって、岩から乳のような白い水が滴っているのに気付いた。
 タマヨリヒメは思わず駆け寄り、その水を手のひらに受けて口にした。それは紛れもなく乳であった。ホオリノミコトとタマヨリヒメは大変喜び、早速その乳水を竹筒に入れ、腹をすかして泣いているウガヤフキアエズノミコトに飲ませた。
 ホオリノミコトの一行は、お乳水のおかげで無事に田野に下り、青井岳を越えて霧島山麓の狭野の地に着いた。
 その後ホオリノミコトは、乳が出なくて困っている者のために、乳岩の下に社を建て、乳岩神社として祭らせた。これが乳岩様であるという。
 村人は乳の神様として大切にし、甘酒を入れた竹筒を2本ずつ持って供え、乳の出を祈願するようになった。今でも秋の縁日(10月第1土曜日)には近郷から赤ちゃんを連れた母親の参詣が多い。
 この説話は、鵜戸と狭野をつなぐ伝説として語られるようになったものであろう。
井上美利
 






乳岩の写真
乳岩。
乳首のように2つの丸い岩が見える

       
 
 
 

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