みやざきの神話と伝承101ロゴ 80 髪長媛を祭る早水神社
 
 
 
       
  ●仁徳天皇の妃になる
 日向神話に心ひかれた新潟県出身の作家・坂口安吾(1906−1955)は、みやざきの風物「高千穂に冬雨ふれり」(昭和37年)に次のように書いている。
 「日向は、天孫降臨伝説の地」。しかし、宮崎県と鹿児島県とが高千穂をめぐって「高天原の本家争いをしているでも分かるように、伝説を史実化しようとするのが無理だ。伝説は、これを伝説だけのものとして受けとるのが健全だ。先祖の残した文化遺産として軽く受けとれば足りるのである」
 しかし、諸県君牛諸井(日本書紀本文)(ほかに同書の説に「諸県君牛」、古事記に「牛諸」とある)と髪長媛の話になると、それはぐっと史実味を帯びてくる。諸県君牛諸井は応神天皇時代の日向の豪族。「日向国に嬢子(おとめ)がいます。名を髪長媛といい諸県君牛諸井のむすめです。国色之秀者(かおすぐれたるひと)です」という者があった。応仁天皇は使いをやってこれを招き、桑津邑に住まわせた。やがて仁徳天皇が「その形の美麗(かおよき)」に感じて妃とする(日本書紀本文)。
 また、同書の一説によると、応神天皇に仕えていた牛諸井が年老いて帰国。朝廷の恩を忘れず、代わりに髪長媛を差し出した。媛には角付きのシカ皮を着た多くの人々を従わせた。船で着いたところが播磨(兵庫)の鹿子水門(かこのみなと)で、このことから船人を「かこ」、その出入り口を「港」と言うようになったという。媛はやがて仁徳天皇の后(きさき)になり、その子孫は朝廷に大きな影響を持つようになる。
 この諸県君の本拠地の考証も、考古学などの成果を交えて、神社の祭神や関係人物、地名などさまざまなかかわりで論じられている。祭神1つとっても、2人を祭神とする神社が県内には多くある。例えば、国富町本庄の四八塚古墳群を中心とした地域もそうだ。
 また、都城市・早水神社とその周辺をゆかりの1つとしたのは、鹿児島藩の白尾国柱(しらお・くにはしら)。早水神社(旧沖水神社)の祭神は髪長媛、応神天皇、牛諸井。周辺には霧島四十八池の1つとされる豊富な湧(ゆう)水源があり、霊験あらたかな雨ごいの神面を伝える。
 現在は早水公園として市民の憩いの場になっている。境内に沖水古墳1基があり、近くに島津氏発祥の史跡「祝吉御所跡」がある。
永井哲雄
 






早水公園の写真
早水公園。
市民憩いの場として親しまれる

       
 
 
 

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