みやざきの神話と伝承101ロゴ 90 「十握剣」と神石
 
 
 
       
  ●霧島神 魔物を3つに
 霧島山の東端に長尾山がある。その東ふもとに東(つま)霧島権現と呼ばれていた霧島六所権現の1つ「東霧島神社」(高崎町)がある。イザナキノミコトなど霧島神六座を祭る。社伝は次のように語る。
 イザナミノミコトは火神・カグツチの出産のとき、焼かれて死去した。イザナキノミコトはそれを大変恨み、帯びていた「十握剣(とつかのけん)」でカグツチを三段(みきだ)に切り分けた。東霧島神社はその切り分けた跡で、「十握剣」をご神体とあがめている。
 同神社の参道登り口の奥に「故有谷(ゆやたに)」という小池があり、中に「割裂神石」「裂磐」(さくいわ)と呼ばれる魔石がある。
 この石は、魔物で人々に害を加えていた。それで霧島神が十握剣で3つに切り分けた。その1つは雷神となって飛び去った。残り2つは霧島六所神とオオヤマツミノカミとなったという。
 さらに、この神石のところはイザナキノミコトが切ったところで、3つのうち1つは、宮崎郡大島平原村(現在の宮崎市波島)に飛んでいった。昔、ある人が東霧島の神石の切り断面を紙に写し、合わせてみたところ曲がり具合までぴったり合ったという。
 享保7(1722)年、常陸国(茨城県)の浄観という行者が語ったところによると出雲国(島根県)に奇石があり、土地の人は昔薩摩藩の霧島山から飛んできた石と伝えている。大石を2つに切り裂いた一片の形をしているという。
 東霧島神社境内に残る2つの神石は、江戸時代の記録で、1つが地面上に縦270センチ、横285センチ、厚さ6−40センチ、もう1つが約250センチ四方あり、「真幸院」の文字が見えたという。
 古事記は3神を石析(いはさく)神、根析(ねさく)神、石筒之男神(イハツツノオカミ)とする。また日本書紀のある説では、イザナミが火神カグツチの出産で焼け死んだので、イザナキは1児をわが妻にかえよと号泣、十握剣でカグツチを三段に切った。さらに他の説では雷神とオオヤマツミノカミとタカオカミになった。切ったときの血は天八十河(あまのやそかわ)にある磐石を染め、それで神となって裂磐神と呼ぶようになったと伝える。
 また延喜式にみえる日向国の「去飛」という所が、飛び去った神石に由来しているのでは、とされるものも神石の伝承の広がりを示している。
永井哲雄
 






十握剣で切られた神石の写真
十握剣で切られた神石。
東霧島神社の境内に祭られる

       
 
 
 

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