みやざきのうたと芸能101ロゴ 嶽之枝尾神楽

 
●物語性に富んだ番付
 ねいずる山と入る山と 山とこたえし山人の 山とさかゆる弥勒(みろく)の世にこそ めぐりようた
 山人(山の神)と宿主とが問答を繰り返し、結びに唱和する歌である。「宿借り」の番付は嶽之枝尾神楽(大河内)と若宮神楽(下福良)に伝えられている。
 山人の姿は、赤布のほおかぶりにバッチョがさ。はんてんにみのを着け、幅広の裁っ着けに脚半を巻き、わらじばきの異様な装い。腰に刀、背には柳ごうりを負う。手には竹づえ、御神屋(宿)の主人に相対し、泊まりを申し込む。山人に仏をみている点で古風である。
 問答は来訪の神(仏)の性格を備えており、厄神を払う祝神の姿もとどめる。「牛頭(こず)天皇」の番付も定着し、背景に蘇民将来(そみんしょうらい)の民間伝承を取り込んでいる。
 注目すべき番付も多く、たとえば「宿借り」に続く「注連誉(しめほ)め」から「注連引き鬼神」は迫力のある外神屋の劇である。「星指し」も嶽之枝尾神楽独自、「綱切り」もまた大音声を発し特異である。内神屋・外神屋がうまく使い分けられており、物語性に富んだ神楽だ。
 椎葉村域の神楽は下福良地区に10集落、松尾地区に3集落、不土野地区に6集落、大河内地区に7集落、計26の小集落に伝承されており、まさに”夜神楽の王国”である。
 椎葉神楽に共通する特徴は序番に位置づけられている「板起こし」、狩猟儀礼を取り入れた”暮らしの神事”である。狩猟舞といえば、大河内神楽や大藪神楽の「猪舞」、古枝尾神楽の「猪とり神楽」は豊猟祈願そのもの。村域の神楽には「狩り」の番付が不可欠だ。
 栂尾神楽の「樽(たる)入れ」、向山日当神楽、尾前神楽、尾手納神楽の「生魂殿(しょうごんどの)」は、村人たちが神遊びする面白さがあり、向山日添神楽の「正護院」も同じ趣向。不土野神楽の「正助叔父御の神楽」などは隠れキリシタンであった正助の無事を祈願する舞で、異色の番付である。椎葉村に継承される神楽は、神道化の影響も比較的に 希薄で、県内で最も古風を残しているものとして魅力に満ちている。
山 口 保 明
メモ
 椎葉神楽は11月から翌年1月にかけて奉納されるが、そのほとんどは12月に集中している。しかも土・日を充て行う集落が多く、この時期、椎葉村入りすると、どこかの神楽座に連なることができる。嶽之枝尾神楽は12月第1土・日曜を充てる。場所は大河内竹之枝尾、嶽之枝尾神社拝殿。問い合わせは、椎葉民俗芸能博物館か椎葉村教委へ。





嶽之枝尾神楽の写真
真剣を用い
「綱切り」をする
(嶽之枝尾神社境内)


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