みやざきのうたと芸能101ロゴ 田代若宮神楽

 
●稲作の地語る綱入れ
 父上の子の百姓にかへらなむ 垂り穂の秋のここのふる郷(「悲しき矛盾」)
 地元の歌人、小野葉桜が詠んだ歌である。田代という地名にふさわしく、古くから稲作が盛んで山間地では群を抜いて収穫量を上げた。
 集落の鎮守田代神社は旧称霧島神社。農神として霧島六所大権現を勧請した1社である。飛来した鋤先(すきざき)を祀ったのが、そもそもの事始めとの伝承がある。このため農神楽と位置づけられる。
 1712(正徳2)年の「神社書出帳」に、小祭には日神楽、大祭には夜神楽を奉納していたことが記録されている。
 神楽は12番で序番・終番を含めて14番の編成。序番の「地割神楽」は8つの場面性を備え、ほかの番付においても数番を複合している。すべてを舞うと、舞い明かし(夜神楽)となる。
 かつては12月15日から奉納されたが、現在は11月22日から翌日にかけて。峰地区の集会センター広場に御神屋(みこうや)をかけ、仮宮と定め舞い明かす。
 番付中の出色は「神随」の中にある綱入れ(綱神楽)。別称を「蛇巻き」などともいうが、これは竜神(水神)信仰に派生する祈願神楽。いかにも稲作の伝統を語るにふさわしい。
 綱は雌雄の竜蛇から成り、仮宮の広場を所狭しと御神屋へ向かう。「ヤンザ、モンザ」の掛け声も勇ましく、正面から突き進んで太夫(舞子)を巻きたてる。2体は絡み合いながら頭を並べ、天に昇る姿を演じる。
 人々はさらに高く昇らせようと競り合う。雄が高ければ世情が安定し、好景気になるといい、雌が高いと来年の豊作が約束されるという。水神信仰による作占(さくうら)である。
 伝統の神楽食「豆がゆ」はゆかしい味である。七夕の日の御田祭(おんださい)もそうだが、それぞれ7つの集落が奉仕して準備から直会(なおらい)までを進める。
 峰区は御神屋がけ、花水流区は竜蛇づくり、上野原区は煮炊き用の薪(まき)20荷、小川区はハシ木寄せ、仮迫区は柴(しば)寄せ、和田区は松明(たいまつ)寄せ、若宮・立石区は神楽奉納。神楽は集落全体の祈願芸能であることを物語る。村域には若宮神楽のほか、山瀬・島戸神楽、小原神楽、尾佐渡神楽などがある。
山 口 保 明
メモ
 田代神社大祭当日(23日)、夜明けとともに「住吉」を舞い、ここで注連(しめ)起こしを行う。注連竹を御神屋の前庭に持ち出し、若者数十人が両端に分かれて、掛け声でねじ割る。「竹割り神事」などともいい、神霊をよびさます行為である。御田祭でも若宮神楽が奉納される、問い合わせは西郷村教委へ。





田代若宮神楽の写真
年占の竜蛇を携え進む
「綱入れ」
(峰集会センター広場)


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