みやざきのうたと芸能101ロゴ 中之又神楽

 
●六集落の「冬まつり」
 わが御前は七日七夜の御神楽をまいらすれども 遂に出でもさせ給わん
 手力男命が岩戸の所在をさぐり、戸開明神に岩戸開きを引き継ぐ場面である。岩戸開きを織り込んだ神楽といっても、県内各域趣興を異にする。中之又神楽の場合、まず「若男」が登場し、神主舞の「伊勢」で準備を整え、「手力」「戸開」の両雄によって事を成就する。すさまじいほどの迫力である。
 この4連の番付を待っていたかのように、霜を踏んで6集落から氏子たちが再び集まり、まだ明けやらぬ舞殿(まいでん)を囲む。中之又は弓木、板屋、筧木(ひゅうぎ)、屋敷原、中野、塊所(こぶところ)の小集落から成り、中野にある中之又鎮守神社が祭場。神楽奉納は同社の冬まつりに位置づけられ、通常11月の末か、12月初めの土・日曜に行われる。
 中之又神楽は古風を伝え、1749(寛延2)年の「神事次第」(安倍岩雄家蔵)によれば、祭場(舞殿)の方位の定め方を修験色の濃い「金剛界五仏」によっている。大日如来をはじめ諸仏の来迎を請うたのであり、今も舞殿中央に梵天(ぼんてん)をつるすなど名残をとどめ、千早風の装束をじょえ(浄衣)と呼ぶ。
 さすがにここも山の神楽。注目を集めるのに「鹿倉」と「獅子舞」の番付がある。各集落には山の神、狩りの神をまつる鹿倉社があり、かつては祭日の早朝、各社の鹿倉神(青面)が中之又鎮守神社へ下る習俗があった。「鹿倉」は豊猟祈願の番付、はかまに浄衣、かんもり(冠)をいただき、腰幣を差し、扇子とつえんぼ(鹿倉杖)を手に舞う。同社の祭神出現「大社舞」にも等しい格を備えた重要な番付だ。
「獅子舞」は獅子とり荒神ともいい、陰陽になぞらえて男猪・女猪が登場、ニタズリ(泥水浴び)など猪の生態を演じる。これを荒神がつえんぼで制し、山作(焼き畑)を荒らさぬようにきびしく諭す。
 かるい(竹編みの荷入れかご)を背に、黒面をつけ、おもしろおかしく暮らしの在り方を説く「磐石」も見もの。またここでは尾八重集落(西都市)との交歓神楽も楽しめ、「成就神楽」では一般の見物人も舞子となり、素人舞を披露できる。忘れがたいのは、茶の実油を用いた雑炊や煮しめ、淡泊にして格別の味わいがあった。ぜひとも復活してほしい「食文化」の一つだ。
山 口 保 明
メモ
 中立又神楽は米良系に属し、実に見どころは多い。地舞(導引舞)を伴う「大社舞」「祝(宿)神舞」「天神舞」などの神体出現の番付は荘重さに満ちている。通称嫁女舞は「神和気」「神女気」の文字を充て「かんなけ」と呼ぶが、平地の春神楽にもあり、大幣を肩に女装束を着け、ゆっくりと円を描くように舞うしぐさが見もの。円満な暮らしを願って舞う。問い合わせは木城町教委へ。





中之又神楽の写真
神体出現の「天神舞」
(中之又鎮守神社境内)


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