みやざきのうたと芸能101ロゴ 諸塚神楽

 
●変化に富んだ各番付
 山守が四方四面に倉たてて 中なる泉召すぞ山守            (戸下大神楽)
 みの・かさ・つえを誓約のしるしとして譲り受け、山守(来訪神)と神主とが酒盛りをする。仲直りして、唱和するのがこの歌。「大神楽」は10年に一度の奉納。「山守」の番付は、このときの一番に位置づけられる。
 山から訪れてきた神は、かさをかぶり体にカズラを巻き付け、常盤木のつえをつき、御高屋の神主と問答を交わす。この問答は神仏混交、延々1時間にわたる。見物人を飽きさせないのは、その異様さと張りつめた雰囲気である。冷気の中に味わう伝統の芸、これも神楽の醍醐(だいご)味。戸下神楽においても谷を隔てた南川神楽においても「大神楽」は10年に一度で、めぐりあえば幸運である。
 だが、大丈夫である。同じ趣向の番付が戸下神楽にも南川神楽にも「村方」(山守神楽)と称し定着している。諸塚の夜神楽には、いまひとつ桂神楽があるが、前二者とは趣を異にしており、むしろ高千穂系との共通性が多い。
 諸塚神楽の見どころとして、まずあげたいのは、笹葉葺きで仕出し型の御高屋(御神屋)もさることながら、「門入れ」の準備から「舞い込み」までの村人の動きである。鎮守において招神のできる喜びを告げ、「舞い入れ」の行列を組む。途中で舞う「道かぐら」、八百万の神々の降臨の様が思われて、さながら神代に遊ぶ心地すらする。県域において、もっとも壮大な舞い入れというべきであろう。「舞い込み」も連れ舞が出て、八幡神・荒神・天神様らを導き「招神披露」のかたちで行われる。
 諸塚神楽の各番付も見もの。何といっても流れが変化に富んでいる。着面舞も比較的多く、特に三荒神が登場するのは夜半、「夜中の荒神」ともいい、御高屋正面に並んだ姿には迫力がある。当然、自然現象を舞台背景とした「岩戸」の番付が並び、クライマックスは天照大神の出座。純真な少年が扮(ふん)し、背に日月を負う。春日大明神が岩戸から連れ出すときは、まさしく日の出のとき。みごとな「神話劇」の展開で、参座の人々は感動のときを迎え、思わず手を合わせる。
 諸塚神楽は平成5年11月、「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」として、国の選択を受け、伝統保存と継承活動に力が注がれている。少年たちの舞の披露も、また頼もしい。やはり神楽は集落の芸能だ。
山 口 保 明
メモ
 諸塚の山々はうっすらと雪景色。南川神楽・戸下神楽は旧正月(1〜2月)の土・日曜日に、1週間をずらして奉納される。桂神楽はまた別の日程。諸塚村にはこの3集落のほか、八重の平神楽・小原井神楽などが伝えられている。県内の夜神楽は、その大半が12月までに奉納される。年が明けて参座するなら、諸塚神楽は薦めの一つ。問い合わせは諸塚村教委へ。





諸塚神楽の写真
常磐木を杖に
御高屋の神主と問答する。
「山守」


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