みやざきのうたと芸能101ロゴ ごぜむけ唄

 
●婚礼の席を彩る民謡
 婚礼の席を華やかに彩る「嫁取り唄」は県内各地に歌い伝えられているが、中でも霧島山ろくの「ごぜむけ唄」は、独自の歌唱形式を持つ、風土色ゆたかな民謡である。ごぜむけとは、方言の「御前迎え」の意で、花婿側が飾り馬を仕立てて花嫁を迎えに行く、古くからの風習を指す。その進行に伴って歌われる一連の唄(うた)が「ごぜむけ唄」で、「馬方節」「嫁女の唄」「長持唄」などとも呼ばれている。高原町の「ごぜむけ唄」は、こうした伝統を大切に、歌い継がれている。
 これな座敷は 祝いの座敷 黄金花咲くよう金がなる
 当日は仲人や唄自慢の馬方が、祝いの品を手に花嫁の家を訪れ、良縁を寿(ことほ)ぎ、こうした「もらい受け唄」を歌うことから始まる。準備が整いいざ出発となると
 とと様かか様さらばでござる 三日たったらまた目にかかる 後は兄様頼みます
 送り出す側から「門立ち唄」が歌い出され、花嫁が名残を惜しんで庭を3周する。やがて一行は花婿の家へ向かうが、待ち受ける見物人に対して、今度はお披露目の「道中唄」が歌われる。この声や節の善しあしが、馬方の評価を決めたという。
 もろたもろたよ よか嫁もろた よか嫁見るなら はよ出ておじゃれ
 こうして花婿の家に到着し、三三九度が無事終わると、さっそく祝いの宴に移る。
 床にゃ祝松 わしゃ五葉松 ここが茶所よう縁所
 下がれ下がれよ よう藤の花 心下がればよう身が上がる
 祝い唄に続いて、座くずし唄がにぎやかに歌い踊られ、場が盛り上がってお開きとなる。
 節調や歌われる背景からも、隣接する鹿児島の「ションガ節」とのかかわりが深い。
 ところで西米良村や南郷村、それに椎葉村などにも、同じ形式の「嫁取り唄」が残されている。ただし西米良村では、仲人が馬方役を一手に引き受けるしきたりになっている。
 また椎葉村では馬方役を馬口、花婿の家で待つ唄自慢を受口、とそれぞれ呼び、祝い唄の掛け合いで宴が始められる。古き良き趣の「ごぜむけ唄」によって、婚礼が進められて行く風習は、一人で演じる音楽劇を思わせて楽しい。
原田 解
メモ
 高原町蒲牟田の田島伝氏(69)は、親子二代にわたって馬方をつとめる家柄で、数少ない「ごぜむけ唄」の伝承者でもある。県内の嫁取り唄としては、NHKののど自慢や、映画「男はつらいよ・寅次郎の青春」で全国に紹介された高崎町の「長持唄」や、田園情緒あふれる綾町の「嫁取り唄」のほか、日南市、高岡町、西郷村、高千穂町などにも歌い残されている。





嫁取り風景の写真
古き良き時代の
嫁取り風景


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