みやざきのうたと芸能101ロゴ 夜神楽せり唄

 
●番付の佳境に一体感
 北日向では、秋の風物詩である刈り干し切りが終わると、夜神楽のシーズンを迎える。
 古くから十八郷・八十八社と言われているように、神話と伝説のふる里・高千穂には由緒ある神社が多く、これらと結び付いた祭りや神楽が、大切な町の観光資源になっている。
 中でも一冬通して行われる夜神楽は、ファンタスティックな世界へ誘ってくれる伝統芸能として人気が高く、県内外から多くの見物客が訪れ、ほしゃどんの舞う33番の番付や、手作りの郷土料理を楽しんでいる。
 夜神楽は神々に豊かな実りを感謝し祈る、予祝の行事である。従って神話や農耕狩猟などに関する番付が、日没から夜明けまでの時の経過に合わせて、優美にそして勇壮に繰り広げられる。
 その際歌われる「夜神楽せり唄」は、躍動感にあふれた胸弾ませる民謡である。
 今宵さ夜神楽は十二の干支で 飾りたてたる注連神楽 ノンノコ サイサイ
 様は三夜の三日月さまよ 宵にちらりと見たばかり ノンノコ サイサイ
 今宵さ夜神楽にせろとて来たが せらにゃそこのけ俺がせる ノンノコ サイサイ
 見物客がほしゃどんと一体になって雰囲気を盛り上げる神楽せりは、せり上げて神々を喜ばせる習俗に根ざしている。
 夜が更け番付が佳境に入ると、お互いが肩を組み、鳴り響く太鼓や笛の音に合わせ、この唄(うた)を高唱しながら、庭先でストームを繰り返す。これには、冷え込みをしのぐ目的も含まれている。
 せりは戦後しばらくまで盛んで、座敷と庭を区切る青竹がつかみ割られるほどだったという。
 声自慢の後を受けて全員で合唱する「夜神楽せり唄」は、こうした晴れの場にふさわしく、節調は歯切れ良く、ダイナミックである。
 歌われる歌詞も即興的なものから歌垣的なものまで、幅広く郷土色に富んでいる。またはやし言葉から、佐賀県から長崎県にかけ、皿踊りとして流布している「ノンノコ節」とのかかわりが推測される。
 高千穂の暮らしと共に生きてきたこの民謡も、環境の変化などで、ややかげりを見せつつある。温泉観光の伸展に合わせ、活性化を願いたいものである。
原田 解
メモ
 皿踊り唄として歌われている「ノンノコ節」の一節に、「ノンノコ節はどこでもはやる、肥後も豊後も高千穂も」があり、九州一円に流布していたことが分かる。鑑賞素材としては、地元の佐藤明の唄(東芝EMI盤、MRT記録盤)と、民謡歌手の小西潤の唄(ビクター盤、いもがらぼくとのB面)のほか、田崎てるの唄がNHK記録盤に収録されている。





神楽せり風景の写真
寒さを吹き飛ばす
神楽せり


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