みやざきのうたと芸能101ロゴ 高千穂臼挽唄

 
●農家の暮らしを映す
 二重ねの挽(ひ)き臼(うす)の間に雑穀を少しずつ落とし込み、上の臼石を回転させてその表皮を擦り取り、粉にするのが臼挽き、あるいは粉挽きである。
 県内では五ヶ瀬、高千穂地方のトウキビ(とうもろこし)ずり(擦り)や、米良、椎葉地方のソバ挽きがよく知られている。
 これら九州山地では、焼き畑から収穫されるヒエやアワやトウキビが日常の糧として暮らしを支え、また民俗芸能とも深くかかわり合ってきている。
 小麦五升どま 小唄で挽くが 後のカス挽きゃ 嫁こいし
 回れこの臼 きりきりしゃんと 主のりん気の 回るよに
 臼は挽きよう 挽かねば回ぬ 挽かで回うのが 水車
 そうした作業の中で歌われた「高千穂臼挽唄」は、農家の暮らしを映した素朴な仕事唄(うた)である。この唄の優れた歌い手であった故・押方団一郎は「どの家でも夜なべ仕事として、麦やトウキビや大豆を擦りよりました。骨の折れる一人挽き、相方と差し向かっての二人挽き、中には大臼を回しての三人挽き、五人挽きちゅうのもありました。嫁取りや建前などを控えた家では、毎晩二升も三升も擦りましてな。その際仕事の単調さと眠気を払うために、みんなよううとうたもんですよ」。そう語っている。
 アンダンテのやや沈んだ節調は、臼を回すテンポをなぞり、カス挽きのつらさや、相方となる嫁こいしの願望や、やるせなさを投影している。
 小麦三升ずりゃ へこすり破る 買うちもらえず 身の難儀
 二、三男の悩みが思いやられる一節もある。高千穂地方の雑穀栽培については、明治、大正期の作付面積が、500ヘクタールと記録され、その6割近くをトウキビが占めている。昭和に入り米作が普及すると、比率はぐんと下がり、今では飼料用が主流になっている。
 今宵さ臼挽きゃ 若手の揃い どこで約束  しておいた
 五ヶ瀬地方の「トウキビずり唄」も同系の民謡だが、こちらは収穫したトウキビの皮を、共同でむく作業の際に歌われるもので、若い男女の出会いの場でもあったことから、節調は軽やかで明るい。
 これらの臼挽唄を通して、山村の食文化の歩みやありさまもまた、うかがい知ることができる。
原田 解
メモ
 県内にはこのほか、延岡市や都城市に、「米挽き唄」と呼ばれている「臼挽唄」がある。また北川町でも「米すり唄」が歌われている。トウキビをむいたり挽いたりする際、その実が周囲に飛び散らぬよう、カヤの中で作業を行ったものだと、五ヶ瀬の古老は語っている。





軒先に干されたトウキビの写真
軒先に干されたトウキビが
臼で挽かれる


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