●はやし言葉ユニーク
レクリエーションの場はもとより、学校や職場の運動会などでも広く歌い踊られているのが、「ばんば踊り」である。
この曲が誕生したのは1962(昭和37)年、当時の折小野良一延岡市長が、市民のだれにも親しまれ愛されるふるさと音頭をと、地元出身の作曲家・並岡龍司(なみおかりゅうじ)に制作を依頼したもの。希望に沿って地元に伝わる盆供養の「ばんば踊り」をペースに、風物や人情などの郷土色がゆたかで、徳島の「阿波おどり」のように、市民がこぞって参加し楽しめる新民謡が構想されまとめられた。
鐘が鳴る鳴る城山の鐘が ンヤーコラセ あれは三百年時打つ鐘よ
町の歴史をひそめて響く 歌人牧水おさない頃の 心いとしみ名歌を残す
ヤートセーサートセ
延岡七万石 城下町 昔をしのぶ お城山 鐘の音聞きに来ならんけ
ホラ ヨーイトコセー(以下略)
空の蒼さよ水澄む郷よ ンヤーコラセ 五ヶ瀬 大瀬の二つの川は
町を横切りて港へそそぐ 祝子 北川 風情をそえる やなの群れ鮎しぶきを上げる
川には川舟 屋形舟 やなでは鮎の河原焼き 川風うけて したり顔
古くからの節調に対して「新ばんば」と呼ばれているこの唄(うた)は、太鼓のリズム感を生かして歯切れが良く、集団の踊りにもぴったりである。曲は4節から成り、水郷延岡の名所や歴史、それに工都としての伸びゆく姿を描いている。
とりわけ織り込まれたはやし言葉がユニークである。「鐘の音聞きに来ならんけ」という延岡弁の楽しさ、「三日もしたら日向ぼけ」のユーモア、作詞、作曲を手掛けた並岡龍司のふるさとへの思いが、あたたかい流れをつくっている。
愛宕山から四方を見れば ンヤーコラセ 東や大灘西や山脈よ
南田畑の織りなす綾目 北は六つのマンモス工場 工都延岡 豊かに生きる
日向に来たときゃ 寄って見ね 陽気がよくて間が抜けて
三日もしたら日向ぼけ
コロムビア・レコードに吹き込んだ村田英雄の味のある歌唱で、この唄は息の長いヒット曲となり、県内外で歌い踊られている。新民謡の代表作と言っても過言ではないだろう。
原田 解
並岡龍司の書き下ろした歌詞には、旧ばんば踊りの口説き文句が取り入れられていたが、レコード化の際に諸事情から外され、現在の形に落ち着いた。戦後に作られた数多くの新民謡の中で、北の「ばんば踊り」と南の「いもがらぼくと」はとりわけ、全国区の人気曲として親しまれている。
暮らしに根付いた
「ばんば踊り」
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