みやざきのうたと芸能101ロゴ 的射節

 
●源平絵巻をほうふつ
 県内の唄(うた)どころである椎葉村の民謡「的射節」は、平家落人伝説と結び付いた、秘境ならではの春の祭り唄である。
 的は金の的 弓と矢は白木 放す間の面白や ヨイホー ホンニー
 的を射るなら きりきりしゃんと 那須の与一の末じゃもの ヨイホー ホンニー
 向うは金の的 手前は白木弓 手先わるけりゃ 当りゃせぬ ヨイホー ホンニー
 椎葉地方では旧の正月から春にかけての集落の祭礼に、しつらえられた射場で弓の腕を競う的射が奉納されている。この年中行事は古くからの狩猟生活や、的を射て悪魔を払うという信仰につながる伝統の神事とされているが、また平家の落人たちを弔う「御武者まつり」の催しとしても行われている。
 そしてこれらは山村の暮らしに欠かせない、娯楽やコミュニケーションの場にもなっている。
 それだけに的射の当日は、近隣から大勢の老若男女が集まり、射手と呼ばれる男たちの競射ぶりを熱心に見物する。とりわけ女性たちは手料理持参で、目当ての射手を応援しながら、にぎやかに歌い踊る。
 これの男衆の 的射る姿 門に育てた百合の花 ヨイホー ホンニー
 うちの男どま 的射て暮らす あとの女子どま泣いて暮らす ヨイホー ホンニー
 競射の伴奏歌でもある「的射節」の旋律は、椎葉民謡に共通した律音階で、素朴で陽気で実にしなやかである。歌詞もバラエティーに富んでいる。弓を手にした晴れ姿や、的射を口実に家を空ける男たちを歌ったもの、胸の思いを託したものなど、男女の情愛に絡んだ歌詞が結構多いのも、祭りが数少ない出会いの場になっていたからだろう。また掛け唄形式がとられていることから、古い歌垣とのかかわりも推測される。
 的射では行事の司宰者である前席、進行を担当する射切など、関係者の役割がきっちり定められているほか、射場拝みや射場固めといった昔ながらの儀礼も、大切な要素になっている。中でも事はじめに射手が神に願う唱え詞は、春の日差しに満たされた山峡にこだまする矢羽の音とともに、源平絵巻の世界をほうふつとさせる「的射節」は秘境ならではの民謡である。
原田 解
メモ
 的射には季節に関係なく、忌みごとや出産などの際に、悪魔払いとして行われることもある。また春の的射は大河内小崎の「小崎神社」、大桑の木の「鹿倉大明神」、不土野古枝尾の「弓矢八幡」、それに不土野向山日添の「白鳥神社」などで行われている。詳しくは椎葉村役場まで。





的射風景の写真
伝統の的射風景


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