みやざきのうたと芸能101ロゴ 今年のツバナ

 
● 子供が春の収穫祝う
 あたたかい春がやってきた。待っていたとばかりに子供たちの野あそびが始まる。土手道に駆け出した子供たちを待っているのは黄金色の菜の花畑。そして羽化したばかりの黄色いチョウチョの群れ。
 子供たちは花びらに止まったチョウチョに、そーっと手を伸ばし捕らえようとするが、その度にチョウチョはあっちにひらり、こっちにひらり。逃げたかと思うと、また近づき、からかうように子供たちのほっぺたをかすめたりする。
 子供たちは悔し紛れに、それでも祈りを込めてまじない歌を歌う。
 チョウチョとまれ もとんとき とまれ とまる菜の花 こがねの花か 風に吹かれて
  ひーらひら だいが持っちょっでしょ
 あら不思議、歌に聞きほれたのか、それともまぬけなチョウチョもいたりするのか、器用な子の手につかまったりする。
 「やっぱり、まじない歌は効けるねぇ」
 「そーらそうよ」
 子供たちはなんとなく勝ち誇ったような気分を確かめ合いながら、次の土手に向かう。
 野焼きのあとの黒い土手に、にょきにょきっと立ち上っているもの、それはさみどり色に芽吹いたばかりのツバナだ。しこしことした歯ごたえが、待っていた春の味なのだ。
 「人ん前にならーんごっ」
 突然先頭の小さな子が大声で叫んだ。
 あらあら不思議、前に駆け出そうとしていたガキ大将までがぴたりと止まってしまった。先頭の小さな子は、縄張り宣言の効果を確かめると、やおら覚えたばかりの歌を歌い始めた。おおらかでゆったりとした収穫の歌だ。
 今年のツバナは よくよくできた かいっ ちゃゆっくゆっく 摘んだほうがましじゃ
  耳鳴れスッポンポン 耳鳴れスッポンポン
 子供たちはだれからともなく手をつなぎ、輪あそびの形を整えていく。歌の前半では円形に回り、後半「耳鳴れ」では手のひらを耳にあて、「スッポンポン」で両手をたたく。
 歌詞にアドリブが生まれ、振りにバリエーションを加えながら、子供たちの収穫のうたげは日没まで続く。
高橋 政秋
メモ
 今回から「わらべ歌の部」に移る。「チョウチョとまれ」は高城町古田テイさん(明治28年生まれ)に聞いた歌。チョウと花と子供たちが渾然(こんぜん)と溶け合った美しくも楽しい歌。「今年のツバナ」はツバナの豊作を歌う遊び歌の世界。数多い宮崎のわらべ歌から20曲を選び、その生きた姿を探っていく。





今年のツバナ さし絵
さし絵 増竹更一郎


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