みやざきのうたと芸能101ロゴ おしろのさん

 
●幻想誘うお手玉遊び
 日差しがなえて山里に秋色の濃くなるころ、路地の日だまりや社寺の片隅で、この歌が聞こえてくる。
 おしろのさん いまの流行りの電気馬車
  十二時頃にはどこへつく 宿屋でしょ
  宿屋満州の奥さんが 髪をゆらゆら丸まげに
  ちりめん羽織をひふにして ひーにふーにみーによ いーにむーになーにや
  こーこのつーにとーよ
  とおまで数えて おしろのさん
 この歌を聞いていたのは昭和の初期、筆者幼児のころである。女の子たちがお手玉遊びで歌っていた。電気馬車って何だろう、満州ってどこだろう。この人は旅に出るのだろうか。小さな胸を連想が流れる。そして、
  丸まげ、ちりめん羽織、ひふ…
 ここらにくるともう幼児の連想は広がりを失うのだが、何ともやみ難いような幻想の世界に遊んでいたのを思い出す。
 歌は遊びを伴っていた。お手玉遊びであるが、持病ともいえる腹痛の発作の中に幼児期を過ごしていた筆者は、特に寒中は男の子たちと遊ぶ機会は少なかった。5つ違いの姉の後にいつでもくっついていた。
 お手玉遊びには、易から難への段階があった。両手2つ玉が初歩のグレードで、次が片手使いである。
 「女の子の遊びじゃが、男ん子がするもんか」
 からかわれながらやってみるが、思うようにいかない。2つの玉は手元を離れ、途方もない所へ散ってしまう。
 女の子たちは玉を3個に持ちかえ、4個に増やしていく。何と快い手さばきであることか。
 まだあった。3つ玉には〈切る〉といって、1つの玉が上がっている間に2つの玉を手元で素早く切り替える手が組み込まれる。その手が入る部分は決まっていて、その詩句が巡ってくるのが楽しみだった。その速い手さばきでは数珠玉が独特の乾いた音を発するのだが、今思えばあれは、「タッカタッカタン」の土俗的なリズムに隠れていた「タタタタン」の3連符のリズムだったわけである。
 この切りの場面の秘密っぽいリズム、それと幻想に誘う詩句の群れ。これらの具有がこの遊びの楽しさを高めていたのか、と今になって思い知る。
高橋 政秋
メモ
 このところ学校現場でも伝統音楽への関心が高まり、その一端として合唱曲・器楽曲への編曲が試みられている。この歌については同声三部合唱に編曲、潮見小合唱部の演奏を学会に報告し、論議をいただいた。また宮崎市の女声コーラス「円(まどか)」は県立芸術劇場ほか、おかあさんコーラス全国大会などで演奏してきている。





おしろのさんのさし絵


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