宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ

Jajaバックナンバー

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知られざる幻の名品

知られざる幻の名品

宮崎県北部、延岡市のある港町で、ガラエビという小さなエビの話を聞いた。 和名をミノエビというこのエビは、その名の通りにガラ(殻)ばかり大きくて、見た目は不格好ですらあるけれど、漁師たちが楽しみに食べる「とっておき」のエビなのだという。そのうまさは、市販のアマエビの比ではないという。

ただし、見た目が整っていないのと、量がそれほど獲れないこともあって、県外の市場に出ることはほとんどない。おそらくは地元、それも港の周辺だけで、あらかた食べてしまうのではないか、ということだった。川のエビ・カニ類はさらにこの傾向が強く、県内の多くの川で獲れるテナガエビやモクズガニは、ほとんど目にすることもない。

地産地消という言葉とは、ややニュアンスが異なるのかもしれないが、その土地でほぼ消費されて、外部の人は名すら知らないのに、地元では深く愛されている地域限定の名品たち。宮崎のエビ・カニ類は、主なものだけで20種類以上が水揚げされているのだが、イセエビなど一部をのぞいて、多くがそういう知られざる名品ということになっている。

川のエビ・カニ類

目の前の海に棲む多様なエビ・カニ類を食べたい

視点を私たちの食卓に転じてみると、地元産の新鮮なエビやカニが並ぶことは残念ながら少ない。スーパーなどの店頭では、エビは外国の養殖エビが主流で、カニもどこか遠い海でとれたものを、食べやすいようにカットして冷凍で送られてきたものが多い。それでも目の前の海には、黒潮の恵みを受けてさまざまなエビ・カニ類がいて、港には毎日、それが水揚げされている。

ふだん食べるほどの量を地元産でまかなえないのは仕方がないにしても、魚屋さんでたまたま見つけた時に、あるいは漁協の直販所で、新鮮な地元のエビやカニを仕入れ、それを食卓に供することができたなら、どれほど豊かな気持ちになれるだろうか。獲れたてのエビやカニだけがもつ、みずみずしい甘みは、一度食べると忘れられない奥深さがある。それは、海と季節がもたらしてくれる、宮崎に住む私たちへの贈りものなのかもしれない。今回は、そんな豊穣の海からの恵み、宮崎のエビ・カニたちをご紹介しよう。

多様なエビ・カニ類