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県広報みやざき


知事コラム こんにちは!河野です 「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉、皆さんも聞かれたことがあるのではないでしょうか。戦前の物理学者、寺田寅彦の言葉とされています。
 その言葉の元となった「天災と国防」という随筆を最近になって読み、衝撃を受けました。とても77年前に書かれた文章(昭和9年)とは思えません。今回の大震災を見通していたかのような先見の明に、背筋がゾクリとします。
 「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」という鋭い指摘の後に、次のような文章が続きます。
 「たとえば安政元年の大震のような大規模のものが襲来すれば、東京から福岡に至るまでのあらゆる大小都市の重要な文化設備が一時に脅かされ、西半日本の神経系統と循環系統に相当ひどい故障が起こって有機体としての一国の生活機能に著しい麻痺症状を惹起(じゃっき)する恐れがある。」
 東日本大震災を経験した私たちにとって、胸が痛む記述です。さらに、次のような警句も並んでいます。
 「昔の人間は過去の経験を大切に保存し蓄積してその教えにたよることがはなはだ忠実であった。」「文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた。」「文明の力を買いかぶって自然を侮り過ぎた結果からそういうこと(注・自然災害の発生)になったのではないか」
 3・11後の世界に生きる私たちは、謙虚に頭を垂れ、その警告に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。今一度、歴史や自然、風土に畏敬の念をもって向かい合い、自然災害に強い国づくりを進めていくこと。それが、今回の大震災による尊い犠牲を未来へと結びつけていくため、私たちに課せられた課題だと思います。
 防災対策の基本は「自助・共助・公助」。それぞれの段階で、今、何をなすべきなのか。先人の知恵や洞察に学びつつ、安全・安心な宮崎づくりに向け、県民一人ひとりが考え、実行していきましょう。

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