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宮崎県林業技術センター

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林技センター情報:No.26(2005年1月)より

樹木医の診断ノートから(育林環境部 讃井 孝義)

ここ数年、スギ病害の多発に追いまくられている間に、緑化木でも病気が多く発生しています。多くは常緑広葉樹ですが、中には緑化木としては今後使うのは難しいと考えられるような激しい被害もあります。また、樹木医兼業ということで、色々診断を頼まれます。県内各地で診断してきた緑化木の衰退も気になります。これらについては防除方法などは今後の問題ですが、それらの概要について紹介します。

1 サザンカ輪紋葉枯病

梅雨前後からサザンカの葉に赤褐色の斑点が形成され、激しく落葉する病気です。健全なサザンカは樹冠を通して向こう側は見えませんが、この病気にかかると落葉してスケスケになってしまい、その後何回も芽を吹くため、樹勢が弱まってしまいます。いったん感染すると毎年発生し、ひどい場合は枯れてしまうこともあります。感染は枯れた葉に形成された病原菌によって起こると考えられますので、落葉は徹底的に除去、焼却する必要がありますが、庭木はともかく街路樹ではなかなか難しいようです。効果のありそうな薬剤も今のところ登録されているものはありません。

輪紋葉枯病にかかった葉

輪紋葉枯病にかかった葉

輪紋葉枯病被害木

輪紋葉枯病被害木

2 ベニカナメのごま色斑点病

ベニカナメは春の真っ赤な芽吹きが見事で、刈り込みにも耐えるため生け垣として一時期人気があり、盛んに植栽されました。しかし、斑点性の病気であるごま色斑点病に弱いため、最近ではあまり見かけることは少なくなってきました。この病気も最初、葉に斑点ができ、その後激しく落葉し、やはりスケスケの状態になってしまいます。

ごま色斑点病にかかった葉

ごま色斑点病にかかった葉

いったん発生すると毎年被害が続き、落葉しては芽吹きを繰り返しますので、サザンカ輪紋葉枯病と同じように枯れることもあります。

最近では在来のベニカナメにかわって、この病気に抵抗性のあるセイヨウベニカナメが多く植えられていますが、品格の点においては在来のものにはかなわないようです。一時は在来のベニカナメは絶滅するのではと、心配するほどの勢いでした。この病気も適当な薬剤は登録されていません。

ごま色斑点病でスケスケになった生け垣

ごま色斑点病でスケスケになった生け垣

3 クスノキ炭疸病

クスノキ炭疸病の黒い病斑

クスノキ炭疸病の黒い病斑

クスノキ炭疸病にかかった街路樹

クスノキ炭疸病にかかった街路樹

2003年夏から秋にかけて県内各地の街路樹、緑化木で激しい落葉と枝枯れが起こり、中には枯死したものもありました。2004年になってもその時の影響は見られます。この病気は緑枝と葉に黒い斑点が出来るもので、斑点が緑枝を一周すると枝枯れになります。毎年発生することはないのですが、10数年前にも大発生したことがあります。広い範囲で一斉に発生することから気象要因が疑われていますが、気象要因の解析からはそれらしい現象は見あたらず、発生原因は謎です。

4 樹木の病気対策

前2種類の病気は毎年恒常的に発生するといいましたが、恒常的な発生をする場合、近くに感染源があることが多いので、次期の感染予防のために落葉落枝の除去が必要です。突発的な発生をする病害については、今のところ予防する手段はありません。被害の初期に何らかの薬剤を散布することは可能でしょうが、よほどこまめに木を見ていないとわかりません。多くは大発生になって気がつくということが多いようです。

散布する薬剤については農薬登録があるものを使用する必要があります。薬剤の登録とは、対象となる樹木の病気について効果があるという試験結果を添えて、農薬メーカーが農林水産大臣宛に登録申請をし、これが受理されれば一般に使えるようになります。以前は散布薬剤の相談があった際には、登録はなくとも他の病気で登録があって準用できそうな薬剤の紹介もできたのですが、現在は農薬取締法の改正によって、登録がない限り紹介することも使用することもできないことになっています。そのため、我々のように相談を受ける側としては対応に苦慮することが多いので、現在、農薬登録のない樹木の病気について、登録を取得するための薬剤試験を行っています。樹木の病気はあまりに多いので、全国のいくつかの機関で分担して行っていますが、当センターではサザンカの輪紋葉枯病について試験を進めているところです。

5 街路樹の衰退

特定の病害が見あたらないのに、宮崎県内各地の街路樹が衰退しています。特にホルトノキとクロガネモチが顕著です。いずれも常緑樹ですが、冬は落葉樹と見まごうばかりです。両樹種ともこんもりとした緑の樹形を期待して植栽されたはずですが、どこの街路樹も青息吐息といった場所が多いようです。ホルトノキは一時期、各地で植えられましたが、数年後から立ち枯れを起こす木が増え始めました。現在、ホルトノキの並木ですくすくと育っているところは、私の知る限りはありません。いずれも葉が極端に少なく、また、黄色かったり、枯れ枝や幹から出ている枝が目立ったりして、正常な木は少ないようです。文献によればホルトノキは肥沃な適潤地を好むとありますが、緑化樹の植栽環境でこの条件を満たしているところは多くはありません。

落葉樹になったクロガネモチ

落葉樹になったクロガネモチ

真ん中のホルトノキは青色吐息

真ん中のホルトノキは青色吐息

一方、多くのクロガネモチは今では落葉樹になりはて、冬に葉が茂っている場所はあまりありません。クロガネモチの場合は緑の葉と赤い実の対比が好まれるのですが、場所によっては葉はないのに、赤い実だけがたくさんついているという場所があります。しかし、やたら結実するというのはあまり好ましいことではないように思われます。植物はストレスを感じると実を通常より多くつける場合があり、クロガネモチの異常に多い実は、ストレスの現れではないかと危惧しています。

図-5 カシミールの画面

赤い実だけが目立つクロガネモチ並木

6 ストレスを起こさせるもの

ではこれらのストレスの原因とは何でしょう。樹木は地中に十分に根を伸ばすことができてこそ本来の樹形になりますが、その植栽されている場所の土壌が問題です。一般に野生の樹木は土壌がカチンカチンに固まっているような場所にはありません。土壌の表面にふれるとフカフカしたような場所で、鍬を入れれば楽に穴を掘ることができるような場所に木は育っています。ところが人工環境下に植えられる樹木はカチンカチンの場所に植えられることが多いのです。特に街路樹は植栽環境が劣悪であることが多く、道路造成時の重機による転圧などで極端に硬い土壌であったり、土壌中に工事の残材が混入している場合もあります。このような場合、樹木は十分に根を張ることができず、また酸素不足などから根が衰弱し根腐れを起こしていることが多いのです。

洗い出された根

洗い出された根

街路樹の根元には植え枡が設けられていますが、その植え枡内の土壌表面に根がたくさん露出していることがしばしばあります。これは土壌が硬くて土壌中に酸素が入って行けない場合、根が酸素をほしがって土壌表面近くへ伸長したものが洗い出されたものです。このような根は人に踏まれたり、虫にかじられることで傷が付き、将来的には腐朽に発展し、風倒の原因になったりします。

7 土壌改良

カチンカチンの土壌では土壌改良が必要です。根が伸びやすいように土壌を柔らかくし、さらに空気の流通もよくしてやることで、木は見違えるほど元気になります。野生の樹木は何十年も同じ場所にあって、根の周りの土壌は土壌動物がかき回してくれています。それでも年数を経てくると、枯れ枝が現れたりして衰退を始めることがあります。そのような場合にも土壌改良は有効です。自然の中でもそうなのですから、まして人工環境の中の樹木はもっと厳しい条件下にあります。

ホルトノキやクロガネモチの街路樹も土壌改良をすればもっと元気になるのですが、如何せん、経費は莫大なものになるでしょう。そうならないためには最初から環境に配慮した植栽が必要となります。

最近は業界でも植栽環境に配慮する工事が行われるようになってきましたが、以前に植栽されたものまでは手が回らないようで、今後も街路樹の衰退は憂慮されます。

このあたりのことになると、もはや林業の守備範囲からは離れてしまうのですが、同じ樹木を扱う立場からは心の痛むことではあります。

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