
将来の資源予測や施業計画の作成には正確な森林資源の把握が不可欠です。しかし、所有森林の中で面積、蓄積、生長量などを把握している森林所有者は非常に少なく、また、世代が替わって所有森林の場所さえも分からないケ−スがあるようです。
そこで、当センタ−ではGPSや簡易GISを利用した資源管理の一環として、森林の位置把握や林相区分について検討を行っています。
GPS(汎地球測位システム)はアメリカの軍事衛星からの信号を受け、受信機までの距離を測定することで、地球上の3次元の座標を決定できるシステムで24時間、位置情報と時間情報を与えてくれます。私達に身近なものとしてはカ−ナビゲ−ションに利用されています。GPSの精度は受信機やデ−タの処理方法等により異なりますが、1cmから100m前後とされており、高精度なものは国土地理院が行う地殻変動の調査や行政機関が行う地籍調査等に使用されています。最近、森林・林業の分野でもGPSが利用されるようになってきましたが、一般的に使用されているものは200万円前後の高額な機種で、森林組合や森林所有者等が簡単に購入することはできません。そこで、当センタ−では小型、軽量で低価格(数万円)なGPSの精度とその利用法について検討を行っています。
使用している小型GPSはガ−ミン社製のIII+という製品で、それに外部アンテナを接続し測位を行っています。GPS本体には500点の位置情報を記憶できますが、大量のデ−タを取得しなければならない場合はゲ−ム機(任天堂製のワンダースワン)に接続してデ−タ保存を行っています(写真)。

写真:GPS本体と周辺機器
水平誤差の測定は当センタ−内の上空に障害物のない開放地(位置座標の明らかな基準点)と20年生スギ林内(基準点を基に光波でトラバ−ス測量した位置)の2箇所で、同時に24時間連続して行いました。開放地の場合は最大水平誤差は12.3m、平均水平誤差3.9m、同様にスギ林内では310m、11.2mでした(図-1,2)。スギ林内の誤差が大きくなった原因として、幹や樹冠等に衛星からの信号が乱反射したり(マルチパス)、劣化したためと考えられます。
これらの結果から、上方に遮蔽物がない場合、GPS本体に表示される衛星の配置や誤差を確認しながら測位すれば、5m以内の水平誤差で位置を押さえることができ、林道や作業路等の線形(図-3)、造林地の位置を把握するには十分な精度を維持できると思われます。



図-3 GPSによる林道の線形(赤色)
一方、スギ林内のような場合はマルチパスの影響と思われる測位誤差が大きく、GPS単体だけの単独測位では実用的な測位デ−タは得られないことがわかりました。ただ、樹高の低い林分ではアンテナを林冠より上に出してやれば、開放地と同様な精度が得られると考えられます。
面積約40haの対象林分でGPSを利用して林相区分を試みました。最初、林分全体の周囲及び林道、作業路を測位し、続いて林相毎に測位を行いました。得られた座標(緯度、経度)を直交座標に変換し、表計算ソフトのエクセルを使用し描画しました。

図-4 GPSによる林相区分(下は樹種毎に色分したもの)
この結果、森林計画図のスギ林、ヒノキ林、クヌギ林及び広葉樹林の林分数は、それぞれ18、8、11、6に対して、38、29、14、11林分に区分でき、より詳細な林相図を作成することができました(図-4)。
ただ、GPSのみで同一地点を測位した場合、ずれ(誤差)が生じる可能性があり、概略的な林相の位置等のメモを残しておかないと、林相毎のポイントデ−タをまとめる時に混乱するため、かなりの時間を要することがわかりました。
GIS(地理情報システム)は地図等を扱う都市工学、交通の分野で幅広く使われており、近年、急速に森林分野での導入が進んでいます。ただ、これらのGISは業務用で、価格が高く、操作に慣れるまでの時間が必要なため、簡単に入手することはできません。そこで、一般の森林所有者が取扱える簡易なGISとしてカシミ−ル3D(図-5)が注目されています。
このソフトはインタ−ネットで簡単に入手できるフリ−ソフトです。業務用GISソフトに比べると、高度な空間解析や属性機能は付加されていませんが、距離、面積測定機能があり、さらに標高デ−タ(DEM)が入力されていれば、傾斜度測定、3D機能、等高線等の作成のほか、森林計画図や空中写真などの取込みも可能です(図-6)。また、GPSからデ−タをパソコン(カシミール3D)にケ−ブル1本で取込め、操作も非常に簡単です。
このソフトと空中写真を利用して、林相図の作成を試みました。ただ、空中写真は歪みがあり、そのまま使用できませんので、幾何補正を行う必要があります。

図-5 カシミールの画面

図-6 森林計画図の読込みと面積測定
最近は歪みを補正する機能をもつGISソフトがあり、比較的簡単にオルソフォト(幾何補正した空中写真)を作成することができるようになりました。ここでは、先にGPSで林相図を作成した林分を対象に幾何補正を行い、座標(緯度、経度)を付与してカシミ−ル3Dに取込みました。後は画面上で各林相の境界をトレ−スしていくだけです(図-7、8)。
GPSによる方法と比較した結果、短時間で林相図を作成することが可能でした。ただ、空中写真の幾何補正は専門の業者に依頼しているのが現状です。今後は森林組合等にも、これらの機能をもったソフトの導入が進み、森林所有者へのサ−ビスの一環として、提供されることが期待されます。

図-7 写真(オルソフォト)上で林相区分

図-8 図-7を白図化
木材価格の低迷、森林所有者の高齢化などから林業経営に対する関心が低下し、また、地籍調査が実施されていない地域では、所有森林が不明確なままという現状があります。このような状態では、次の世代に所有森林の位置等も正確に引き継がれないと考えられます。このため森林のおおよその場所や最低限の資源内容は、世代で整理していくことが必要です。今後、より簡易に資源把握ができるようなシステムの構築の検討を進めていく予定です。