
当センターでは「多様な森林の造成を阻害する要因の解明と被害回避に関する研究」という長いタイトルで,森林被害を取り上げています。
その結果の一部は先に紹介しましたが,その後の経過もあわせて,いまいちど広葉樹造林の問題点を考えてみたいと思います。
3年生の造林地で3樹種について,成長阻害要因の調査を続けています。14年2月に3年目の調査を行いました。植栽木の減少を見ると,イヌエンジュやヤマザクラは40%弱,イチイガシは15%がなくなりました。その主因は樹幹の切断で,残存木にも下刈り時の誤伐と,ノウサギの食害痕が残っており,誤伐の方が多く見られました。病害虫による消失はわずかでした。樹高の成長量は3mに達するのもありますが,平均値で見ると幹の切断のため成長は悪く,ヤマザクラは植栽時より低くなっています。幹の切断がなかった木だけで集計してみましたが,これも良くありません。先端の柔らかい部分をシカが食害したこと,現地はマツ林の跡で土壌がやせていることから,このような結果になったものでしょう。3年間の調査結果から考えられる問題点は以下のとおりです。
広葉樹は誤伐されても崩芽しますが,毎年伐られると成林は難しいでしょう。樹種によっては半数以上が伐られているものもあります。これはシカの食害やススキが繁ることで,苗木の所在が分からないくなるためです。常緑のイチイガシが良く残っていたのは,シカがあまり好んで食害しないので,葉が繁っていたことによるものです。そこで,所在を示すものがあればいいわけで,手間はかかりますが竹の棒を立てておけば,ススキに覆われるようなところでも一目瞭然です。園芸用のイボタケや雑木もいいでしょう。下刈りの時,探す手間も省けますので効率アップは請け合いです。
ノウサギ被害は樹皮剥皮害と幹切断被害がありました。獣害対策には資材が市販されていますが,これらは当然タダではありません。安価に獣害を避けるなら,ミカンネットの覆いも効果がありますが,風雨に弱いという欠点があります。切断されている幹の太さは10mm以下でした。苗木の大きさがそれ以上あればかじることができません。竹を地際部まで幹に沿わせて立てれば,一挙両得になります。切断の被害を避けるには大苗を植える方法もあります。ただし竹を立てても剥皮被害は避けられません。
シカがいる地域ではお金をかけざるを得ません。苗木を1本ずつ筒(プラスティック・不織布製)で覆う方法,あるいは造林地全体をネットで囲む方法のいずれかを取らざるを得ないでしょう。ネットで囲む方法は,ノウサギの侵入対策をきちんとやる必要があります。各種製品があり,効果もありますが,やや高いのが難点です。苗木代に比べると高いのですが,植え替える手間を考えれば安いものです。
広葉樹材は収穫まで,針葉樹より長い期間,手をかけねばなりません。手抜きをすれば,結果として大草原を造ることになりかねません。広葉樹の造林地では,慎重な計画と適切な対策,きめ細やかな管理が,針葉樹林にも増して必要です。