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宮崎県林業技術センター

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林業みやざき:(2003年7月)より

スギ葉枯性病害の大発生(育林環境部 讃井 孝義)

スギには73種類もの病害が知られていますが、大きな木が枯れてしまうような病害はほとんどありませんでした。ところが、最近県北部を中心に発生している40年生前後のスギの異常現象は、葉枯性の病害によるものです。スギの病害は多くはカビの仲間(糸状菌)が原因となっています。スギ林の中には多くの病原菌が息を潜め、スギに侵入するチャンスを待っており、何らかの条件が整ったときに病害が発生します。今、発生している病害はこの糸状菌による葉枯性病害です。

○被害の発見

1998年に椎葉村と北川町からスギの診断要請があり、現地調査を行いました。その結果、大面積の中・壮齢のスギ造林地で樹冠の色が褐変し、一部には枯れそうな木も見られました。いずれもスギの成長は良好でしたが、枝の下面の葉が赤くなって枯れ、樹冠全体、葉が少なくスケスケの状態でした。ただ樹冠の先端はとがっており、衰弱しているようには見えませんでした。これまで大きなスギが枯れるようなことは乾燥害以外にはなく、文献等にもスギが枯れるような病害は記述がなかったので、立地的な要因が影響していると考えました。
その後県北の各地で、樹冠が褐色になったスギ林が観察されるようになりましたが、ほとんど40年生前後の中齢林でスギの適地と考えられる所でした。

○この被害は何だ?

原因が分からないまま3年が経ち、被害地は増える。以前の被害地は症状が進むということで今一度被害をじっくり見ることにしました。その結果、被害の進展状況や品種によっては症状が出ないものがあるなどから、これは病害ではないかと考えました。病害ならばなんだということになるのですが、症状が似た病害は2つありました。黒粒葉枯病と褐色葉枯病です。前者は寒さなどで大発生することがあり、後者は立地条件が悪い場所で恒常的に発生しますが、いずれも枯れるとは書いてありません。病害と認定するには、被害部分から分離された菌をスギに接種して同じ症状を再現し、その部分から同じ菌が分離されることが必要です。現在、分離された菌を用いて症状を再現させる試験を行っていますので、病名の決定はそれ以降になります。
さらに、既知の病害だとすればそれがなぜこれほど激しい被害を及ぼすようになったかという疑問がわきます。多くの専門家に診断を求めましたが、温暖化,酸性雨,要素欠乏等々諸説あって、どれも全体の被害を説明するほどの説得力はありません。したがって、発生原因については今はまだ分かっていません。

○被害の進行

スギの正常な姿は成長期には樹冠全体が緑々しています。ところが、この被害にかかると樹冠全体が褐色になって遠くからでも確認できます。特に新芽が伸び始めて展開する4〜6月頃には、枯れ葉が赤褐色,新芽が薄緑と好対照をなし、いかにも枯れそうに見えます。枯れるのは前年に延びた葉の一部で、前年に枯れなかった葉だけが延びるため、葉の総量が減少します。翌年は、また残った葉の一部が枯れるために年々葉量が少なくなって最終的には枯れることもありますが、多くはないようです。
中齢以降のスギが枯れる被害としては乾燥害がありますが、こちらは長期にわたる少雨で秋や春に樹冠全体が一気に真っ赤になって枯れる急性の被害です。今回の被害は、雨などには関係なく、年々葉枯れが起こって徐々に衰退する慢性の被害です。

○被害への対策は?

被害の分布は県北部に偏っています。最近、県南部でも見つかっていますが、多くはありません。この病害はスギの品種によってかからないものがあります。オビスギの一部が、ほかにアヤスギ,シャカインなどがかかりますが、ヨシノスギはかかりません。ただ、品種の識別が難しく調査は進んでいません。
これまでにいくつかのスギ病害の発生を見てきましたが、これほどまでに大規模で激しい事例はありませんでした。それらの病害も品種によってはかからないものがありました。被害を避けるにはかかりやすい品種を植えないことが最良の方法でしょうが、被害が始まるのが40年生では、そのようなことも言っておれません。被害発生から何年かすると極端に葉が少なくなって枯れる場合があります。そのような林では被害の進行が早いものから伐採していくしか、方法はありません。枝打ち・干ばつなどの施業による環境改善では効果はないようです。薬剤による治療は現実には実行不可能です。現在のところ積極的にこの被害を予防するような方策はありません。こまめに自分の山を見回っておくことをお勧めします。

被害地の遠望(西郷村)林冠が赤っぽく見える写真

・被害地の遠望(西郷村)林冠が赤っぽく見える

被害初期の梢端付近2年生葉が枯れている写真

・被害初期の梢端付近2年生葉が枯れている

被害木の樹冠梢頭部葉が減少してスケスケの状態の写真

・被害木の樹冠梢頭部葉が減少してスケスケの状態

被害林(椎葉村)梢頭部が赤い写真

・被害林(椎葉村)梢頭部が赤い

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