
菌床によるキノコ栽培は、殺菌した無菌状態の培地(オガコ、栄養体、水)に目的のキノコ菌のみを接種するわけですが、培地が無菌状態で栄養条件に富んでいるがゆえに、施設や作業の適正管理を怠るなどして、一旦害菌汚染を受けると、害菌の発生率が極端に高くなる危険性があります。
今回は、県内の菌床シイタケ生産施設における害菌発生の事例等について紹介します。
被害の概要は、平成14年8月に製造した約1月分の菌床7千個のうち約半数が、培養中〜後期になっても部分的に褐変が進まないというものでした(写真1−左)。菌床を割って内部を観察してみると、菌床表面の褐変具合に合わせて培地の色が変化しており、シイタケ菌が伸長したものとは異なった灰褐色を呈していました(写真1−右)。
そこで、被害菌床をセンターに持ち帰り、異常部位のオガコを寒天培地に分離、更にそれから被害を与えたと思われる害菌を再分離しました。
顕微鏡による観察の結果、Scopulariopsis (スコプラリオプシス)属菌と同定しました。この菌は、Penicillium (ペニシリウム)属菌(青カビ)に形態的にはよく似ており、多くの胞子を放出しますが、青色のコロニーにはならないことがわかりました。
写真−1・左:被害菌床表面・右:菌床内部
次に、分離したスコプラリオプシス菌の菌糸伸長速度及び寒天培地、オガコ培地によるシイタケ菌との対峙培養を行いました。
その結果、30℃前後が最適の伸長温度となるようでしたが、シイタケ菌床の培養温度である20℃前後では、シイタケ菌より若干早い程度で、それほど違いはありませんでした。コロニーが青色や緑色等の目立った色でないこと、菌糸伸長がそれほど早くなかったことなどから、おそらく生産現場においては、培養中〜後期になるまで、害菌の発生を見落としたものと思われます。
また、寒天培地での対峙培養では、シイタケ菌、スコプラリオプシス菌双方が伸びた菌糸部分をお互いに侵害することはありませんでした。一方、オガコ培地では両菌が接触した部分からスコプラリオプシス菌側にシイタケ菌が侵入していきましたので、トリコデルマ菌のように菌寄生性はなく、それほど強い菌ではないことがわかりました。ただし、シイタケ菌のみを培養したものと比較して、シイタケ菌の菌糸伸長は抑えられることもわかりましたので(写真2)、培養が遅れることは間違いありませんし、更に発生の不揃い、収量への影響が懸念されました。
今回の事例では、被害菌床が多数であったため、当初滅菌不良も想像されましたが、被害症状が単一で、原因菌が一害菌と思われることなどから、滅菌後の戻り空気もしくは接種時に胞子飛散性の高い害菌の胞子等が混入したと考えられました。
このように、害菌対策を考える上では、その被害を与えた原因が何かを特定し、その害菌の特徴を考慮しながら、適切な対策(施設の清掃・消毒、作業工程等の見直し)を行うことが大切だと考えます。
前回(2002年4・5・6月号)で紹介した落下菌調査は、施設の汚染度を目に見える形にしてくれる簡単な方法として有効と考えます。センターもしくは最寄りの農林振興局林務課にご連絡をいただければ、当センターで調査を行うことができます。また、この調査は、生産者自らが定期的に行い、自己診断的なものとして実施され、日々の施設・作業管理に役立てられることをお勧めします。
写真2・対峙培養(オガコ培地)