
平成12年2月15日から3月28日までの43日間、中国湖北省で国際協力事業団(JICA)のプロジェクトに参加し、短期専門家として組織培養技術の指導を行ってきましたので報告します。
湖北省は中国のほほ中央部に位置し、その中を長江(揚子江)が東西に横断しています。面積と人口は日本の約半分で、標高は約20から3,100メ−トルまであり、地域による気候の格差は大きくなっています。湖北省の主な造林樹種は森林面積、蓄積共にバビショウ(馬尾松)の占める割合が最も高く、次いでナラ穎、コウヨウザン(広葉杉)の順となっていますが、スラッシュマツやポプラ類など外来樹種の蓄積も大きい状況にあります。
今回の派遣はJICAの林業プロジェクト「中国湖北省林木育種計画」によるもので、湖北省武漢市(人口800万人)にある湖北省林木育種センターを活動拠点として、日本の技術移転が行われているものです。このプロジェクトは1996年から開始され、センターでは施設が充実、中国人職員約20名と日本人の長期専門家4名により林木育種の推進が図られているところです。
私の任務はセンターに整備されている組織培養関連機器を駆使し、技術をさらに発展させることでした。対象樹種はコウヨウザン、ポプラ類で、優良個体の増殖効率の向上と遺伝資源の長期保存等を図るため、植物体からのカルス誘導、不定胚誘導、プロトプラスト単離および液体窒素による超低温保存等組織培養の応用的な技術について指導を行いました。中国側の組織培養担当は汪建亜さん(無性繁殖研究室長)と蒋祥娥さん(同室研究者)の2名で、汪さんが日本語に堪能であったことから、実験時での細かな操作や注意点などの指導は、特に支障なく実施することができました。実験に使用する機器類のほとんどは日本から輸送したもので、もし故障した場合はすぐに修理できない状況にありました。また、停電もよくあると聞いていたので、限られた期間内で指導か終えるか不安でしたが、大きなトラブルもなく、順調に実験を進めることができました。
パイテク苗の実用化を図るためには、コストを削減しなければなりません。日本だとコストに占める割合が最も大きいのは人件費ですか、中国では電気代で、私が見習いたいほどの節電を行っていました。日本の技術をただそのまま伝えるのではなく、国の事情を認識しながら、適切に指導する必要があると感じました。
派遣期間中の業務はハードな面もありましたが、センター職員に対する技術セミナーや武漢市から西へ約300キ口にある宜昌市林業科学研究所で講演を行い、有意義な意見交換を行うことができました。また、多くの関係者から中国の林木育種や林業の現状、問題点等を直接聞くことができ、知見を深めるよい機会となりました。