
本県で行われている造林用スギ苗の生産は、母樹から穂を採り、苗畑に挿し付ける育苗(挿し穂育苗)が一般的です。しかし、最近は、母樹が高齢化して採穂に適したものが少なくなり、穂の確保が難しい状況となっています。
そこで、当センターでは、スギの穂不足を解消するため、スギ小型挿し穂育苗試験に取り組んでいます。なお、スギ小型挿し穂育苗とは、約20センチのスギの穂を挿し付ける育苗方法です(通常の挿し穂は約40センチ)。
この育苗法の第1の利点は、穂の長さを二分の一にすることで、一本の母樹から採れる穂の数が数倍に増えることです。
また、40センチの穂を使った育苗では、穂の良し悪しが、成苗後の形状に大きく影響しますが小型挿し穂は挿付後に成長する部分が大きいため、穂の選定にそれほど神経を使う必要がなくなります。そのため、これまで穂を購入していた苗木生産者も自分で採穂できるため、生産費をかなり削減できるとみています。
その反面、小型挿し穂は、苗木に育つまで一年半程度の期間が必要であり、通常の育苗より半年間長くかかります(図1)。また、最初は穂の間隔を狭くして挿し付けるため、育苗途中で床替えが必要になります。そのため、育苗期間が1年間で床替えの必要がなかったこれまでの育苗法と比較すると、その分について生産コストが増加することは避けられません。
しかし、小型挿し穂育苗での一本当たりの苗木生産費は、通常の育苗よりやや少なくなると算出しており、生産コストの増加要因よりも削減要因の影響の方が大きくなるとみています。
また、春先に行っていた挿付を前年の秋に行うことになるので、挿付と出荷の作業が春先に重なることが避けられます。このことによって、効率的な苗木生産か可能になり、生産量の増加につながると考えています。
当育苗試験では、平成10年9月に挿し穂をし、1年4ケ月経過した平成12年1月に、苗木の高さと根元直径の調査を行いました。調査結果は、表1のとおりです。
スギの山行き苗の規格(苗高40センチ、根元直径7ミリ)以上で、二又や曲がりになっていない苗を、仮に規格苗と呼ぶことにします。今回の調査では、規格苗は植付本数(床替え時)の27%しかありませんでした。
さらに詳しく分析すると、苗高が規格以上であった苗の本数は79%でしたが、根元直径が規格以上の苗は28%しかありませんでした。したがって、今回の試験で規格苗が少なかったのは根元直径の成長が足りない苗が多かったためだといえます(図2)。
当試験の今後の課題は、1年半の育苗期間で、苗木の径の成長をどのように促すかという点です。また、得苗率を上げれば、苗木の生産単価はさらに下がるとみているので、低価格のスギ苗木が供給できるよう研究を進めたいと考えています。