2006年2月10日
宮崎県野生動植物保護基本方針
1 野生動植物の保護に関する基本構想
「太陽と緑の国」と呼ばれる宮崎県は、霧島連山をはじめ標高1,500メートル級の豊かな森林を抱える山岳が連なるなど県土の約76%が森林となっており、これを源に五ヶ瀬川や一ツ瀬川、大淀川など大小の河川が太平洋にそそぐという、豊かな自然環境の中、ヤイロチョウやノカイドウなど約1万種といわれる多くの野生動植物が生息又は生育している。
これまで約30数億年をかけて各地の環境に適応、進化してきたこれらの野生動植物は、人間にとっての価値のいかんにかかわらず尊重されるべきものであるとともに人間をはじめとするすべての生物が生存していくためには、多様な生物により成り立っている生態系が、健全に維持されていることが必要であることから、これらの野生動植物は人類生存の基盤でもある。
また、これまで人間は、その地域の自然環境に適応するように地域の文化を育んできたことなどから、野生動植物は人間が豊かな生活をするために欠かすことのできない役割を果たしており、さらに、これらの野生動植物は食料や衣料、医薬品等の資源として利用されていることから、経済的にも大きな役割を果たしている。
このようなことから、多くの野生動植物が生息又は生育する豊かな自然環境を保護することは、私たちにとって非常に重要なことであり、また、これらの自然環境を将来の世代に確実に引き継いでいくことも、私たちの重要な使命である。
ところが、この自然環境が、近年、私たち人間の活動によって大きな影響を受けており、野生動植物の中には、絶滅のおそれの生じているものもある。
このため、国においては、野生動植物保護の基本方針や今後の施策の展開方法などを示す「新・生物多様性国家戦略」を策定し、また、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」により希少な野生動植物やその生息地又は生育地(以下「生息地等」という。)を保護するなど全国レベルの取り組みが各種行われているが、野生動植物を保護するためには、地域レベルで保護対策を行うことが非常に重要であり、かつ、効果的である。
このような認識に立ち、県内の野生動植物を保護し、人と自然の共生する宮崎づくりを行うために、宮崎県野生動植物の保護に関する条例を制定し、次により、野生動植物の保護施策を推進することとする。
- 野生動植物を圧迫している主な要因は、生息地等の消滅、生息・生育環境の悪化、過度の捕獲・採取、シカ等の食害などであり、野生動植物の保護を行うためには、これらの状況を改善することが必要である。このため、生物学的知見に基づき、希少野生動植物の捕獲、譲渡し及び生息地等における開発行為を規制するなどの措置を行う。
また、必要に応じて、生息又は生育(以下「生息等」という。)に適した環境を整備し、野生動植物の生息地等の維持・回復を行う。 - 野生動植物の保護を効果的に行うためには、野生動植物の生息等に関する多くの情報を集め、分析することが必要であることから、野生動植物に関する調査や研究を行うとともに、それらの結果を有効に活用し、総合的な野生動植物保護計画を策定することにより、計画的かつ継続的な保護を実施する。
- 野生動植物の保護を行うためには、県民等の理解や協力が欠かせないことから、県民等に対し生物多様性の重要性や本県の豊かな自然環境に関する普及啓発を行い、家庭や学校、職場などにおける教育や情報の提供なども積極的に行うことにより、県、市町村、県民、事業者等がそれぞれの役割を認識し、互いに協力の上、野生動植物の保護を行う。
2 指定希少野生動植物、特定希少野生動植物及び緊急指定野生動植物の選定に関する基本的な事項
(1) 指定希少野生動植物
- 選定要件
指定希少野生動植物については、県内における生息等の状況が、人為等の影響により、その存続に支障を来す事情が生じていると判断されるもので、次のいずれかに該当するものを選定する。ア 個体数が著しく少ないか、又は著しく減少しつつあるもの
イ 生息地等が少ないか、又は消滅しつつあるもの
ウ 生息地等の生息・生育環境が著しく悪化しつつあるもの
エ 捕獲や採取、外来種等他種の著しい影響を受けているもの
オ 個体数若しくは生息地等が少ないことに加え、学術的又は文化的な価値が高く、専門家や県民等から保護の要請が高いもの - 選定に当たっての留意事項
指定希少野生動植物の選定に当たっては、次の事項に留意する。ア 外来種又は移入種及び本県にごくまれにしか渡来又は回遊しない野生動植物は、選定しないこと。
イ 個体として識別が容易な大きさ及び形態を有する野生動植物を選定すること。
ウ 商取引の対象として捕獲や採取されやすい野生動植物など規制的措置により効果的に保護対策が図られる野生動植物を優先的に選定するようにすること。 - 指定希少野生動植物の保護対策指針
指定希少野生動植物の保護対策指針は、指定希少野生動植物の種類に応じて、個体の保護、生息地等の保全、保護に係る普及啓発、地域住民との連携についてなど、保護推進を図る上で必要な事項を定めることとする。
- (2) 特定希少野生動植物
- 特定希少野生動植物については、指定希少野生動植物のうち、商業的に繁殖が可能な動植物で、保護を図るためにその譲渡し又は譲受けを監視する必要があると認めるものを選定する。
- (3) 緊急指定野生動植物
-
- 緊急指定野生動植物については、県内に生息又は生育する野生動植物で、指定希少野生動植物以外のもののうち、以下のいずれかに該当するものであって、特にその保護を緊急に図る必要があると認められるものを指定する。
- ア 分類学上、従来の種、亜種又は変種に属さないものとして新たに報告されたもの
イ 従来県内に分布しないとされていたが、新たに県内での生息等が確認されたもの
ウ 県内において、すでに絶滅したとされていたが、その生息等が再確認されたもの - なお、指定に当たっては、指定希少野生動植物の選定に当たっての留意事項と同様の事項に留意するものとする。
3 指定希少野生動植物、特定希少野生動植物及び緊急指定野生動植物の個体の取扱いに関する基本的な事項
- (1) 捕獲等の規制
- 指定希少野生動植物、特定希少野生動植物及び緊急指定野生動植物(以下「指定希少野生動植物等」という。)の生きている個体(卵及び種子を含む。以下同じ。)の捕獲、採取、殺傷又は損傷(以下「捕獲等」という。)については、その動植物の保護の重要性にかんがみ、野生動植物の保護のための学術研究又は繁殖の目的、その他の目的で行うものとして知事の許可を受けた場合を除き、原則として、これを禁止する。
- (2) 事業等の規制
- 特定希少野生動植物については、その個体及び加工品(以下「個体等」という。)の譲渡しの業務を伴う事業(特別事業)を行おうとする者は届出を行うとともに、その者がその個体等の譲受けをするときは、譲渡人の氏名やその個体等が繁殖されたものか捕獲されたものかなどの事項について確認を行い、その内容を記録するものとする。
- (3) その他の個体の取扱いに関する事項
-
指定希少野生動植物等の個体の所有者又は占有者は、その保護の重要性にかんがみ、その生息等の条件を維持するなど指定希少野生動植物等の保護に配慮した適切な取扱いをするよう努めるものとする。
また、県民等は、その所有し、又は管理する土地に指定希少野生動植物等が存在する場合は、可能な限り現地保存に努めるものとする。
4 野生動植物の個体の生息地等の保護に関する基本的な事項
- (1) 重要生息地の指定方針等
- 重要生息地の指定方針
野生動植物を保護するためには、その生息地等における生態系を安定して存続させることが非常に重要である。
そこで、野生動植物の保護のため特にその生息等の環境の保全を図る必要があると認めるときは、重要生息地を指定する。
重要生息地の選定に当たっては、そこに生息又は生育する野生動植物の種類、個体数、個体数密度、個体群としての健全性、生態系、その生息・生育環境の状況、生息地等としての規模及び学術的若しくは文化的価値などについて総合的に検討し、指定すべき生息地等を選定する。 - 重要生息地の区域の範囲
重要生息地の区域は、野生動植物の重要な生息地等及び当該生息地等の周辺区域で当該生息地等の環境を保全するために一体的に保護を図るべき区域とする。
区域の選定にあたっては、行動圏、営巣地、採餌地など野生動物にとって重要な役割を果たしている区域、野生動植物の分布の連続性、生態的な特性等について十分配慮するものとする。
- 重要生息地の指定方針
- (2) 特別規制地区の指定方針
- 特別規制地区については、重要生息地の中で、野生動植物の生息等にとって特に重要な区域で、建築物の新築や土地の改変などの行為を規制し保護を図る必要のある地区を指定する。
- (3) 立入制限地区の指定方針
- 立入制限地区については、特別規制地区のうち、野生動植物の個体の生息・生育環境を維持する上で、人の立入りを制限することが不可欠な区域を期間を定めて指定する。
なお、立入りを制限する期間は、野生動植物の繁殖期間など必要最小限の期間とする。 - (4) 重要生息地及び特別規制地区の保護指針
- 重要生息地及び特別規制地区の保護に関する指針においては、野生動植物の個体群の生息等のために確保すべき環境条件とその維持のための管理の方針などを明らかにするものとする。
- (5) 指定に当たっての留意事項
- 重要生息地、特別規制地区及び立入制限地区の指定に当たっては、関係者の所有権その他の財産権を尊重するとともに、農林水産業を営む者を始めとする住民の生活の安定と福祉の維持向上に配慮し、県民や地域住民等の理解と協力が得られるように対処する。また、県土の保全その他の公益との調整を図るとともに、必要に応じて損失補償についても検討するものとする。
5 その他野生動植物の保護に関する重要事項
- (1) 野生動植物調査等の実施
- 野生動植物の保護施策を的確かつ効果的に推進するためには、生物学的知見を基盤とした科学的判断が重要であるので、野生動植物の生息等の状況、生息地等の状況、分布・生態、保護手法その他施策の推進に必要な調査や研究を行う。
- (2) 野生動植物保護計画の策定
- 野生動植物の保護を適切に行うためには、総合的かつ計画的に保護対策を実施する必要があるため、指定希少野生動植物の保護に関する事項や重要生息地の保護に関する事項などを盛り込んだ野生動植物保護計画を策定し、定期的に見直すこととする。
- (3) 野生動植物保護監視員の設置
- 野生動植物の保護を充実し、実効性の高いものとするため、指定希少野生動植物や重要生息地の監視を行い、県民等への指導や啓発、野生動植物の調査などを行う野生動植物保護監視員を設置する。
- (4) 県民等への普及啓発及び教育
- 野生動植物の保護を行うためには、県民等が野生動植物を保護する意義を十分に理解し、野生動植物に対する適切な配慮を行うことが必要であることから、県民等に対し野生動植物の現状やその保護の重要性についての教育や普及啓発を実施する。
- (5) 地域住民等との協働
- 野生動植物の保護対策を効果的かつ継続的に行うためには、関係行政機関のみでなく地域住民やNPO等の団体などの協力が不可欠であることから、地域住民やNPO等の団体などと連携して野生動植物の保護対策を行うように努める。
- (6) 専門家等との連携
- 野生動植物を取り巻く環境は常に変化しているため、野生動植物を適切に保護するためには、さまざまな最新の情報を収集し適切な保護対策を実施する必要がある。
そこで、関係行政機関や学識経験者、専門家等と十分連携を図るとともに情報収集及び保護対策を行うための体制を整備する。 - (7) 外来種及び移入種に関する調査等
- 外来種は国外に、移入種は国内に生息等する野生動植物で、その移動能力を超えて導入されたものであるが、在来動植物の捕食など生態系への影響や人への危害、農林水産業の被害などの悪影響が見られるものもある。
そこで、外来種及び移入種の生息等の状況並びに野生動植物の個体の生息等に及ぼす支障の程度その他必要な事項について調査を行い、野生動植物の保護に関し必要な措置を講ずるよう努める。
このページの内容についてのお問い合せは
- 環境森林部 自然環境課 自然保護担当
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FAX:0985−38−8489
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