宮崎県グラフ誌「Jaja」じゃじゃ

 

Jajaバックナンバー

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【サーフィン&ボディボード】

オールドサーファー、78歳の海。

●投山猛さん(日南市伊比井)

投山猛さん

ロングボードで伊比井の海へ

タイトなサーフブランドのシャツに身をつつみ、伊比井の青い海に遊ぶ投山猛さんは、現在78歳。宮崎のサーフィン界でも最年長といわれるが、サーフィンを始めたのは71歳の時だった。

「座骨神経痛の悪化で、歩くのも難儀になり、ずっとテレビの前でした。医者に聞くと運動をして体重を減らすのがいいということで、一念発起して伊比井の海でタイヤを引いて歩く運動を始めたわけです。そうしたら、若いサーファーたちが『運動なら、サーフィンをやりませんか、教えますよ』といわれて始めたのがきっかけでした」

投山さんが使うのは、ロングボードという全長が長いタイプ。短いものに比べて波に乗りやすく、動作も比較的ゆっくりですむため、波乗りをのんびり楽しむのに向いている。
初めてボードに立てた日のこと、海の中にいる感覚、波と一体になる喜びなど、サーフィンについて語る投山さんの言葉は熱い。それにしても、71歳からサーフィンを始めるというのは、大きな決断だったことと思われるのだが、背中を押してくれたのは、プロスキーヤー三浦雄一郎氏の父・敬三氏の活躍だった。

「敬三さんは99歳でモンブランの氷河を滑り、100歳まで現役でした。その姿をみて、70歳くらいで歩けなくなるようではいけないなと。それでタイヤ引きの運動を始めたことが、サーフィンにつながっているわけですので、あの時、敬三さんに大きな勇気をもらったことに感謝しています」

海で生まれ変わる

投山さんは「老いることは簡単だった」という。70歳を過ぎて老人クラブに通い始めた頃、自分もすっかり老人の仲間入りをしてしまった気持ちになった。
「年をとると老後の暮らしのこととか、女房が先に亡くなったらどうしようとか、いろいろな不安が募りますし、マイナスのことばかり考えがちになります。でも、それに押し流されてしまっては、まだやれることがたくさんあるのに、気持ちで老いてしまう。体が動かなくなればなおさらなのですが、実際の老いは年齢ではありません。いくつになってもやれることを探して、どんどんやっていくのがいいのではないでしょうか」

サーフィンを始めて座骨神経痛は楽になり、若い仲間もできた。今では「海が恋人」という。
「生まれ変わった気持ちですね。こんな楽しい人生もあったのかと。最近は海で拾ってきた言葉を、自由律俳句にしてノートに書いたりしています」その投山さんのノートには、こんな言葉が記してあった。

盛り上がるフェースに魚の影
雨の中サーフィンどうせ水の中

投山さんと仲間たち
伊比井の浜で若い仲間たちと。腰痛の治療のために、この海でタイヤを引く運動をしていたことが、サーフィンとの出会いにつながった。

宮崎波旅