第1章 各地域の地形・地質と風土

8.日 南 地 域

 日南・串間の2市と北郷・南郷の2町が含まれる本県最南の地域で、南国情緒に彩られた日南海岸はその象徴である。鵜戸山塊が尽きて宮崎層群基底近くの泥岩層や日南層群2)の頁岩地帯が削剥されるところ、広渡川・坂谷川の下流には沖積平野が開け、海岸線には油津・目井津・外浦の湾入を見る。また、南那珂山地の南端には日南層群の堅固な砂岩層が都井岬を突出させ、日向灘と志布志湾を隔てている。双石山から南下する宮崎層群基底礫岩は、油津以南も鋭い稜線断続させながら夫婦浦に至り、築島に果てる。幸島と鳥島は日南層群の砂岩島で、波静かな一市湾を抱く。日南層群がドーム構造を作る一市湾の奥、岩波海岸のタギリ鉱泉からは炭酸ガスが噴出し、シャワシャワと快い音を立てている。霧島火山付近の例では、炭酸ガス泉は火山性温泉の周縁をとり巻くように配置されている。石波の炭酸ガスが何を物語るのか、それは今後の解明にまたねばならない。ドーム構造は本城付近にも見られ、本城川河口を抱いて砂岩層や砂岩頁岩互層が環状に走る。

 鰐塚山から柳岳・小松山を経て男鈴山西方にわたる山地は砂岩の多い地帯である。酒谷川や福島川の奥には割岩谷・大矢取などの峡谷が数キロメートルにわたって続いているが、広渡川上流には何故が峡谷が発展しない。この砂岩地帯と南東側の頁岩地帯との境目には塩基性岩類が断続的に現れ、赤色凝灰質頁岩に沿って、しばしば地滑り地帯となっている。男鈴山山頂近くの東斜面には玄武岩の見事な枕状溶岩が見られる。都井岬西方海上に浮かぶ岩礁トセンバイは玄武岩溶岩である。


日南海岸の漁港目井津港

 この地域にも始良火砕流が押し寄せ、酒谷川・南郷川・福島川などの沿岸にシラス台地の発達を見る。同火砕流は市木・本城まで達しているが、都井岬は越えていない。また、鵜戸山塊東斜面側にもシラスの分布は見られない。福島川中ー下流部のシラス台地はこの地域最大で、さつま藷の生産が盛んである。 飫肥は延岡と並んで県下に数少ない城下町。その静かなたたずまいの中に、風土記の丘に相対して歴史的町並の整備が進められている。飫肥杉に包まれた山々を背景に、苔むした石垣は飫肥城興亡の歴史を語る。その石垣は姶良火砕流の灰石である。

2)日南地域の四万十累層群は従来から特に日南層群と呼ばれている。