みやざきの神話と伝承101ロゴ 97 来訪の神「メゴスリ」
 
 
 
       
  ●繁栄と豊穣願う象徴
 十五夜の月が静かに昇り、ソバの花波がほの白く揺れる。串間市大平の広野集落は、気候温暖な純農村地帯。古くから焼き米を作り、「十五夜さま」に供え、月見の宴のハレの食とする習俗が伝えられてきた。
 陰暦8月15日、満月の光を満身に浴びながら、集落に現れる来訪の神が「メゴスリ」である。姿はかすりのモンペをはき、筒そでの仕事着。これにシュロ皮で編んだ蓑(みの)を着け、その上からわらしべつきの太綱でたすき掛け。ちょうど肩のあたりにふくらみの部分がくるので、実にいかつい。
 頭は手ぬぐいの男かぶり。しめ縄を額に結び、角状に固定する。顔面は形相すさまじい赤、あるいは青の鬼面。手甲はシュロ皮、すね当ても同じ、ともに荒縄で縛りつけ、わらしべつきの足半(あしなか)を履いている。
 その風ぼうはまさに龍をかたどった鬼神。水をもたらす神の化身であり、同時に豊穣(ほうじょう)を祝う名月の座に現れる民俗の神なのだ。それにしてもたけだけしい姿に比べて、神の名はやさしい。メゴとは竹で編んだかご、スリとはすりこぎ、まとめて「メゴスリ」となったのであろう。この2つの民具が、子孫繁栄・五穀豊穣を願う象徴なのだ。このため、メゴスリの来訪は集落守護の祝い神として、熱狂的に迎えられる。
 集落の中央の小高い丘にある薬師三尊を祭る上ん堂を出たメゴスリは4、5体。太くて長いわらづとのたたき棒を携え、水神を祭る森の鳥居下までやってくる。そこにはモグラ追いの子どもたちが白い鉢巻き姿で、モグラモチ用のわらづとを手に待っている。メゴスリは30人ばかりのモグラモチ役を率いて民家に練り込み、庭先で自ら範を示し、「モグラモチャ、ドンドコセー、焼米をくれんかの、焼米をくれんやちゃ 鬼になれ蛇になれ」と歌いながらわらづとで地面をたたく。
 やがて足半を脱ぎ捨て、十五夜月見の祝い座に上がり、傍若無人に振る舞う。家人や客人に無礼講をはたらき、終始無言であるが、最後には祝儀を要求する。子どもたちも当夜は、勝手に十五夜さまのお供えをいただく。前半のメゴスリ役は中学生、後者は若者が引き継ぎ、集落の30戸ばかりを巡回する。
 来訪神の起源は不明だが、約300年前に広野集落が火事で全焼したことがあり、そのころに始まったと伝えられている。
山口保明
 





メゴスリの写真
名月の祝宴の座で、無礼講をはたらくメゴスリ
(串間市・広野集落)

       
 
 
 

  目次のページへ 96 御狩神事と「櫛間」のページへ 98 潮嶽神社のページへ