みやざきの神話と伝承101ロゴ 98 潮嶽神社
 
 
 
       
  ●縫い針貸さない習俗
 潮嶽神社は、北郷町北河内宿野地区の潮嶽に鎮座。祭神はホスセリノミコト、ヒコホホデミノミコト、ホアカリノミコトの兄弟3神。3神ともニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの間に生まれた日向神話ゆかりの神である。ホスセリは海幸彦、ホホデミは山幸彦、ホアカリは「播磨国風土記」によれば、風波をつかさどる神とある。
 神社の背後は飫肥杉の産地で、神話の里がどこもそうであるように、ここにも主祭神・海幸彦にまつわる地名が多い。潮嶽は、弟の山幸彦と釣り針のことで争ったとき、磐(いわ)船で満潮に乗り、越潮(こしおの)山に上陸、ここを潮嶽と称するようになったという。
 また、船から下りたところが「賢所」。禁足地となっており、ここには磐船が埋められていると伝える。さらに海幸彦が水鏡を利用し、みそぎをした池が「神池」、祭りのときアマテラスに酒食を出した場所を「饗(きょう)塚」という。海幸彦が国内を治めた後、この地で亡くなり、潮嶽川上の陵に葬られたと言われ、潮塚があてられている。ちなみに「宿野」は、信仰を集めた同社の宿坊が立ち並んでいたことによるという。
 ホスセリを主祭神とする神社は全国でも珍しく、土地では「海幸・山幸」の神話にちなんで、縫い針を他人には貸さない習俗がある。ホスセリは隼人族の祖とされ、日本書紀によれば隼人の声は、犬の遠ぼえに似ているとも書かれている。
 子供の初参りには、紅で額に「犬」の字を書き、病気封じをして強く育つよう祈願する。これも海幸彦にかかわるものとされている。
 同社の秋祭りで舞う獅子の「立藤舞」は、海幸彦の化身舞とされ、隼人の宮門守護を形象したものと伝える。痛々しいまでに、敗者に心を寄せる〈潮嶽の里人〉の優しさが身にしみる。
 春秋の祭りに奉納される「御神子(おみこ)舞」は、「続日本紀」に収める「そらみつ倭(やまと)の国は神からし尊くあるらしこの舞見れば」を神歌として、4人の乙女が清そに舞う。伝えるところによれば、神武東遷の折に里の娘たちが別れを惜しみ、旅の安全を祈願して舞ったのを今に継承しているという。
 いうまでもなく、ホスセリは海の守護神、ホホデミは山地・平地の守護神として祭られ、「福種子下ろし」や「神楽」など、神話にまつわる多くの行事を伝えている。
山口保明
 






潮嶽神社の写真
潮嶽神社。
地区には海幸・山幸の神話が多く伝わる

       
 
 
 

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