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宮崎県感染症情報センター

宮崎県感染症発生動向調査2010年第36号(医療機関向け情報)

第12巻第36号[宮崎県第36週(9/6〜9/12)、全国第35週(8/30〜9/5)]

宮崎県感染症週報

宮崎県感染症情報センター
宮崎県健康増進課
宮崎県衛生環境研究所

宮崎県第36週の発生動向

定点医療機関からの報告総数は656人(定点あたり23.8)で、前週比90%と減少した。

前週に比べ多かった主な疾患はRSウイルス感染症とA群溶血性レンサ球菌咽頭炎であった。

RSウイルス感染症の報告数は51人(1.4)で前週比176%と増加した。例年同時期の定点あたり平均値(0.3)と比較すると約4.7倍と多い。日向(5.8)、延岡(3.5)保健所からの報告が多く、年齢別では2歳以下で全体の約8割を占めた。全て6歳以下の報告であった。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告数は37人(1.0)で前週比132%と増加した。例年同時期の定点あたり平均値(0.96)と比較すると約1.1倍である。延岡(2.3)、高千穂(2.0)、高鍋(1.8)保健所からの報告が多く、年齢別では1歳から4歳で全体の約半数を占めた。

保健所別流行警報開始基準値超過疾患

全数把握対象疾患

  • 1類感染症
    報告なし。
  • 2類感染症
    結核4例が宮崎市保健所から報告された。
    • 40歳代の女性で無症状病原体保有者。
    • 40歳代の男性で無症状病原体保有者。
    • 70歳代の男性でその他の結核(結核性胸膜炎)。発熱がみられた。
    • 50歳代の女性で疑似症患者。
  • 3類感染症
    腸管出血性大腸菌感染症1例が都城保健所から報告された。40歳代の女性で無症状病原体保有者。原因菌の血清型はO157(VT2産生)。
  • 4類感染症
    レジオネラ症1例が宮崎市保健所から報告された。50歳代の男性で肺炎型。発熱、咳嗽、呼吸困難、肺炎がみられた。
  • 5類感染症
    報告なし。

病原体情報(衛生環境研究所 微生物部)

細菌(平成22年8月31日〜9月14日までに分離同定)

※上記の菌は、患者及び患者との接触者等から分離された。

ウイルス(平成22年8月31日〜9月14日までに分離同定)

  • 小林保健所管内でインフルエンザA型の報告があった。兄妹で発症しており、家族内感染と考えられた。遺伝子検査の結果、インフルエンザAH1pdm(新型)が検出された。本県では3月以来、6ヵ月ぶりの検出であった。全国の検出状況をみると、昨年の新型インフルエンザ発生以来、毎月検出されている。また、今年の2月からはインフルエンザAH3(A香港型)も毎月検出されている。
  • 手足口病の小児からエンテロウイルス71型が検出された。
  • 髄膜炎の小児からコクサッキーウイルスB2型、エコーウイルス25型が検出された。全国の無菌性髄膜炎由来ウイルスの報告では、コクサッキーウイルスB2型がエンテロウイルス71型に次いで多く検出されている。

全国第35週の発生動向

定点医療機関あたりの患者報告総数は10.2で、前週比99%とほぼ横ばいであった。今週増加した主な疾患は咽頭結膜熱と感染性胃腸炎で、減少した主な疾患は水痘とヘルパンギーナであった。

咽頭結膜熱の報告数は999人(0.33)で、前週比114%と増加した。例年同時期の約8割である。広島県(1.7)、富山県(1.1)、長野県(1.0)からの報告が多く、年齢別では1歳から5歳で全体の約8割を占めた。

感染性胃腸炎の報告数は9,727人(3.2)で、前週比107%と増加した。例年同時期の約1.2倍である。大分県(7.9)、宮崎県(6.8)、島根県(6.1)からの報告が多く、年齢別では6ヶ月から3歳で全体の約半数を占めた。

全数把握対象疾患
  • 1類感染症
    報告なし。
  • 2類感染症
    結核368例
  • 3類感染症
    コレラ1例、細菌性赤痢5例、腸管出血性大腸菌感染症161例、腸チフス1例、パラチフス1例
  • 4類感染症
    A型肝炎2例、デング熱11例、日本紅斑熱1例、マラリア3例、レジオネラ症8例
  • 5類感染症
    アメーバ赤痢16例、ウイルス性肝炎1例、急性脳炎4例、クロイツフェルト・ヤコブ病1例、後天性免疫不全症候群8例、ジアルジア症1例、梅毒3例、破傷風3例、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例、風疹2例、麻しん6例

情報

ニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼI(NDM-1)産生多剤耐性菌について

標記の菌による感染事例が海外において、そして最近国内でも医療機関においての発生が報告されている。本菌感染事例の発生に備えて厚労省結核感染症課では医療機関に対して国立感染症研究所(感染研)細菌第二部への情報と菌の提供を医療機関に対して呼びかけ、同時に国民への周知を図っている(事務連絡、平成22年8月18日)。今回この間の事情について主に感染研感染症情報センターの情報を元に説明したい。

NDM-1、IMP-1、VIM-2等はMBL(メタロ-β-ラクタマーゼ)と呼ばれる各種薬剤の耐性を誘導する酵素のグループに属しており、MBLは緑膿菌、アシネトバクター、大腸菌、肺炎桿菌、に見られている。現在これらの耐性菌が世界中に拡大しつつある(インド等での受診患者が欧米に本菌をもたらす例やイラク駐留の米軍兵士の本国への持ち帰り例が有名。一方国内事例についてはここ数年間で急激な増加は見られていないらしい。)。これらの酵素の中でNDM-1はプラスミドにより伝達され腸内細菌への耐性の導入が効率よく行われるので今後大腸菌、肺炎桿菌等の耐性獲得の挙動が注目される。耐性が伝達される菌自体の病原性は弱く(常在的な菌が大部分)健康人には特段の影響はないと言われるが抵抗力の弱い人に感染した場合には“薬が効かない”という大きな課題をもたらすことになる。医療機関での発生(おうおう院内感染という形をとる)が問題になる所以である。本菌の保菌患者で本菌による症状が無い者については本菌への除菌治療は実施しないことがポイントのようである(勿論、病室の清潔、手指洗浄の徹底等本菌の環境汚染防止対策を最優先する)。症状を有する患者には積極的に除菌を実施することになるが薬剤の選択が困難な模様である。我が国では承認されていないポリミキシン系の薬剤に本菌は感受性を有するようであるが、薬剤の使用には適切な期間、量の考慮が肝要である。韓国等ではポリミキシン系薬剤に対する耐性も報告されているらしい。

NDM-1産生の検査はカルバペネム系、フルオロキノロン系、アミノ配糖体系、の薬剤に対する耐性度をSMAディスク試験で確かめ、該当遺伝子をPCRで確認することで実施される。

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