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宮崎県感染症情報センター

宮崎県感染症発生動向調査2010年第49号(医療機関向け情報)

第12巻第49号[宮崎県第49週(12/6〜12/12)、全国第48週(11/29〜12/5)]

宮崎県感染症週報

宮崎県感染症情報センター
宮崎県健康増進課
宮崎県衛生環境研究所

宮崎県第49週の発生動向

定点医療機関からの報告総数は1,270人(定点あたり39.5)で、前週比116%と増加した。

先週に比べ多かった主な疾患は A群溶血性レンサ球菌咽頭炎と感染性胃腸炎で、減少した主な疾患はインフルエンザであった。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告数は141人(3.9)で前週比147%と増加した。例年同時期の定点あたり平均値(2.3)の約1.7倍である。延岡(14.8)保健所からの報告が多く、警報レベルを超えている。年齢別では4歳から7歳で全体の約半数を占めた。

感染性胃腸炎の報告数は638人(17.7)で前週比117%と増加した。例年同時期の定点あたり平均値(17.4)とほぼ同数である。中央(23.0)、都城(22.8)、日南(22.3)、小林(21.7)、高鍋(20.8)保健所からの報告が多く警報レベルを超えている。年齢別では1歳から4歳で全体の約6割を占めた。

細菌性髄膜炎1人が宮崎市保健所から報告された。患者は11歳の男児。

マイコプラズマ肺炎1人が延岡保健所から報告された。30歳代の男性で Mycoplasma pneumoniae

保健所別流行警報開始基準値超過疾患

全数把握対象疾患

  • 1類感染症
    報告なし。
  • 2類感染症
    結核3例が延岡(2例)、日南(1例)保健所から報告された。
    《延岡保健所》
    • 50歳代の男性で肺結核。咳、痰がみられた。
    • 70歳代の男性で肺結核。咳、痰、発熱、呼吸困難がみられた。
    《日南保健所》
    20歳代の女性で無症状病原体保有者。
  • 3類感染症
    報告なし。
  • 4類感染症
    つつが虫病7例が宮崎市・都城・小林(各2例)、日南(各1例)保健所から報告された。
    《宮崎市保健所》
    • 80歳代の女性で発熱、刺し口、リンパ節腫脹、発疹がみられた。
    • 50歳代の女性で発熱、刺し口、発疹がみられた。
    《都城保健所》
    • 60歳代の女性で頭痛、発熱、刺し口、リンパ節腫脹、発疹がみられた。
    • 60歳代の男性で頭痛、発熱、発疹がみられた。
    《日南保健所》
    • 70歳代の男性で頭痛、発熱、刺し口、発疹がみられた。
    《小林保健所》
    • 70歳代の女性で発熱、刺し口、発疹がみられた。
    • 70歳代の女性で頭痛、発熱、刺し口、発疹がみられた。
  • 5類感染症
    ウイルス性肝炎1例が日向保健所から報告された。10歳代の男性でB型。全身倦怠感、発熱、肝機能異常、黄疸がみられた。

病原体情報(衛生環境研究所 微生物部)

ウイルス(平成22年12月6日〜平成22年12月12日までに検体採取分)

  • 都城保健所、日南保健所管内でインフルエンザA型、B型の報告があった。都城の6例、日南の1例について遺伝子検査を実施した結果、都城の4例からインフルエンザAH1pdm型(新型)、1例からインフルエンザB型が検出された。都城の1例、日南の1例からはインフルエンザは検出されなかった。

全国第48週の発生動向

定点医療機関あたりの患者報告総数は26.2で、前週比122%と増加した。今週増加した主な疾患はインフルエンザと伝染性紅斑で、減少した主な疾患はヘルパンギーナであった。

インフルエンザの報告数は3,333人(0.7)で、前週比159%と増加した。北海道(3.8)、佐賀県(2.4)、長崎県(2.0)からの報告が多く、年齢別では5歳以下が全体の33%、6歳から9歳が27%、10歳から14歳が15%、15歳から19歳が3%、20歳代から50歳代が18%、60歳以上が4%を占めた。

伝染性紅斑の報告数は1,545人(0.51)で、前週比138%と増加した。例年同時期の約3.2倍である。福岡県(2.0)、宮城県・長崎県(各1.2)からの報告が多く、年齢別では4歳から6歳で全体の約半数を占めた。

全数把握対象疾患
  • 1類感染症
    報告なし。
  • 2類感染症
    結核318例
  • 3類感染症
    細菌性赤痢3例、腸管出血性大腸菌感染症31例、パラチフス1例
  • 4類感染症
    A型肝炎3例、オウム病1例、つつが虫病42例、デング熱3例、日本紅斑熱1例、マラリア2例、レジオネラ症4例、レプトスピラ症1例
  • 5類感染症
    アメーバ赤痢10例、ウイルス性肝炎1例、急性脳炎1例、クロイツフェルト・ヤコブ病2例、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例、後天性免疫不全症候群14例、ジアルジア症1例、梅毒6例、破傷風3例、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例、風疹2例、麻しん2例

平成22年度インフルエンザ抗体保有状況調査−宮崎県−<資料>

厚生労働省で実施している感染症流行予測調査の一環として、宮崎県健康づくり協会、県立宮崎病院の協力を得て、2010/2011年のインフルエンザ流行シーズン前における県内の抗体保有状況を調査した。

調査では、9年齢群・274名(0〜4歳:53名、5〜9歳:23名、10〜14歳:25名、15〜19歳:26名、20〜29歳:45名、30〜39歳:25名、40〜49歳:26名、50〜59歳:25名、60歳以上:26名)から同意を得て、2010年7月26日から9月28日に収集した血清を対象とした。また、下記の4抗原(1,2,3は今シーズンのワクチン株)を用い、血球凝集抑制抗体(HI抗体)の測定を行なった。

  1. Aパンデミック型:A/California(カリフォルニア)/7/2009pdm(H1N1)
  2. A香港型:A/Victoria(ビクトリア)/210/2009(H3N2)
  3. B型:B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)
  4. B型:B/Florida(フロリダ)/4/2006(山形系統)
    今シーズンのワクチン株はビクトリア系統であるが、山形系統の代表として本株も調査対象となった。
調査結果

有効な防御免疫を持つと考えられる40倍(1:40)以上の抗体保有状況は以下のとおりであった。

また、80倍(1:80)以上および抗原性の変化した株に対する防御に必要とされる160倍(1:160)以上の抗体保有状況も併せて、図に示した。

  1. Aパンデミック型:A/California/7/2009pdm(H1N1)に対する抗体保有状況
    10〜14歳群の保有率が72%と高かった。5〜9歳群、15〜19歳群でそれぞれ52.2%、46.2%と比較的高い保有率であった。その他の年齢群では30%以下となっており、60歳以上では7.7%と低い保有率であった。
  2. A香港型:A/Victoria/210/2009(H3N2)に対する抗体保有状況
    10〜14歳群、15〜19歳群でそれぞれ32%、38.5%と中程度の保有率であった。その他の年齢群では30%未満となっており、30〜39歳群、40〜49歳群ではそれぞれ12%、11.5%と比較的低い保有率であった。特に0〜4歳群では5.7%と低くなっていた。
  3. B型:B/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)に対する抗体保有状況
    30〜39歳群で64%と高い保有率であった。15〜19歳群、40〜49歳群でそれぞれ42.3%、57.7%と比較的高かった。しかし他の年齢群では30%未満であり、0〜4歳群、5〜9歳群ではそれぞれ5.6%、4.3%と低い保有率であった。
  4. B型:B/Florida/4/2006(山形系統)に対する抗体保有率
    15〜19歳群で34.6%と中程度の保有率であった。その他の年齢群では25%未満と低く、特に0〜9歳群、60歳以上では5%未満ときわめて低い保有率であった。
コメント

2009/10シーズンはA/H1pdmウイルスが流行株の98%を占めた。それと平行して季節性A/H1N1ウイルスの分離例が世界中で激減した。A/H3N2亜型ウイルスの分離数も激減したが、少数ながら分離された。

Aパンデミック型インフルエンザ発症者の年齢分布は5〜14歳に多く、中高年では少なかった。ただし、中高年齢層での発症および死亡数は少ないものの、いったん発症した場合の致死率は小児をはるかに上回った。入院患者では、基礎疾患がないものでも重症化することが小児で多く見られた。また、インフルエンザ脳症患者の年齢層は、従来幼児での発生が多かったが、今回は小学校低学年層にそのピークが移っている。

今後、ウイルスの抗原性が変化することもあるため、流行状況については予断を許さない。また、抗体保有状況から成人の感受性者が多く残っていると考えられ、再流行が成人中心に起こると、重症者や死亡者が増えると考えられる。
死亡者や重傷者の発生をできる限り減らすためにも、インフルエンザシーズン前のワクチン接種が重要である。

宮崎県における年齢別HI抗体保有状況(2010/2011シーズン前)

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