所長挨拶 研究所の紹介 発表・調査研究 情報・ニュース 宮崎県感染症情報センター 見学と研修のお申し込み リンク集 お問い合わせ

宮崎県感染症情報センター

宮崎県感染症発生動向調査2011年第48号

第13巻第48号[宮崎県48週(11/28〜12/4)、全国47週(11/21〜11/27)]

宮崎県感染症週報

宮崎県感染症情報センター
宮崎県健康増進課
宮崎県衛生環境研究所

宮崎県第48週の発生動向

定点医療機関からの報告総数は807人(定点あたり23.3)で、前週比109%と増加した。

前週に比べ増加した疾患はインフルエンザと感染性胃腸炎で、減少した主な疾患は手足口病であった。

インフルエンザの報告数は52人(0.88)で前週比433%と増加した。小林(4.4)・延岡(2.3)保健所からの報告が多く、年齢別では5歳以下が全体の37%、6歳から9歳が25%、10歳から14歳が27%、20歳以上が11%を占めた(15歳から19歳の報告はなし)。
感染性胃腸炎の報告数は397人(11.0)で前週比131%と増加した。高鍋(15.3)・宮崎市(14.2)保健所からの報告が多く、年齢別では1歳から5歳が全体の約6割を占めた。

マイコプラズマ肺炎4人が延岡(3人)・都城(1人)保健所から報告された。患者は2歳、4歳、5歳、8歳であった。

疾患別流行警報開始基準値超過疾患

保健所別流行警報開始基準値超過疾患

全数把握対象疾患

  • 1類感染症
    報告なし。
  • 2類感染症
    結核6例が宮崎市・都城(各2例)、延岡・高鍋(各1例)保健所から報告された。
    《宮崎市保健所》
    • 70歳代の男性で肺結核。
    • 70歳代の男性で肺結核(死亡)。咳、呼吸困難がみられた。
    《都城保健所》
    • 70歳代の女性で肺結核。右胸水貯留、胸部異常影がみられた。
    • 80歳代の男性で肺結核。
    《延岡保健所》
    80歳代の男性でその他の結核(頚部リンパ節結核)。リンパ節腫大、排膿がみられた。
    《高鍋保健所》
    40歳代の男性でその他の結核(結核性胸膜炎)。発熱、胸痛がみられた。
  • 3類感染症
    報告なし。
  • 4類感染症
    つつが虫病4例が宮崎市・都城・日南・小林(各1例)保健所から報告された。
    《宮崎市保健所》
    40歳代の男性で頭痛、発熱がみられた。
    《都城保健所》
    50歳代の男性で頭痛、発熱、リンパ節腫脹、発しん、肝機能障害がみられた。
    《日南保健所》
    40歳代の男性で頭痛、発熱、刺し口、リンパ節腫脹、発しんがみられた。
    《小林保健所》
    60歳代の女性で発熱、刺し口、リンパ節腫脹、発しんがみられた。
  • 5類感染症
    報告なし。
全数把握対象疾患累積報告数(2011年第1週〜48週)

( )内は今週届出分、再掲

動物感染症累積報告数(2011年第1週〜48週)(参考)

病原体情報(衛生環境研究所 微生物部)

細菌(平成23年11月22日〜平成23年12月5日までに検出)

  • 小林保健所管内で腸管出血性大腸菌(EHEC VT1,2)の家族内発生(幼児2名と母親、祖母の4名)が検出された。
  • また、無症状保菌者2名から腸管出血性大腸菌OUT:H18 VT1、OUT:H2 VT1,2がそれぞれ分離された。OUTのUTはuntypableの略で、血清型別出来なかった場合に表記されるものである。
ウイルス(平成23年11月22日〜平成23年12月5日までに検出)

  • 発熱・発疹のある小児3名から、エコーウイルス9型が分離された。
  • ポリオワクチン接種後7日目の乳児の便から、ポリオI型(ワクチン由来株)が分離された。ポリオの生ワクチンには、弱毒のポリオウイルスワクチン株が含まれている。ワクチンウイルスは、腸の粘膜で増殖するため、ワクチン接種を受けた人の便の中に、接種後6週間にわたって出てくることがある。ウイルスの便中への排出が特に多い期間は、接種後1〜2週間といわれている。
  • 重症肺炎・流行性角結膜炎の小児からアデノウイルス3型が検出された。アデノウイルス3型は、主に咽頭結膜熱の流行をおこす原因ウイルスとして知られている。また、アデノウイルスは、季節特異性がなく、年間を通して分離される。乳幼児の急性気道感染症の原因ウイルスとしても重要な病原体である。
  • 手足口病と診断された成人およびヘルパンギーナと診断された小児から、コクサッキーウイルスA6型が検出された。全国的に、コクサッキーウイルスA6型は7月をピークに減少傾向である。

全国第47週の発生動向

定点医療機関あたりの患者報告総数は14.4で、前週比104%と横ばいであった。今週増加した主な疾患はインフルエンザと水痘で、減少した主な疾患は手足口病であった。

インフルエンザの報告数は1,397人(0.29)で、前週比138%と増加した。宮城県(2.5)、沖縄県(1.8)、三重県(1.1)からの報告が多く、年齢別では5歳以下が全体の35%、6歳から9歳が26%、10歳から14歳が13%、15歳から19歳が3%、20歳以上が23%を占めた。  

水痘の報告数は5,548人(1.8)で、前週比123%と増加した。福井県(4.6)、佐賀県(3.7)、岩手県(3.6)からの報告が多く、年齢別では1歳から5歳で全体の約8割を占めた。

全数把握対象疾患
  • 1類感染症
    報告なし。
  • 2類感染症
    結核275例
  • 3類感染症
    細菌性赤痢2例、腸管出血性大腸菌感染症31例
  • 4類感染症
    E型肝炎2例、A型肝炎1例、つつが虫病26例、デング熱6例、日本紅斑熱1例、ボツリヌス症1例、マラリア1例、レジオネラ症13例
  • 5類感染症
    アメーバ赤痢4例、ウイルス性肝炎3例、急性脳炎1例、後天性免疫不全症候群15例、髄膜炎菌性髄膜炎1例、梅毒11例、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例、風しん5例、麻しん5例

平成23年度インフルエンザ抗体保有状況調査−宮崎県−<資料>

感染症流行予測調査事業の一環として、2011/2012年のインフルエンザ流行シーズン前における県内の抗体保有状況調査を宮崎県健康づくり協会および県立宮崎病院の協力を得て実施した。

調査では、9年齢群・280名(0〜4歳:53名、5〜9歳:22名、10〜14歳:26名、15〜19歳:25名、20〜29歳:52名、30〜39歳:26名、40〜49歳:26名、50〜59歳:25名、60歳以上:25名)から同意を得て、2011年7月1日から9月14日に収集した血清を対象とした。また、下記の4抗原(1,2,3は今シーズンのワクチン株)を用い、赤血球凝集抑制抗体(HI抗体)の測定を行なった。

  1. Aパンデミック型
    A/California(カリフォルニア)/7/2009(H1N1)pdm09
  2. A香港型
    A/Victoria(ビクトリア)/210/2009(H3N2)
  3. B型
    B/Brisbane(ブリスベン)/60/2008(ビクトリア系統)
  4. B型
    B/Wisconsin(ウィスコンシン)/1/2010(山形系統)
    今シーズンのワクチン株は、ビクトリア系統であるが、山形系統の代表として本株も調査対象となった。

[ 調査結果 ]

感染防御に有効と考えられる40倍(1:40)以上の抗体保有状況は以下のとおりであった。また、80倍(1:80)以上および160倍(1:160)以上の抗体保有状況も併せて図に示した。

  1. Aパンデミック型:A/California/7/2009(H1N1)pdm09に対する抗体保有状況
    5〜9歳群、10〜14歳群、15〜19歳群、20〜29歳群ではそれぞれ69.6%、76%、76.9%、71.1%と高い抗体保有率であった。40〜49歳群では46.2%と比較的高く、0〜4歳群と60歳以上ではそれぞれ34%、30.8%と中程度であった。また、その他の年齢群では24%以下と比較的低い保有率であった。
  2. A香港型:A/Victoria/210/2009(H3N2)に対する抗体保有状況
    20〜29歳群、40〜49歳群、50〜59歳群、60歳以上ではそれぞれ80.7%、76.9%、84%、88%であり、抗体保有率は高かった。5〜9歳群、10〜14歳群、30〜39歳群ではそれぞれ40.9%、50%、46.2%であり、比較的高かったが、0〜4歳群では7.5%と低かった。
  3. B型:B/Brisbane/60/2008(ビクトリア系統)に対する抗体保有状況
    20〜29歳群、30〜39歳群ではそれぞれ67.3%、69.2%と高く、15〜19歳群、40〜49歳群でそれぞれ56%、57.7%と比較的高い抗体保有率であった。しかし他の年齢群では40%未満であり、0〜4歳群では18.9%と低い保有率であった。
  4. B型:B/Wisconsin/1/2010(山形系統)に対する抗体保有率
    すべての年齢群で25%未満と低く、特に0〜9歳群、50歳以上では全員が抗体を保有していなかった。

[ コメント ]

2010/11シーズンは、A/H1pdm09亜型とA/H3亜型が混在して流行し、B型の流行は小規模であった。

A/H1pdm09型とA/H3型、B型(ビクトリア系統)について、40倍以上の抗体保有状況を前年度と比較すると、本年の方が全体的に高い傾向であった。また、本調査での80倍および160倍以上の抗体保有状況は、A/H3型およびB型に比べA/H1pdm09型に対するものが高い傾向であった。特に5〜29歳で高く、中でも15〜19歳群で最も高く保有していた。これらの年齢群は、学校などの集団生活の場でインフルエンザウイルスに暴露される機会が多く、その影響を受けたものと推測される。一方、30〜39歳群と50〜59歳群のA/H1pdm09型に対する抗体保有率は、他の年齢群に比べて明らかに低く、その原因としてA/H1pdm09亜型の暴露の機会が少なかったことが推測される。特に30〜39歳群については、他の年齢群に比べ予防接種率が低い傾向であったことも一因と考えられる。また、多くの人がA/H3型およびB型よりもA/H1pdm09型に対し高い抗体価を保有していた原因として、2009年にA/H1pdm09型が世界的に大流行を起こして以来、昨シーズンも流行が続き、これに加えて予防接種などの相乗効果によるものと考えられる。一方、流行の少ないB型(山形系統)については全年齢群で抗体保有率が低い傾向であった。

今シーズンは、すでに関東・近畿・中国地方でA/H3亜型あるいはB型インフルエンザによる集団発生の報告があり、病原微生物検出速報によると、2011年11月25日時点ではA/H3亜型が優位となっている。これらのことから、今シーズンも本格的な流行が始まる前の予防対策が必要である。

宮崎県における年齢別HI抗体保有状況(2011/12シーズン前)
A/カリフォルニア/7/2009(H1N1)pdm09
B/ブリスベン/60/2008(ビクトリア系統)
A/ビクトリア/210/2009(H3N2)
B/ウィスコンシン/1/2010(山形系統)

PDFファイルダウンロード



宮崎県衛生環境研究所
〒889-2155 宮崎市学園木花台西2丁目3-2 / 電話.0985-58-1410 FAX.0985-58-0930