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宮崎県衛生環境研究所の外部評価について

平成21年度外部評価結果を受けて


  1. はじめに
    当研究所は、平成19年4月に「宮崎県衛生環境研究所調査研究課題評価実施要綱」を制定し、研究課題の公平性・客観性・透明性の確保に努めて参りました。
    この調査研究評価実施要綱に基づき、去る平成21年8月18日に、外部の有識者で構成される「調査研究評価委員会」(別表1)が開催され、当研究所の今年度実施予定の調査研究課題の中で特に重要な調査研究7課題に対して、幅広い視点から数多くの有益な評価と貴重なご意見をいただきました。
  2. 評価結果と今後の対応
    今回の7課題に対する評価は、5段階評価で、5(非常に高く評価できる)及び4(高く評価できる)でした。
    調査研究評価委員会からいただいたこれらの評価結果について、今後の当研究所の調査研究活動の改善や研究計画の見直しなどに活用して参ります。
    また、委員会の席上やその他の機会に調査研究全般に関していただいた貴重なご意見等につきましても、今後の調査研究の方向性を定める上の貴重な資料として、活用させていただきます。
    なお、ご意見の概要と当研究所の取り組みの概要は別表2のとおりです。
    今後とも、調査研究評価委員会のご意見やご助言を踏まえ、所業務の活性化に取り組んでいくとともに、県内における保健衛生・環境保全分野における科学的・技術的中核機関としての職務の遂行に努めて参ります。

別表1 宮崎県衛生環境研究所調査研究評価委員会委員名簿(任期 平成21年4月1日〜平成23年3月31日)

氏名 所属
南嶋 洋一(委員長) 九州保健福祉大学 学長
山本 隆一 九州保健福祉大学 薬学部長
吉田 建世 宮崎県医師会 常任理事
杉尾 哲 宮崎大学名誉教授
後藤義孝 宮崎大学農学部 獣医学科教授


別表2 調査研究課題に対する評価委員会の主な意見と所としての対応

課題、研究期間、評価 主な意見 衛生環境研究所における対応

生食用食鳥肉におけるカンピロバクター属菌及びサルモネラ属菌の汚染実態調査

研究期間:H21〜H22

評価:5(非常に高く評価できる)

  • 調査結果を県民に公表して関心を高め、各業者を指導して初めて目的は達成される。成果の県民への還元は研究発表会だけでなく、他の方法を含めて検討することが望ましい。
  • 本研究に基づき適切な衛生管理が実施されたならば食鳥肉が生食用として安全に供給される可能性もあるが、現在の鶏肉の処理方法並びに指導方法で微生物汚染を本当に無くすことができるのかこの調査研究で明らかにして欲しい。
  • 引き続き、生食用食肉の実態について調査を続け、その検査結果を県民や食品加工業者等にフィードバックし、食中毒予防のため、行政指導の方法や販売加工現場における処理方法の改善のための検討材料を提供したい。
  • 県内の食中毒事例や散発下痢症事例の分離株と比較することにより、関連を検証し、生食用食鳥肉による食中毒等発生のリスク対策に役立てたい。

腸管出血性大腸菌O157のベロ毒素についての研究

(宮崎大学農学部及び日向・都農・食肉衛生検査所との共同研究)

研究期間:H18〜H20

評価:5(非常に高く評価できる)

  • 病原微生物学として病原性を論ずる場合、遺伝子レベルではなく、蛋白発現量(毒素産生量)で定義していく視点が必要である。その場合、統計学的根拠も必要である。
  • 今後は、研究成果を保健衛生行政に反映させると同時に、分子疫学解析法等の研究を発展させ、重症患者への迅速対応をはじめとする検査体制および防疫体制の充実を図っていくことを期待する。
  • 今後は、ベロ毒素型の検査をルーチン化し、患者対応へ役立てたい。
  • O157の病原性の強弱と、遺伝子レベル・ベロ毒素産生量との関連を、統計学的に検討する予定である。
  • 分子疫学的解析手法を発展させることに努め、保健衛生行政に役立てたい。

宮崎県及び九州地域におけるリケッチア症を中心としたダニ媒介性細菌感染症の疫学解明とリファレンス体制の構築

(厚生化学研究事業の分担研究)

研究期間:H21〜H23

評価:4(高く評価できる)

  • 新興感染症としてのヒトアナプラズマ症の実体解明と知見の集積に期待している。
  • 病原体保有動物の種類やその生態状況、病原体保有状況の地域差、人との接触状況の把握などかなり困難である。
  • リケッチア症ハイリスク地域における住民等への啓発方法は、早急に検討すべきである。
  • 得られた成果を保健衛生行政ならび環境保全行政に生かすことが必要である。
  • 先駆的な研究者との協同研究により、患者の有無の確認と保有動物、媒介ダニの調査を行う。
  • 患者発生における病原体保有動物の関わりについては、日本紅斑熱を中心に、関係機関の協力を得ながら検討する。
  • 公衆衛生に寄与するため、大学や国立研究機関との協同研究を推進するとともに、保健所との連携強化を図る。

県内の魚介類中のマリントキシン濃度実態調査研究

研究期間:H21〜H23

評価:4(高く評価できる)

  • 食の安全安心に対する社会の関心が高まる中、この研究は県民の食生活の安全安心に明らかに貢献するものであり、分析法の確立と、それを使った調査を推進し、食中毒の可能性の予知へ発展させて欲しい。
  • 調査は継続性が重要であり、近隣県とも連携して保毒魚介類の地理的分布域や季節性などきめ細やかな情報を速やかに県民に伝える必要がある。
  • マリントキシン濃度実態調査の成果(保毒魚介類の種類、濃度、地理的分布、季節等)の詳細を魚介類取扱業者や一般県民に速やかに公開し、マリントキシンを原因物質とする食中毒の予防を図りたい。
  • まずは初年度の研究成果を確認し、その上で近隣県との共同調査や長期継続調査および地球温暖化による保毒魚介類の生息域の変化等の調査研究について発展させていきたい。

宮崎県における日常食品中の汚染物質摂取量実態調査研究

研究期間:H21

評価:4(高く評価できる)

  • 特定の食品を対象としたデータの方が県民の関心を高めることになり、保健衛生行政上の効果が高いのではないか。
  • 得られた結果をどのようにして県民の安心につなげるのかその目的と方向性を示す必要がある。結果のフィードバックとして、成果をまとめて県民に公開することが望まれる。
  • 新しい技術開発への寄与度に乏しい。
  • 特定の農畜水産食品の残留農薬等については、年間計画の収去検査で検査を実施している。
  • 得られた結果は、他県の結果とともに取りまとめられ、国の施策に反映される。県レベルでも、得られた詳細なデータを保健所等食品衛生行政部門に提供し、食品安全啓発へ活かしていきたい。
  • 日常食品中の汚染物質の定量を行うことにより、多様なマトリックス中の汚染物質の定量法の開発を行う。

酸性雨の湿性沈着物及び乾性沈着物調査に関する研究

(九州地方知事会政策連合項目による課題、九州山口の地方環境研究所との共同研究)

研究期間:H19〜H21

評価:5(非常に高く評価できる)

  • 九州・沖縄・山口が連携してこの問題に取り組んでいるが、本県が主体となっており、国民健康を考える視点から非常に高く評価する。
  • 広域かつ国際的な大きな課題である。次の研究フェーズでは、大気環境の保全に向けての国際的枠組みの構築が期待される。
  • 今後も我々の生活環境を守るため、国際的に提言できるほどの材料となりうる具体的な証拠作りに貢献してほしい。
  • 引き続き、当研究所が解析担当県として「九州・沖縄・山口地方酸性雨共同調査研究」を牽引していく。
  • 調査に当たっては、乾性沈着調査をさらに充実させ、他の研究とも連携しながら越境汚染の影響をより具体的に明らかにし、国際的枠組みの構築に貢献していきたい。
  • 国際的に提言するための基礎データとなるべく研究を継続していく。

廃棄物処理施設等における再生利用促進事業

(宮崎県産業廃棄物税基金活用事業、宮崎大学工学部、建設技術センター、その他との共同研究)

研究期間:H20〜H22

評価:5(非常に高く評価できる)

  • 廃棄物処理施設から排出される膨大な廃棄物を再利用しようとするものであり、循環型社会の形成に重要で、かつ緊急性が求められる社会的価値の高い課題である。
  • 産学官連携の下、問題解決に対するアプローチ等緻密で効果的に進められており高く評価できる。
  • 安全性やコスト(費用対効果)の課題を克服し、実用化をめざしてもらいたい。
  • 引き続き「建設資材活用ガイドライン策定」等を目標に、産学官が連携して、溶融スラグ等の有効利用の実用化をめざした共同研究を推進する。
  • 当所においては、溶融スラグを活用した際の有害物質溶出の有無といった視点から、安全性評価及び品質安定性の向上に取り組んでいく。
  • 中核機関として、コストや活用システムなどの課題に対し、必要な調整・提案に努める。

宮崎県衛生環境研究所
〒889-2155 宮崎市学園木花台西2丁目3-2 / 電話.0985-58-1410 FAX.0985-58-0930