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宮崎県衛生環境研究所の外部評価について

平成22年度外部評価結果を受けて


  1. はじめに
    当研究所は、平成19年4月に「宮崎県衛生環境研究所調査研究課題評価実施要綱」を制定し、研究課題の公平性・客観性・透明性の確保に努めて参りました。
    この調査研究評価実施要綱に基づき、去る平成22年8月26日に、外部の有識者で構成される「調査研究評価委員会」(別表1)が開催され、当研究所の今年度実施予定の調査研究課題の中で特に重要な調査研究6課題に対して、幅広い視点から数多くの有益な評価と貴重なご意見をいただきました。
  2. 評価結果と今後の対応
    今回の課題に対する評価は、5段階評価で、5(非常に高く評価できる)及び4(高く評価できる)でした。
    調査研究評価委員会からいただいたこれらの評価結果について、今後の当研究所の調査研究活動の改善や研究計画の見直しなどに活用して参ります。
    また、委員会の席上やその他の機会に調査研究全般に関していただいた貴重なご意見等につきましても、今後の調査研究の方向性を定める上の貴重な資料として、活用させていただきます。
    なお、ご意見の概要と当研究所の取り組みの概要は別表2のとおりです。
    今後とも、調査研究評価委員会のご意見やご助言を踏まえ、所業務の活性化に取り組んでいくとともに、県内における保健衛生・環境保全分野における科学的・技術的中核機関としての職務の遂行に努めて参ります。

別表1 宮崎県衛生環境研究所調査研究評価委員会委員名簿(任期 平成21年4月1日〜平成23年3月31日)

氏名 所属
南嶋 洋一(委員長) 古賀総合病院 臨床検査部長(宮崎大学名誉教授)
山本 隆一 九州保健福祉大学 副学長
吉田 建世 宮崎県医師会 常任理事
後藤 義孝 宮崎大学農学部 獣医学科教授
杉尾 哲 宮崎大学 名誉教授


別表2 調査研究課題に対する評価委員会の主な意見と所としての対応

課題、研究期間、評価 主な意見 衛生環境研究所における対応

Stx2遺伝子を有する腸管出血性大腸菌についての調査研究

(厚生化学研究事業の分担研究)

研究期間:H22 〜H24

評価:5(非常に高く評価できる)

  • Stx2遺伝子を保有するO-157以外のEHECの分布状況や、人への病原性を明らかにすることは県民の健康管理の視点からも重要な課題である。
  • O-157以外のEHECは株ごとにさまざまなStx2バリアント遺伝子を保有するため、それらを網羅的かつ効率よく検出できるシステムが開発されれば、非常に有用である。今後、宮崎県におけるStx2変異型の分布状況も明らかにして頂きたい。
  • 変異型を含めたStx2遺伝子を効率よく検出するシステムを構築し、得られた情報を速やかに医療現場へ還元するよう努めたい。
  • 宮崎県におけるO-157以外のEHECおよびStx2変異型の分布状況を把握し、全国および海外等の分布状況と比較することで、今後、問題となる可能性のあるEHECの監視体制を強化したい。

生食用食鳥肉におけるカンピロバクター属菌及びサルモネラ属菌の汚染実態調査

研究期間:H21〜H22

評価:5(非常に高く評価できる)

  • 実態調査結果に基づき、業者に対して衛生指導を行い、効果をあげていることは、高く評価できる。
  • 菌種、血清型、遺伝子解析により感染経路を特定することで、業者にも注意喚起でき、今後の食中毒防止につなげることが出来る。
  • 現行の汚染実態調査だけでなく、汚染の広がりや実際に発生した食中毒との関係を検討するなど、防除対策に役立つ研究となることを期待する。
  • 成果について、業者だけでなく、一般県民にも周知させて欲しい。
  • 継続して実態調査を行い、衛生指導に役立つ具体的なデータを提示していきたい。
  • 地域による汚染菌種、菌型の分布状況を把握し、食中毒事例の疫学解析においてこれらのデータを活用したい。
  • 業者に対する衛生指導を行うとともに、リーフレット等を作成して、県民に対し食中毒予防の啓発を行い、生食用食鳥肉の衛生管理の向上を図っていきたい。

宮崎県におけるトリカブト属植物の毒性に関する研究

研究期間:H22〜H24

評価:4(高く評価できる)

  • 実験計画では、成分分析が主体となっているが、植物には多くの成分が含まれており、これらの成分の相互作用が生体内では起きることから、誤食による毒性について経口投与による動物実験等も実施することも検討していただきたい。
  • 本県における自生地調査と成分分析は行楽客に限らず、養蜂家などの業者にも重要な情報を提供し得るものと期待される。
  • 生息地域を限定して公表すると、悪用される危険性もあり、どういった情報をどこまで県民に提供するかを慎重に検討する必要がある。
  • 本研究では、有毒成分の分析法を確立し、成分分析を行い、植生と有毒成分含有量との関係を明らかにすることを目的としているが、より実際的な生物試験等の実施についても検討していきたい。
  • 有毒植物の情報提供については、行楽客のみならず業者等にも有用な情報を提供する必要があるが、一方、悪用されることの無いよう、生息地の特定を避ける等、充分配慮して行うようにしていきたい。

茶葉中の残留農薬実態調査

研究期間:H22〜H23

評価:4(高く評価できる)

  • 茶葉に含まれる残留農薬量を知ることは、県民の食の安全を守るという観点から意義のある研究である。継続的に調査が必要なのではないか。
  • 農薬の使用状況と残留量の関係や、喫茶(熱湯抽出)における農薬残留量も、明示されたい。
  • 茶葉中の迅速かつ高精度な残留農薬分析法の確立は、健康ブームでお茶の飲用が増加していることからも実現して欲しい。
  • 流通する茶葉を検査することで、残留農薬の実態を把握し、県民の食の安全に役立てたい。また、検出状況から継続調査も含め、検討したい。
  • 農薬の使用方法についても可能な限り情報収集を行い、農薬が検出された場合、熱湯抽出による残留量の比較も検討していきたい。
  • GC/MS測定で農薬成分と重なる妨害ピークを除去し、迅速かつ高精度な分析法を確立したい。

光化学オキシダントと粒子状物質等の汚染特性解明に関する研究
(C型共同研究III)

研究期間:H19〜H21

評価:5(非常に高く評価できる)

  • 九州地区において光化学オキシダント等の大気汚染物質濃度が増加傾向となっている原因として、原因物質の大陸からの移流の可能性が高いことを解析できたことは、成果を上げていると評価される。
  • 引き続き研究を進展させて、大陸由来の特徴的な物質を特定するなど、より具体的な根拠を明らかにしてほしい。
  • 本研究が中国や韓国との国際的な共同研究にまで進展し、東アジア地域における大気汚染の低減につながることを期待する。
  • 光化学オキシダント実態解明の研究は、国立環境研究所と全国の地方環境研究所をメンバーとする全国的な共同研究として実施されてきたが、引き続き微小粒子状物質(PM2.5)の挙動解析と併せて進めることになっており、大陸からの移流を裏付けるエビデンスの蓄積を図りたい。
  • 酸性雨や有害大気汚染物質の共同研究とも連携して、東アジアにおける広域大気汚染の解明に務め、九州地方知事会、大気環境学会、環境省等に対して発信し続けたい。

大淀川上流域における水環境に関する研究(汚濁原因調査)

研究期間:H22

評価:5(非常に高く評価できる)

  • 本研究は、汚濁が進行している大淀川上流域の水質を改善するために実施されるものであり、調査研究内容の適切性・妥当性は高い。
  • 単に得られたデータを公表するだけでなく、河川流域の市町村とも密接に連携して改善に向けた努力をすることがより大切であると思われる。
  • 水質環境改善の取組は単年度ではなく複数年にわたって行う必要があるのではないか。
  • 本研究は県及び大淀川上流域の市町が共同で実施するものであり、水質悪化の原因となっている汚濁流入水の特定を目指している。その解析結果は関係自治体が取り組む種々の対策に反映することとしており、最終的に水質の早期改善につなげていきたい。
  • 水質環境改善のための汚濁負荷低減等の対策は経年的に実施されていくので、その効果を検証するためにも水質モニタリングの継続は重要と考える。

宮崎県衛生環境研究所
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