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宮崎県衛生環境研究所の外部評価について

平成25年度外部評価結果を受けて


  1. はじめに
    当研究所は、平成19年4月に「宮崎県衛生環境研究所調査研究課題評価実施要綱」を策定し、研究課題の公平性・客観性・透明性の確保に努めて参りました。
    この調査研究評価実施要綱に基づき、平成25年7月18日に、外部の有識者(別表1)で構成される「調査研究評価委員会(以下「委員会」という。)」を開催し、平成24年度に終了した調査研究課題、平成25年度も継続して実施する課題及び平成25年度から新たに実施する課題の中で特に重要な6つの調査研究課題に対して、幅広い視点から数多くの有益な意見や助言をいただきました。
  2. 評価結果と今後の対応
    今回の課題に対する評価、意見等については別表2のとおりで、評価については5段階評価で、4(高く評価できる)または3(評価できる)でした。
    委員会で出された貴重な意見等を参考に、実際に調査研究課題に取り組んでいく中で、一部計画の見直しなどを行いました。
    今後とも、委員会の意見等を踏まえ、所業務の活性化に取り組んでいくとともに、県内における保健衛生・環境保全分野における科学的・技術的中核機関としての職務の遂行に努めて参ります。

別表1 宮崎県衛生環境研究所調査研究評価委員会委員名簿(任期 平成25年4月1日〜平成27年3月31日)

氏名 所属
南嶋 洋一(委員長) 古賀総合病院 臨床検査部長(宮崎大学名誉教授)
山本 隆一 九州保健福祉大学 副学長
吉田 建世 宮崎県医師会 常任理事
後藤 義孝 宮崎大学農学部 獣医学科教授
土手 裕 宮崎大学工学教育研究部 社会環境システム工学科教授


別表2 調査研究課題に対する評価委員会の主な意見と所としての対応

大淀川流域におけるクリプトスポリジウム等の汚染実態調査
課 題 ◇ 研 究 期 間 ◇ 評 価

大淀川流域におけるクリプトスポリジウム等の汚染実態調査

研究期間
平成24年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 本流の大量の河川水で希釈される前の、豚舎等からの排水が流れ込む支流の検査や、水泳やキャンプ等のアウトドアライフに関係する場所の水についても調査を期待したい。
対応 今後、河川の調査を進める中で、クリプトスポリジウム等が検出された流域については、遡り調査の一環として畜産施設やアウトドアエリア等の近隣の河川水についても、調査を検討して参りたいと考えています。
意見2 大淀川流域以外の、畜産業が盛んな他の河川についても、汚染が発生する可能性が有り、同様な調査を続け、宮崎県の水源水質の監視および潜在的汚染リスクの低減化対策に活用できることに期待したい。
対応 今年度から、新たに3年間に渡り県内の主な河川流域を対象に、観測定点を設ける計画です。クリプトスポリジウム等による汚染の実態を継続的に把握することで、今後も予防対策や潜在的汚染リスクの低減化対策に貢献して参りたいと考えています。
意見3 今後も本研究は継続されることが望ましく、またサンプル採取地点を変えたり、増やすことを検討すべきである。
対応 今年度から、新たに3年間計画で県内の主な河川流域を対象に、観測定点を設けるとともに、取水時期等も考慮して調査を実施して参りたいと考えています。
意見4 今回の河川水の採材量、場所、時期などが適切であったかどうかの検証を是非お願いしたい。またPCR法による病原体遺伝子の検出方法についても感度を高めるなどの工夫をお願いしたい。いずれにせよ、こうした検査を今後とも継続的に行って、安全な水資源の確保に努めていただきたい。
対応 今回の調査方法は厚労省の平成24年度の通知(クリプトスポリジウム等対策指針)に基づき、遺伝子検査法を組み合わせた方法で、精度管理も並列しながら実施しました。今後、大淀川流域を含めた県内の河川の調査について、取水の場所や時期等を考慮しながら継続するとともに、検査の感度や精度の向上に努めて参りたいと考えています。
意見5 調査期間に河川の低流量時が含まれていなかったことから調査研究目的の達成度はやや低いと判断した。
対応 今年度から、新たに3年間計画で県内の主な河川流域を対象に、観測定点を設けて継続的に調査を進める中で、冬場等における河川の低流量時を念頭に入れた取水時期等も考慮して参りたいと考えています。
VNTR(Variable Numbers of Tandem Repeats:縦列反復配列多型解析)検査導入による県内結核菌分子疫学解析データベースの作成
課 題 ◇ 研 究 期 間 ◇ 評 価

VNTR(Variable Numbers of Tandem Repeats:縦列反復配列多型解析)検査導入による県内結核菌分子疫学解析データベースの作成

研究期間
平成25年度〜平成27年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 従来行われていたRFLP法と比較し、必要菌量、生菌・死菌の比重、数値化による表示方法、迅速性などVNTR法が優位な点を提示して欲しい。
対応 ご意見のとおりRFLP法と比較しVNTR法の方が優れています。今後必要に応じて提示して参りたいと考えています。
意見2 検体を提供した施設等に結果・情報を速やかに還元し、院内感染の防止や接触者健診等の対策に活用できるシステムの構築を期待したい。
対応 保健所や医療機関と連携を取り、遺伝子解析データを蓄積することにより感染源、感染経路解明に活用できるシステムの構築に努めて参りたいと考えています。
意見3 宮崎県だけでなく全国的にデータベースが利用できるシステムの構築を目指して、わが国の結核菌の動態や地域医療連携体制の構築といった分野へのデータの利活用を期待したい。
対応 全国規模でのデータベース構築ができれば、各地域ごとの結核菌の動態がわかり、将来的には結核患者への対応等地域医療連携体制の構築にも有用と考えられます。なお、九州ブロックにおいては徐々にではありますが、データベース構築に向けての体制が整ってきております。
意見4 感染経路の把握や海外からの人の移動が国内および県内の感染に与える影響、多剤耐性結核菌の分布状況についても調査できるシステムを構築していただきたい。また、保健所と連携してVNTR検査結果を利用して感染経路の把握を検討していただきたい。
対応 県内在住の外国人の発症者の検査は現在まで一人のみですが、症例を積み上げて海外からの人の移動の影響を調査することは可能です。多剤耐性結核菌の分布状況については、今後感染症法に基づく特定病原体等の管理規則を踏まえ検討して参りたいと考えています。
宮崎県における日常食中の汚染物摂取量実態調査研究
課 題 ◇ 研 究 期 間 ◇ 評 価

宮崎県における日常食中の汚染物摂取量実態調査研究

研究期間
平成21年度〜平成24年度

評価:3
(評価できる)

意見1 広域「外食」産業が拡大し、産地不明の食材・惣菜による「中食」が定着しつつある現代社会に、マーケットバスケット方式による調査結果がそのまま外挿出来るのであろうか? 
むしろ、影膳方式の方が現実的ではないであろうか?
対応 陰膳方式は、検体の種類、産地、調理など、まさに実際に即したものですが、個々の検体(食事)間のばらつきが大きく、多くの例数を必要とします。マーケットバスケット方式では、スーパーで購入可能な産地の食材に限られる短所があるものの、汚染物質が何群(魚介類、肉・卵類、豆類など)に由来するものか分かるなどの長所もあります。今回は、国立医薬品食品衛生研究所からのマーケットバスケット方式で行うようにとの指示に従ったものですが、今後、県独自に調査するときは、これらの二方式の長所、短所を考慮したうえで、方式の採用を検討して参りたいと考えています。
意見2 トータルダイエット試料では特定物質の危険度は分りにくい。宮崎県民が他の地区と比べて多く摂取しがちな汚染物質を多く含む食品が特定できるとより良いと考える。
調査対象を、県内産食材に限定し、これらに含まれる汚染物質を測定し、それらの安全性を証明することのほうが、『宮崎採れ』の地産地消を促し、県産食材を広く 県民にアピールできる点でも重要で意義があるのではないか?
対応 トータルダイエット試料は、国民栄養調査結果の一日摂取量(南九州ブロック)に基づき各群の試料を調製しており、日常食からの汚染物質摂取量の実態を把握するうえで、一定の成果は得られるものと考えています。また、当所では、当該調査研究とは別に、年間計画に基づく収去検査により、個々の県産農畜水産物中の残留農薬、動物用医薬品の検査を行い、県産品の安全性確保を図っています。
意見3 年度により汚染物質の調査対象が変わっているのは何か理由があるのか?
対応 平成24年度は、農薬(有機塩素系農薬13項目、有機リン系農薬3項目、計16項目)の分析を行いませんでした。これは、国立医薬品食品衛生研究所から、分析項目の見直しを行うため、農薬分析を休止する指示があったためです。
残留農薬試験法の妥当性評価における検量線の検討
課 題 ◇ 研 究 期 間 ◇ 評 価

残留農薬試験法の妥当性評価における検量線の検討

研究期間
平成25年度

評価:3
(評価できる)


意見1 食品試料中にはそれぞれの農薬の検出法のインヒビタ―(阻害物質)の存在が予想されるので、ある食品の、ある農薬の検出に妥当な試験法が、そのまま他の食品の、他の農薬の試験にも妥当なのであろうか。
対応 他の食品についても試験法が妥当であるかは、検査結果の信頼性を確保する上で重要と考えます。今回の調査研究では、年に2回の収去検査を行う食品を対象に評価を行っていますが、その他の食品についても「食品中に残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドライン」で示されている代表的な食品や県収去計画を考慮して、対象食品を検討して参ります。
意見2 残留農薬の検査は、サンプリング方法、輸入件数、輸入重量、過去の違反率、過去の違反内容の危害度を勘案し、食品群ごと、検査分類ごとに必要検査件数を設定してはどうか。
対応 県では、食品の安全性の確保をより一層推進し、県民の健康保護を図るため、「宮崎県食品監視指導計画」を策定しており、この中で残留農薬等の収去検査については、これまでの検査結果や生産量、生産時期等を考慮し、幅広い種類の食品を対象に実施しています。
平成24年度の残留農薬の検査実績は、野菜、果物及び食肉を対象に151検体を検査しており、食品衛生法に基づく違反はありませんでした。
口蹄疫に係る埋却地周辺の環境に関する調査研究−臭気・地下水のモニタリング調査−
課 題 ◇ 研 究 期 間 ◇ 評 価

口蹄疫に係る埋却地周辺の環境に関する調査研究−臭気・地下水のモニタリング調査−

研究期間
平成22年度〜平成24年度

評価: 4
(高く評価できる)

 

意見1 非常に貴重なデータであり、担当者の努力に敬意を表したい。今後とも、調査を継続し、県民の安心できるデータの蓄積に努めてもらいたい。
また、現時点において、「埋却地周辺の300か所以上の調査で、4か所のみで地下水への影響が認められ、その影響は限定的であった。このことから、宮崎県の埋却地は適正に選択され且つ適切に埋却処理がなされた」と総括することが可能と思われる。これらの情報提供は、県民の市民生活に安心感を与えることに繋がるので、きちんと公表していただきたい。
対応 当所で行った調査結果から、埋却地の周辺水環境への影響は収まりつつあると考えていますが、さらに、平成26年度までの2カ年間継続してモニタリング調査を実施し、データの蓄積を行うことにしています。また、今回の口蹄疫発生は今までにない事案であり、地下水への影響を公表することで、県民の安心に繋がるとともに、今後同じような事案が発生した場合、家畜の処分方法の参考になるものと考えています。そこで、当所では所報や所ホームページ、また学会等で公表して参りたいと考えています。
意見2 埋却地の特性と水質との関係についても考察することで、さらに有用な知見が得られると考えられる。
対応 委員の言われるとおり、埋却地の特性と水質の関係を考察することで、埋却地選定の貴重な知見が得られるものと考えていますので、今後、今回得られたデータを農政サイドに提供し、埋却地選定の際の判断基準として活用していただきたいと考えています。
意見3 家畜が保有する微生物(特に病原微生物)が埋却土壌中もしくは地下水に混入し生存している可能性はないか気になるところである。すでに3年を経過しているが、可能であれば併せて調査していただけないか。
対応 口蹄疫関連の調査において、家畜保有の病原微生物を調査することは困難であると考えています。ただし、これまで一般細菌数、大腸菌・大腸菌群、嫌気性芽胞菌、糞便性大腸菌群数について調査してきており、その結果、BODなどが高くなるなど埋却地からの影響が疑われたとき、一般細菌数や原生動物の数が同時に上昇するなどの現象を確認しております。
大気採取ろ紙を活用したSPM(浮遊粒子状物質)及びPM2.5(微小粒子状物質)の高濃度事象の研究
課 題 ◇ 研 究 期 間 ◇ 評 価

大気採取ろ紙を活用したSPM(浮遊粒子状物質)及びPM2.5(微小粒子状物質)の高濃度事象の研究

研究期間
平成25年度                                                                        

評価:4
(高く評価できる)

 

意見1 大気汚染には国境がない。西日本各県を代表して、“貰い公害”の実態を内外に明らかにしてほしい。
対応 この研究では、SPM又はPM2.5が高濃度となった時、大気汚染常時監視用自動測定機のテープろ紙に採取された水溶性成分及び微量有害金属を測定することによって、高濃度の要因となった物質を明らかにし、さらに後方流跡線解析を行い、発生源の特定が可能であるかを確認することを目的としています。
前年度まで実施したテフロンろ紙を用いた微量有害金属の測定で得られた知見をもとに、今回の研究による測定結果を解析し、最新の汚染実態について公表して参りたいと考えています。
意見2 発がん物質を含む多環芳香族炭化水素の含有量の測定が必要ではないか。
対応 この研究では、SPM又はPM2.5が高濃度となった時、大気汚染常時監視用自動測定機のテープろ紙を利用して、後日分析・評価を行うこととしています。多環芳香族炭化水素の当該テープろ紙への吸着能や安定性など分からない部分が多いので、前年度までに実施したテフロンろ紙を用いた微量有害金属の測定で得られた結果と同様の結果が得られ、当該テープろ紙の有効性が証明された場合、今後検討して参りたいと考えています。
意見3 二酸化硫黄の濃度も重要ではないか。
対応 二酸化硫黄濃度も、データ解析を行う上で重要でありますので、テープろ紙の水溶性成分についてSO42-濃度分析を行うとともに、大気汚染常時監視の二酸化硫黄を含むSOx濃度も解析に活用して参りたいと考えています。
意見4 タバコの煙もPM2.5であることを県民へ周知徹底させることも必要ではないか。
対応 タバコの健康被害については各種関係機関が啓発活動を行い、警告を出しているところです。
当所としては、学生等の所内見学時にPM2.5のについて説明する際、タバコの煙とPM2.5の粒子径の関連性についても必要に応じ説明して参りたいと考えています。
意見5 県民への健康被害がどれくらいあるのか知りたいところである。また、健康影響及び被害防止対策の研究についても是非取り組んでいただきたい。
対応 SPM及びPM2.5の健康影響及び被害防止対策について、県レベルで研究することは困難であり、国の動向を注視してまいりたいと考えています。
なお、住民の健康影響をできるだけ小さくするため、これらの大気汚染物質の常時監視データをリアルタイムで公表し、注意喚起に努めて参りたいと考えております。

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