2 南部地域
(1) 加久藤−紙屋凹地帯
この凹地帯は紙屋(かみや)・野尻・小林・加久藤(かくとう)の各盆地が西北西−東南東方向に配列してできたもので、 盆地表面の高さは紙屋で160m、野尻で160〜180m、加久藤で240mと、西に向かって徐々に高くなる。紙屋盆地は宮崎層群堆積後陥没によって生じた湖を四家(しか)層・小林火砕流・皇位段丘堆積物・姶良火山の 入戸(いと)火砕流が埋積したもので、その位置は宮崎層群の西方湾入部にあたっている。 なお、この凹地帯には属さないが、田野盆地の形成も同様の性格のものである。 野尻盆地は四万十累層群上部の分布地域内にできた山間盆地で、小林火砕流および姶良火砕流で覆われている。 その位置は四万十累層群上部の著しい屈曲の軸部にあたっている。盆地形成の時期は明確でないが、 紙屋盆地形成に引き続くものと推定される。小林盆地は小林カルデラを加久藤火砕流と姶良火砕流が埋積してできたもので、 カルデラの存在は、ブーゲー異常から推定されている。小林市の北部にはシラス台地がよく発達している。 加久藤盆地は加久藤カルデラを加久藤層群および姶良火砕流が埋積してできたもので、盆地の基盤までの深さは400m以上に及ぶ。 盆地内を西流する川内川は上下2段の段丘を形成し、流域には沖積低地をつくっている。
このように、加久藤−紙屋凹地帯は単一の地溝と異なり、また一時期に生じたものではなく、 更新世の前期から後期にかけて、東から西へと順次盆地が形成され、その結果一連の凹地帯となったと思われる。
(2) 南那珂山地
宮崎県の南端部は南那珂山地で占められる。山地の大部分は主として古第三系の四万十累層群上部で構成されている。 標高500m以上の山稜は山地の中央部に集中しており、その大部分は浸食に強い砂岩からなる。鰐塚山(1,119m)、 一柳岳(968m)を連ねる山稜は北東−南西性であるが、北西−南東方向の支脈も多い。一般にこれらの山稜は狭長で谷は深く刻まれ、 壮年期の地形を呈している。なお山地の北東部には田野盆地があって、標高200m以下の台地となり、宮崎平野に臨んでいる。山地の南部は開析が進み、標高500m以下の低山地をなす。これらの山頂部はほとんど砂岩で構成されている。 広渡川や福島川の下流域には標高200m以下の丘陵が広がる。これは比較的浸食に弱い頁岩が南部に多いためである。
一方、山地東部には新第三紀の宮崎層群からなる独立した傾動地塊がある。これは別に鵜戸山塊ともよばれている。 岩壺山(738m)を最高峰とする山稜は同山塊の西側に偏し、宮崎層群の走向に平行して南北に伸びる。 山塊の東斜面は緩く傾斜して日向灘に没している。
南那珂山地を流れる主な河川は、西流する沖水川、北流する境川、東流する清武川、南流する広渡川・福島川などで、 九州山地とは対照的に流路は一定しない。このうち沖水川と境川はそれぞれ大淀川に合流する。 大淀川は南那珂山地の北部を縁どるように流れ、宮崎平野に至って日向灘に注いでいる。 これらの河川の支流はさらに種々の方向をとり、山地は網の目のように複雑に浸食されている。 鵜戸山塊には大きな河川はなく、東斜面には長さ数kmの小河川がほぼ等間隔に平行して並んでいる。
(3) 都 城 盆 地
南那珂山地と霧島山地との間にある南北約33km、東西約13kmの盆地で、沖積低地の標高はほぼ150mである。 盆地の基盤は主として四万十累層群からなる。盆地を埋積したものは更新世中期から後期に及ぶ末吉層・小林火砕流・ 都城層・姶良火砕流である。したがって、都城盆地の形成のはじまりは、小林カルデラ形成以前、 おそらく更新世前期の末葉であろう。
(4) 霧 島 山 地
第2図 霧島連山
これからの火山は種々の火山地形を呈している。大多数の火山の頂上には火口があり、 その明瞭なものだけでも15個が数えられる。このうち8個は火口湖となっている。 また山腹などに爆裂火口をもつもの8個を数える。火山の多くは鈍頂・緩傾斜の山体をなし、 山体に比べて大きな火口をもっている。火口の周辺は溶結火山餅によって覆われていることが多い。 高千穂峰は溶岩とスコリアを交互に噴出した成層火山でやや急傾斜の尖峰をなしている。 また夷守岳と大幡山はほとんどスコリアのみを噴出した砕屑丘である。なお、大幡山は二重の火口をもつ複式火山である。 大幡池や御池(みいけ)はスコリア・軽石あるいは基盤の岩片のみを放出した火口である。 御池西方の小池は溶岩による堰止湖である。
(5) 南部地域の海岸
青島から油津までの日南海岸は、整然と東傾斜する新第三紀の宮崎層群からなり、山地が海まで迫り、 沖積低地に乏しい。青島などでは砂岩泥岩互層が波食されて波食台ができている。 青島は波食台の上に貝殻片や砂が集積してできたもので、干潮時には陸地と砂嘴によってつながれ、 いわゆる陸けい島となっている。油津から串間までの海岸は主に地質構造の複雑な四万十累層群上部からなり、 差別浸食による屈曲の多い海岸を形成している。都井岬などの突出部は砂岩の優勢な部位にあたる。 ただ、油津から築島までの海岸および島には宮崎層群基底部の礫岩や砂岩が浸食に抗して残っている。 広渡川・南郷川・本城川・福島川などの河川は、下流部に沖積平野をつくり、一部には浜砂海岸もみられる。