(1) 延 岡 地 域
一般に厚さ60cm前後の第四紀層が含水層となっており、基盤の四万十累層群までの深度は海側に向かって深まる傾向にある良好な帯水層は砂礫層で大瀬川以北では深さ20m以浅の第1帯水層および深さ30m以深の第2帯水層が識別され、大瀬川以南では深さ20m以浅の第1帯水層のほか、深さ30〜40mにある第2帯水層、深さ50〜60mにある第3帯水層が識別される。各帯水層は4〜10mの泥質層によって隔てられている。第1帯水層は地表面直下の粗大な砂礫層で、これが自由面地下水帯水層となり、第2・第3帯水層は被圧地下水帯水層となっている。これらの砂礫層は五ヶ瀬川・祝子川・北川などによって形成されたもので、地下水もこれら各河川表流水の伏没によって供給されるものである。大瀬川以北の第2帯水層および大瀬川以南の第3帯水層では圧力面の低下に伴う海水の侵入によって塩水化の傾向が著しい。また第1帯水層にも塩水化の傾向が認められるので、水位・水質の変化を十分に看視し、残された良質の地下水を保全する必要がある。海岸線に沿う砂丘地帯では、小規模な地下水利用が可能である。
元来地下水の乏しいところであるが、各工場は耳川から取水する工業用水道に依存している。日向市の上水道は塩見川上流の表流水を水源としている。同川沿岸の中・上流部および砂丘地帯で小規模な地下水取水が可能であるが、水位を海水準面以下に下げないことが必要である。また財光寺地区などの砂丘地帯では、地表における汚染は地下水の汚染に直結するので、排水についても十分の配慮を要する。
小丸川下流沿岸の沖積層の厚さは薄く、5〜10mで基盤の宮崎層群に達する。しかし、小丸川沿いには伏流水の取水可能な地帯が分布しており、1井当たり500〜1,000m3/dayの実績が知られている。
宮崎層群中に挟まれる礫層は、高鍋駅付近で帯水層となっており、唯一の被圧地下水であるが、大きな水量は期待できない。
小丸川河口付近の伏流水は塩水化が進んでいる。
一ツ瀬川下流沿岸の沖積層は上流側程薄く西都市街地で20m程度であるが、下流側では少なくとも、60m前後に達していると推定され、35m付近から60m付近までの砂礫層から取水している実績が見られる。佐土原の河口部では近年養鰻業が盛んに行われ、地下水取水量は全体で15,000〜30,000m3/dayにも及んでいる。しかし、一般に良質・大量の取水は一ツ瀬川の伏流水地帯を明らかにすることが前提となろう。また河口部では塩水化に対する注意が必要である。
一方、段丘上には厚さ10m前後の礫層が発達し、1井当たり50m3/day程度の取水が可能となっている。段丘礫層の上にはローム層が堆積し、宮崎平野全般を通じて台地は重要な受水盤となっているが、地下水取水の可否および取水可能水量は、地形と段丘礫層下の宮崎層群上面の構造とによって微妙に異なってくる。なお、段丘礫層中の地下水は、砂丘中の地下水と同様、地表における汚染の影響を直接受けやすい状態にある。
宮崎市街地付近の沖積低地における基盤の宮崎層群までの深度は、一部では60mに達するところもあるが、一般には20〜30mのことが多い。沖積層中の砂層・砂礫層からの自由面地下水が利用されているが、市街地北西部を除いて一般に水質は悪い。
大淀川沿いに遡れば、本流と本庄川との合流点付近までは、水量としては1井当たり1,000〜1,500m3/day程度の取水が可能であるが、鉄分が若干多いのが難点である。しかし、これから上流側では、河川氾濫堆積物としての砂礫層がよく発達し、かつ相対的に河床面が高くなるので、質・量ともに勝れた伏流水の取水が容易となる。高岡町においては、大淀川本流の伏流水を、国富町と綾町においては本庄川および綾川の伏流水をそれぞれ上水道水源としている。
清武川沿岸においては、下流部の河床勾配と河床礫の発達程度が、大淀川水系の国富町や綾町付近のものに匹敵し、沿岸砂礫層がよく発達している。伏流水の取水可能量としては、宮崎平野の中でもっとも勝れ、1井当たり2,000〜4,000m3/dayの実績を有しており、宮崎市上水道第2水源および清武町上水道水源として利用されている。沿岸における生活用水・工業用水および農業用水などを加えると、清武川下流沿岸地帯における地下水依存量は、夏期において日量30,000m3前後におよぶものと推定される。
大淀川河口を中心として南北に連なる砂丘地帯は独立した地下水涵養および貯留層を形成しており、地下水面を海面以上に維持すること、および地表汚染源を発生させないことを条件として、小規模の取水が可能である。また、ここに原生林的な緑地帯を育成することによって、維持調整水量を増加させることも可能である。
日南市の広渡川および酒谷川下流沿岸では沖積層の厚さは10m前後で、河川に沿って伏流水が得られる。また、ところによっては沖積層下にシラス層が伏在し、それにも滞水している。河川表流水および伏流水は、パルプ工場を始め市の上水道水源などに利用されている。
串間市の福島川下流沿岸沖積地には砂礫層が発達し、清武川沿岸に匹敵する伏流水の取水が可能である。また、沖積層下には、シラスおよび灰石層が伏在し、これら姶良火砕流の下位の砂層からも被圧地下水が得られる。ただし、河口部においては海水の侵入による塩水化に注意する必要があろう。なお、その涵養・貯留層であるシラス層が形成する台地では、ボーリングによる地下水揚水が可能である。
都城盆地は深い構造的陥没地に姶良火砕流、および四万十累層群から供給された含屑が埋積して形成された盆地で、含水層の垂直的な発達規模は本県最大である。帯水層として重要なものは、現河川氾濫堆積物・低位段丘堆積物・シラス・都城層などである。都城層以外はいずれも自由地下水を含み、とくに粗粒な河川氾濫堆積物に富む沖水川や萩原川の沿岸では、伏流水の大量取水が可能である。都城層は盆地の地下一帯に広く伏在し、溶結凝灰岩層(灰石)等により上位シラス中の地下水と遮断されて、豊富な被圧地下水を含む。都城市街地付近では深度70〜80mで灰石を貫き都城層に達する。被圧地下水は大淀川沿岸沖積低地では自噴し、自噴量3,400m3/dayが記録されている。
地下水取水量は浅層・深層あわせて、夏期最大50,000m3/day程度にのぼると推定されるが、最近特に深層の被圧地下水の開発が進んでいるので、盆地内の地下水収支について予測しておくことが必要となろう。また、本地域は大淀川沿岸諸都市の上水道水源や水域環境の上流にあたり、水源涵養地帯となっているので、廃水による水質汚染については、特に厳重な看視体制が必要である。
高原町を始め小林市の夷守岳、えびの市の甑岳・飯盛山など霧島火山周辺山麓には湧水群が発達しており、いずれも大量の湧出量を誇っている。
小林市の上水道水源は市街地南方の沖積低地にあり、夷守岳東北麓の扇状地下を流下して来た浅層地下水を得ている。
えびの市一帯は加久藤カルデラが埋積されて形成された盆地で、含水堆積物の垂直的規模は都城盆地あるいはそれ以上と思われるが、概ね深度50m以深は含ガス層または含温泉水層となっている。したがって、飲用などの生活用水は、湧水や浅層の自由面地下水に依存している。えびの市の上水道水源は川内川沿岸の伏流水である。