宮崎県季刊誌「Jaja」じゃじゃ
和牛肥育

「牛がストレスなく気持ちよく暮らせること」が肥育のポイント。子牛から1年半、手塩にかけて育てられる。

牛みんなが元気でいるのが、一番幸せ。
ゆったりとした気持ちで育ってほしいですね。

都城市/福永廣文さん

戦前から競走馬などを飼っていた祖父の代から続く畜産一家に育った福永廣文さん。昭和59年に子牛45頭を購入したことを皮切りに、現在は200頭あまりを育てている。「しばらく茶園経営が中心だったのですが、やはり牛を飼ってみたいと茶畑を牛舎にしてしまいました。結婚したばかりの妻は驚いていましたが(笑)」

都城地区一帯は、約2万頭の子牛を供給する日本一の和牛生産地帯。その約半数は地元へ、残りの半数は全国の肥育農家に向けて出荷されている。質の高さで人気の宮崎牛は、主に地元で生まれ、育てられた和牛のうち、特に品質の良いものだけが、その名を許される。より良い牛を育てることが、福永さんたち肥育農家の目標だ。

「松坂牛や神戸牛も、もともとはその多くが宮崎で生まれた子牛が育てられたものです。『宮崎牛』はもちろん味では負けていないつもりですが、さらにそれを上回る牛を育てたいというのが、われわれの目標です。」

福永廣文さんと妻の真美子さん

お茶畑に建てた牛舎も20年を越え、新牛舎へ引っ越し目前。「新しいところで写真を撮りたかったですね(笑)」。妻の真美子さんと。

生後240日前後の子牛を買い付け、約1年半ほど育てて出荷する和牛肥育は、子牛の血統とともにその1年半を、牛とどうつきあっていくかが結果に表れる。何よりの大敵はストレスで、牛がゆったりとリラックスして暮らせるようにすることが、最大のポイントとのこと。福永さんの牛舎でも、音楽を流したり、「牛が背中を掻けるように」古タイヤを吊るしたりと、さまざまな工夫を施している。

「昔から『寝牛、立ち馬』という言葉があるのですが、食後の昼下がりなどには、牛はどーんと寝ているのが理想。中には死んでいるんじゃないかと思うようなのもいます(笑)。牛は大変敏感な生き物ですので、ちょっとした変化や不快なことがあると、そわそわしてしまう。牛は言葉をしゃべれませんから、いつも気を配って気持ちを察してやることが大切だと思います」

年に一度開催される県共進会(品評会)は、「通知表をもらうようなもの」。県内各地から選りすぐりの和牛110頭ほどが出品される中で、平成16年度は八席を受賞した。「家族と同じで、牛みんなが元気である時が、一番幸せを感じます。その結果の受賞ですから、私にとっては『5』をもらったような気分でしたね。」