3-5 日 南 層 群
分布・岩質 |
日南層群(首籐,1963)は,宮崎県南縁部の北郷町,日南市,串間市付近に分布し,北西縁は日向層群と衝上断層で接し,東縁は宮崎層群に不整合で覆われる.日南層群は,主として砂岩,泥岩,砂岩泥岩互層,乱雑層からなり,玄武岩質火山岩類,赤・緑色珪質泥岩の産出は稀である.日南層群は,日向層群と同様に,砂岩優勢層,乱雑層優勢層,泥岩を主とする地層などが,構造的なユニットを作り,おそらく衝上断層で繰り返し分布するものと思われる.
砂岩は,砂岩泥岩互層を伴いながら, 北郷町付近,串間市北西方および南東方,南郷町付近にまとまって分布する(太田・木野,1965;木野,1959a,b;加藤,1985;遠藤ほか,1991,1992;坂井,1992b ).砂岩は中粒〜粗粒で厚く成層しており,比較的ソーティングがよく,基本的に日向層群のものと同様である (今井ほか,1979).砂岩泥岩互層は,南郷町付近にリズミカルな砂岩泥岩等量互層が分布する.砂岩泥岩互層中の砂岩には,級化層理が明瞭に認められるものがあり,南郷町贄波付近では,一部の地層が逆転していることが確認される.
泥岩は,日南層群分布域のほぼ全域で,それぞれ構造的なユニットを作りながらまとまって分布する.泥岩は黒色で一部に砂質のラミナを伴ったり,厚さ2,3cmの薄い細粒砂岩層を挟むことがある.一般的に日南層群の泥岩は,日向層群のものに比べて,劈開の発達は極めて弱く,風化してキャラメル状の割れ目ができていることが多い.
乱雑層は,日南層群分布域の全域で広く分布している. 乱雑層は泥質の基質中に様々な大きさの砂岩のブロックが含まれるもので, 含まれるブロックの量にも多いものから少ないものまでばらつきがある.また, 乱雑層の中には,本来の砂岩泥岩互層の形態を比較的とどめているものも多く認められる.酒井(1988a,b,c)によると,これらの乱雑層は,海底地すべりに起因するオリストストロームが基本であるとされている.
赤・緑色珪質泥岩は,串間市北東で1ヶ所だけで確認された.また,玄武岩質火山岩類は串間市黒井沖のトセンバイでその存在が確認されている(木野,1959b;酒井,1991).酒井(1991)は,この玄武岩が,オリストストローム形成以前の始新世の付加体またはそれが崩壊したオリストリスとしている.
時代 |
Nishi(1985)は,南郷町付近の日南層群の泥岩から,Blow(1969)による浮遊性有孔虫化石帯で,P21からN4帯までの有孔虫化石を報告した.これは,前期漸新世から最前期中新世を示す.また,酒井(1988a)は,都井岬周辺で,P20からP21帯の有孔虫化石を報告した.さらに,斉藤ほか(1994)は,「末吉」図幅地域や東隣の「飫肥」図幅地域の日南層群の泥岩から, Tristylospyris triceros, Tristylospyris tuberosaなどの前期漸新世後期〜後期漸新世初期の放散虫を報告した.また,泥岩優勢相の泥岩から, P19帯より古い時代を示すものからP22帯までの有孔虫を,砂岩優勢相の泥岩から, P21からN4帯までのものを発見し,それぞれ,前期漸新世から後期漸新世,前期漸新世の後期から中新世初期のものとした(斉藤ほか,1994).また,串間市北西方で,Acila (Truncaclia) ashiyaensis,Cyclocardia subnipponica,Glycymeris cisshuensisなどの芦屋動物群を示す貝化石が産出する(斉藤ほか,1994).