4−14 大崩山コールドロンの形成

 宮崎県北部の大崩山火山−深成複合岩体の環状岩脈は,秩父帯・四万十帯の諸岩類を貫いている. 火山から大量の溶岩・火砕流が噴出した後に,地下にマグマの抜けた空間ができ,それより上側の部分が円筒状の断層に沿って落ち込むと,コールドロンという陥没構造ができる.この時,その円筒状の断層に沿ってマグマが貫入したものが,環状岩脈である.コールドロン形成時に,岩脈の内側が500 m程度下降したことが, すでにTakahashi(1986)の断面図に示されている.環状岩脈の南西部にあたる,日之影町戸川岳西方では,環状岩脈の両側で仏像構造線がずれている(第16図 128kb).この付近では,仏像構造線は30°北西傾斜で,岩脈に沿う走向隔離(断層に沿う水平方向の見かけのずれ)が900 mであることから,環状岩脈の内側が500m程度下降していると考えられ, Takahashi(1986)によるものと同じ程度の値が得られている(村田,1998a).

 塚原衝上断層は,環状岩脈の南西部の日之影町丹助岳付近から,北方町茶臼山付近にかけて,8 kmに達する大きな値の走向隔離を持つ(第16図 128kb).この付近では,塚原衝上断層は20°以下と低角であり,塚原衝上断層の走向と,岩脈の走向つまり円筒状の断層の走向がほぼ一致している.そのため,岩脈の内側がせいぜい500 m程度下降しただけで,このような大きな走向隔離になっており,この付近で岩脈の内側が特に大規模に下降したのではないと思われる(村田,1998a).環状岩脈の東部の北川町熊田付近では,塚原衝上断層やその周辺の地層は,環状岩脈の東縁部で少しずれる程度である. 東側の環状岩脈の部分に沿っては,西側の部分ほどの下降成分はなかったものと推定される(村田,1998a).