宮崎県季刊誌創刊夏号Jaja
 【特集】堂々、本格焼酎>>宮崎焼酎の概略蔵元を訪ねて蘊蓄知事、焼酎を語る蔵元セレクション

癒しの一滴、宮崎焼酎
一日の疲れを感じる夕暮れ時、ふと癒されたいと感じる時間。都会のオフィス街の中で。自宅へ向かう坂道の途中で。農作業帰りのあぜ道で。そんなとき、宮崎焼酎は、やさしい懐の深さで、そっとあなたを包み込み、明日へと背中を押してくれるでしょう。焼酎を飲んで、目を閉じて、じんわりとあたたかい気持ちになったら、それはきっと、宮崎の焼酎です。

焼酎のルーツをたどる

焼酎の伝来経路には諸説あるが、そのひとつに、タイから琉球を経て薩摩へというルートがある。15世紀初頭に建国された琉球王国は、外国との交易を盛んに行っていたが、なかでもシャム国(現在のタイ)と密接な交流があった。琉球泡盛も、15世紀中頃にシャム国から伝わった蒸留酒の製法によって生まれたとされる。また、15世紀末には琉球と薩摩の交易が始まり、それが焼酎の誕生につながった。いも焼酎の原料となるさつまいもの本格的な栽培が始まるのは、1705年、薩摩の前田利右衛門が琉球から種いもを持ち帰ってから。いも焼酎も、この時代に生まれたと考えられている。

宮崎焼酎の概略

個性豊かな宮崎焼酎

関東や関西の大都市圏を中心に、かつてない焼酎ブームだ。80年代に起こった焼酎ブームでは、酎ハイが※甲類焼酎の消費拡大をもたらしたが、今回は素材の持ち味を生かした※本格焼酎(乙類)が人気を集めている。特に宮崎の焼酎は、ライトでやわらかな風味が女性にも飲みやすいと、今や原料不足や人手不足で、生産が追いつかないほどだ。

宮崎焼酎の特徴は、芋・米・麦・そばと原料の多彩さに加え、蔵元ごとの個性がはっきりしていることにある。お隣り鹿児島県の蔵が芋、大分県の蔵が麦という画一的なイメージがある中、宮崎焼酎はそれぞれの原料の風味を生かし、個性豊かに造られている。

豊かな風土に根づく焼酎文化

このように多彩な焼酎が生まれた背景には、宮崎県の豊かな風土がある。温暖で土地が肥沃な平野部では米、北部山間部では、そば・あわなどの雑穀類、鹿児島県寄りの県南部ではサツマイモと、それぞれ身近にある素材を原料にして焼酎が造られてきた。そして、田植えや稲刈りといった農作業の節目や、五穀豊穣を祝う祭りなど、地域に根ざした風習とともに、いつも焼酎は人々の暮らしの中にあった。蔵元は人々のために焼酎を造り、人々は蔵元を支えてきた。焼酎は、一つの「文化」として、地域にしっかりと息づいてきたのだ。

時代を超えて、現代が求める焼酎へ

そして、今、第3次といわれる焼酎ブームを迎えている。それは、かつて本格焼酎が敬遠される理由であった「くせ」が、蔵元の努力と、蒸留技術の向上によって、味に奥行きを生む「個性」に生まれ変わり、「個性」が求められる時代にマッチしたからだろう。そして、何よりも、あらゆることが不透明な時代に、肩ひじを張らずに飲める焼酎が、「癒し」を求める現代人の心をしっかりと、そして、温かくつかんだからに違いない。

現在、宮崎県内にある醸造所の数は39カ所。それぞれの蔵元が、ブームに踊らされることなく、しっかりと地域に根を張って、焼酎を造り続けている。あなたも、一滴、一滴、丁寧に蒸留された宮崎焼酎の「個性」を心ゆくまで味わってみませんか。

 

※甲類焼酎
連続式蒸留器で造った高濃度のアルコールを、水で36度未満に薄めて造られた焼酎。無色透明で原料の風味はほとんどない。そのまま飲むほか、梅酒など果実酒や酎ハイの材料に用いられる。

※本格焼酎
(乙類焼酎)/単式蒸留器で蒸留したアルコール分45度以下の焼酎。主原料となる、いも、米、麦、そばなどの風味を楽しめる。乙類焼酎を本格焼酎と呼ぶことを提唱したのは、故江夏順吉氏(前霧島酒造代表取締役)で、世界の蒸留酒と変わらない品質が認められ、平成14年11月から法的にも正式な呼び名となった。



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