5. 温 泉・鉱 泉

  水温42゜C以下でも人工的に加熱を要しない温泉はもっぱら霧島火山周辺に限られている。しかし、鉱泉・冷泉に相当するものは県内各所に知られ、その一部は加熱して浴用に供されている。これらの温泉・鉱泉水の貯留岩は第三紀・第四紀の火山岩類のほか、四万十累層群(日南層群)や宮崎層群などの堆積岩類である。

 (2) 京町・吉田地区の温泉

  霧島火山北西麓のえびの市内には京町・吉田などの温泉がある。京町温泉は吉都線京町駅付近および川内川河畔にあり、鹿児島県側の吉松温泉地帯と一連のものである。何れもボーリングによって得られたもので、泉源孔数は京町地区のみで約50井にのぼる。温泉水貯留層は加久藤層群下部層と新第三紀安山岩類との二つに区分され、泉質・水温を異にする。すなわち加久藤層群下部層中のものは重炭酸塩によって特徴づけられた地層水型の泉質を示し、温度は40゜〜58゜Cであるが、新第三紀安山岩類中のものは硫酸塩によって特徴づけられ、温度は60゜〜70゜Cに達する。地下の温度勾配は南西方の吉松に向かって大きくなり、東方の加久藤に向かって小さくなる。なお、新第三紀安山岩類の上面は京町中心部で地表下350〜400m付近にある。

  吉田温泉は新第三紀安山岩類中から湧出するもので、鹿之湯と亀之湯とがあり、深度20〜40mの掘さくのよって36゜〜48゜Cの温泉水が得られている。この温泉が多量の遊離炭酸ガスを含んでいることは、天然ガスの項で既に述べたとおりである。

  なお、前述の水質的特徴の相違を第16表に示す。

第16表 京町・吉田地区の温泉成分

位 置 貯留岩層

深度
(m)

水温
(゜C)

free
CO2
(cc/l)

溶存成分(ppm)

HCO3- Cl- SO42- Na+ Ca2+ Mg2+
川内川南岸
(京町中心)
加久藤層群
下部層
345 45.0 13.9 202.6 7.1 6.3 60.5 7.7 2.2
川内川北岸
(京町北部)
228 46.3 57.0 334.4 20.4 20.8 90.0 19.3 8.6
京町中心部 新第三紀
安山岩類
433 64.3 31.0 2,132.0 715.8 1,448.3 1,165.0 293.8 19.0
吉田温泉鹿之湯 36 39.0 592.2 1,269.2 360.6 343.6 508.0 149.3 80.8