令和4年度宮崎県感染症対策審議会概要
本県では、宮崎県感染症対策審議会条例(平成11年条例第11号)に基づき、感染症対策の総合的な推進を図ることを目的として、宮崎県感染症対策審議会(以下「審議会」という。)を設置し、各種感染症対策について審議等いただいています。今年度の審議会については、昨年度に引き続き、書面開催としました。
1.日時
令和5年2月8日書面開催
2.委員
安田厚生委員、清山知憲委員、小嶋崇嗣委員、山中篤志委員、岡山昭彦委員、
吉田建世委員、又木真由美委員、荒瀬みえ委員、濵砂澄子委員、藤本洋子委員、
本田憲一委員、矢野安正委員、斉藤真広委員、柏原文和委員、児玉康裕委員
3.議事
報告事項
- 令和4年度宮崎県新型コロナウイルス感染症対策協議会について
- 令和4年度宮崎県麻しん・風しん対策について
- 令和4年度宮崎県感染症発生動向調査委員会議について
- 令和4年度宮崎県蚊媒介感染症対策会議について
4.資料
- 令和4年度宮崎県新型コロナウイルス対策協議会資料(PDF:666KB)
- 令和4年度宮崎県麻しん・風しん対策推進会議資料(PDF:1,592KB)
- 令和4年度宮崎県感染症発生動向調査委員会議資料(PDF:3,774KB)
- 令和4年度宮崎県蚊媒介感染症対策会議資料(PDF:818KB)
5.要旨
書面資料により、事務局より報告を行いました。委員からの主な意見は次のとおりです。
(「→」以降は事務局回答)
(1)令和4年度宮崎県新型コロナウイルス対策協議会について
- 国の方針がまだはっきりと見えてこないため動きにくいと思うが、5類移行に伴い、県内医療体制に新たな問題がでてくることが予想される。今までの経緯から考えると、特に入院管理を必要とするコロナ検査陽性者での混乱がでるものと考える。現時点でのCOVID-19は、同感染症による重篤な肺炎へ至ることはわずかで、ほとんどは軽症もしくは無症状で他疾患の加療が必要なケースがほとんどである。5類移行後は、COVID-19の既往も不明瞭となると思われ、単に検査陽性だけで無症状でも入院、手術などを避ける施設も出てくることが考えられ、特に夜間休日の救急医療でも支障がでてくると思う。今までの宮崎県のCOVID-19医療体制でわかることは、横並びの医療機関同士での話し合いのみではコンフリクトが生じることが多くなると予測され、これはその後の県内医療連携全体にも影響が出ると思われる。今までのように救急医療体制にも障がいがでると思われ、医療保険行政のイニシアチブが不可欠であると考える。
→5類移行に伴う医療提供体制への影響を抑えられるよう、国から具体的な方針が示されましたら、県医師会など関係機関としっかりと連携しながら、必要な対応を行なってまいります。
- 会次第については、記載どおりで分かったが、できれば今後の県としての対応や方針等について決定した内容等や活発な協議となった項目や主旨などが記載されてると分かりやすいのではと思った。
→今後は、議事の概要を添付するなど、協議結果がわかるよう工夫してまいります。
(2)令和4年度宮崎県麻しん・風しん対策推進会議について
- ここ数年間、麻しん、風しんの患者数が低く抑えられている。コロナ対策として、日常的に飛沫・エアロゾル感染予防策が行われたこと、人同士の接触機会が抑制されたことに加えて、麻しんに関しては海外との行き来が極端に少なかったことが理由ではないかと思う。そうであれば本年春以降にコロナ対策の緩和が進むにつれて、麻しん、風しんの患者数が激増する恐れがあるのではないかと心配している。啓発を強力に行い、ワクチン接種率の向上を図ることをお願いしたい。
→御指摘のとおり、次年度以降は、コロナ対策の緩和に伴い、麻しん・風しんをはじめとする各種感染症対策により一層の注意が必要になります。麻しん・風しんに関しては、市町村等と連携し、定期接種を含む予防接種の勧奨や風しんの追加的対策と対象者への抗体検査の勧奨を行なっていきます。また、海外渡航者への予防接種の勧奨も含め新聞やテレビ、ラジオ、SNS等各種メディアを活用し、啓発活動を行なっていきます。
- 風しん抗体検査事業については、対象が昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性となっているので、職域部門との連携を考え、特に宮崎県健康づくり協会も各事業所の検診・ドック等を行なっているので、チラシを同封したり、待合室に案内の掲示をすると効果的と思う。全国の接種率の高い県へ(95%以上)どのような啓発方法をとっているか調査も良いのではないか。
→他県の取組も参考にしながら、対象となる世代に情報が行き届くよう、啓発場所や方法について検討し実施してまいります。
(3)令和4年度宮崎県感染症発生動向調査委員会議について
- 梅毒の報告数増加については注意が必要だが、そのほかの性行為関連感染症、とくにHIVなどに大きな増加がみられていない。梅毒に関しては、実際の患者数増加に加えて、見かけ上の発見数の増加があるのかもしれないと感じた。伝播予防に関する啓発をさらに進めることはもちろん必要だが、そのあたりの解析も有用かもしれない。
→梅毒については、全国的には性風俗従事者、利用者の間で感染が広がっているという指摘がございます。さらに、本県での発生動向について注視し、分析等を行いながら、各種対策に繋げていきます。
- 性感染症が増加し、特に梅毒感染者の低年齢化が増加している県内は、教育委員会との連携はもちろんのこと、若年層に対する健康教育を行い、早いうちから助言していくことが大切ではないかと考える。ホームページだけでなく若い人達の啓発につながる周知、啓発をお願いしたい。
→啓発方法について、関係部局と連携し、検討、実施してまいります。
- 明らかに数年前から梅毒患者の増加を臨床現場では実感している。先天梅毒と考える症例もあり、治療可能な疾患であるために県内でも何かしら検査に容易にアクセスできるシステムが構築できるとよいと考える。
→保健所では、梅毒をはじめとする性感染症の相談に応じており、必要に応じて検査を行なっております。相談・検査は無料・匿名で行なっております。メディアやSNS等を活用し周知を行なっているところですが、より多くの方に情報が届くよう啓発方法等について検討してまいります。
- (HIVについて)コロナ流行により検査数は減少しているか。コロナ禍にて拾い上げがうまくいっていない可能性もあるかと考える。
→当課では、県内保健所で実施している無料検査件数のみの把握となりますが、平成31年が641件、令和2年が390件、令和3年が362件、令和4年が419件となっており、コロナの影響により検査受検者は減少していると推測されます。
- 小児の伝染性疾患はここ数年間やはり減少しており、コロナ対策の影響ではないかと思われる。裏返すと免疫のない小児が増加している可能性があり、今後コロナ対策緩和が進むにつれ、リバウンドによる激増が心配である。小児のいる家庭や学校・幼稚園等での啓発が必要と思われる。
→現在、発生動向調査によるモニタリングを継続して行なっており、週1回の感染症週報による還元、こども感染症情報としての啓発を行なっています。今後、学校・幼稚園の所管課とも連携し、各種感染症の啓発を行なっていきます。
- 腸管出血性大腸菌感染症の患者数は圧倒的に9歳以下の幼児がおおいようですが、その感染原因は何が考えられますか。幼児がレバーや牛肉の生食をするとも考えられないのですが、感染経路は調査されていますか。
→腸管出血性大腸菌患者発生時には、保健所が調査を行い、喫食状況等の確認を行なっております。令和4年度は、レバー等の生食等、明らかな経口感染者は確認されていません。8月には、日南市の保育所での集団発生が確認されており、接触感染が推定されます。
- MRSAが増加しているのが気になる。コロナ対策ではMRSA等の耐性菌伝播は防げなかったと考えられる。また医療機関や介護施設などでは、コロナ対策が優先され、耐性菌対策が十分でなかった可能性もあり、再度耐性菌対策の啓発が必要と思われる。
→耐性菌対策についての啓発について、検討、実施してまいります。
- SFTSは相変わらず宮崎県が全国で一番患者数が多いという良くない状況であり、宮崎県の大きな問題と思われる。生命にかかわる感染症であり、マスコミ等にも取り上げられており、宮崎大学等とも連携して、より有効性の高い啓発や予防方法についても検討する必要があるかと思う。
→御指摘のとおり、SFTSは本県における課題の一つであると考えます。動物からの感染事例も確認されており、今後は、獣医師等、関係者への注意喚起も積極的に行う必要があると考えております。また、県民への継続的な啓発が必要ですので、啓発グッズやメディアの活用等、有効的な啓発について検討、実施してまいります。
- SFTSの感染経路について、2013年からの97例において、マダニ由来と考えられるものが29例で30%となっていますが、それ以外のものの中でネコ等の動物由来と考えられるものは、どれくらいありますか。感染経路が不明なものが半数以上のようですが、どう考えたら良いのでしょうか。
→動物からの感染が推定される症例(ヒト発症前に接触していた動物のSFTS陽性が判明したケース)は97例中3例です。保健所は、疫学調査時に動物との接触状況を聞き取っております。刺し口に関して「刺し口なし、記載なし・不明」となっているケースについては、医師から提出される発生届の記載内容をもとに集計しております。これらのケースについて、マダニによる感染を否定するものではございません。
- ペット、特に放し飼いの飼い猫での罹患例も認められる感染症となっており、ワンヘルスの概念からのアプローチが必要な感染症と考える。保健行政として動物にSFTSが疑われる場合の検査体制の構築にも一歩踏み入ることを検討してもよい疾患と考え、県行政でも縦割りでない柔軟な対応も検討してもよいのではないだろうか。ワンヘルスとしてのSFTS対策の構築は、現在国内発生のない狂犬病対策にも応用されると考える。
→動物に関する業務を担当している衛生部局とも協働し、動物(愛玩動物、産業動物)自体の感染対策、また、動物からヒトへの感染対策について検討してまいります。
(4)令和4年度宮崎県蚊媒介感染症対策会議について
- コロナ対策に伴う海外との往来減少のためマラリアなどの感染症は激減していたが、コロナ対策緩和に伴いリバウンドが予想されるため注意が必要と思われる。
→随時、動向を確認しながら、啓発に努めてまいります。
- 宮崎県では発生がゼロでも、継続的に調査は必要だと思う。
→令和2年度以降コロナ対応の影響等により実施できていない状況となっております。御指摘のとおり、継続的に動向を確認する必要があると思いますので、次年度以降、実施に努めてまいります。
- 宮崎県においては、令和2年、令和3年は0件であるが、啓発資材を作成して、何もないうちから県民への啓発をお願いしたい。3月の配付をよろしくお願いしたい。県内医療機関、保健所だけでなく大きな公民館配付もお願いしたい。
→継続的な啓発を続けてまいります。