
宮崎県感染症発生動向調査2011年第30号
第13巻第30号[宮崎県30週(7/25〜7/31)、全国29週(7/18〜7/24)]
宮崎県感染症週報
宮崎県感染症情報センター
宮崎県健康増進課
宮崎県衛生環境研究所
宮崎県第30週の発生動向
定点医療機関からの報告総数は1,204人(定点あたり35.2)で、前週比91%と減少した。
前週に比べ増加した主な疾患はA群溶血性レンサ球菌咽頭炎で、減少した主な疾患は流行性耳下腺炎であった。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の報告数は60人(1.7)で前週比150%と増加した。例年同時期の定点あたり平均値(1.5)の約1.1倍である。延岡(4.3)、日向(2.3)、中央(2.0)保健所からの報告が多く、年齢別では3歳から5歳で全体の約半数を占めた。
手足口病の報告数は399人(11.1)で前週比95%とほぼ横ばいであったが、例年同時期の定点あたり平均値(3.2)の約3.4倍と多かった。県全体で警報レベルを超えており、延岡(16.0)、高鍋(14.5)、小林(13.7)保健所からの報告が多かった。年齢別では6ヶ月から3歳で全体の約8割を占めた。
ヘルパンギーナの報告数は318人(8.8)で前週比83%と減少したが、例年同時期の定点あたり平均値(3.9)の約2.3倍であった。県全体で警報レベルを超えており、延岡・小林(各15.3)、宮崎市(9.8)、高鍋(7.5)保健所からの報告が多かった。年齢別では6ヶ月から3歳で全体の約8割を占めた。
細菌性髄膜炎1人が宮崎市保健所から報告された。患者は1ヶ月の男児であった。
無菌性髄膜炎1人が宮崎市保健所から報告された。患者は0ヶ月の女児であった。
保健所別流行警報開始基準値超過疾患
疾患別流行警報開始基準値超過疾患
全数把握対象疾患
- 1類感染症
報告なし。
- 2類感染症
結核7例が宮崎市(4例)、高鍋(2例)、延岡(1例)保健所から報告された。
《宮崎市保健所》
- 70歳代の男性で肺結核。咳、痰がみられた。
- 20歳代の女性で無症状病原体保有者。
- 60歳代の男性で無症状病原体保有者。
- 70歳代の男性で結核性胸膜炎。呼吸困難がみられた。
《延岡保健所》
70歳代の男性で肺結核。痰がみられた。
《高鍋保健所》
- 50歳代の男性で肺結核。
- 50歳代の男性で疑似症患者。発熱がみられた。
- 3類感染症
報告なし。
- 4類感染症
報告なし。
- 5類感染症
- アメーバ赤痢2例が宮崎市保健所から報告された。
- 30歳代の男性で腸管外アメーバ症。腹腔内腫瘍がみられた。
- 40歳代の男性で腸管アメーバ症。下痢、腹痛がみられた。
- 後天性免疫不全症候群2例が宮崎市保健所から報告された。
- 20歳代の男性でその他(指標疾患以外の発症:腸管外アメーバ症(腹腔内腫瘍))。発熱、疼痛がみられた。
- 30歳代の男性でAIDS。胸痛、発熱がみられた。
病原体情報(衛生環境研究所 微生物部)
細菌(平成23年7月19日〜平成23年8月1日までに検出)

- 都城保健所管内で2名の乳幼児から百日咳菌が検出された。
- 日南および都城保健所管内で発生した腸管出血性大腸菌O26の集団発生は終息したが、陽性者の大半は0歳児およびその家族であった。
ウイルス(平成23年7月19日〜平成23年8月1日までに検出)

※コクサッキ―ウイルスA6型・ライノウイルスはPCR法により検出
- 手足口病と診断された小児6名及び成人1名からコクサッキ―ウイルスA6型(CA6)が検出された。今回診断された患者の発疹は、一般的な手足口病の発疹より大きい例、大腿・上腕に目立つ例、口腔内に発疹を認めない例、全身性に発疹を認める例などが報告され、過去の典型的な手足口病の発疹と異なる傾向であった。本年は、全国的に手足口病の報告数が5月中旬頃から増加しており、その主要な原因ウイルスはコクサッキ―ウイルスA6型である。臨床症状は従来の手足口病と発疹の出現部位が異なり、大腿部や臀部、上腕に認めることや、水疱は扁平で臍窩を認めこれまでより大きいこと、などが報告されている。県内では6月初旬頃から手足口病の報告数が急激に増加したが、7月に入ってからはやや減少した。本県では、過去5年間に毎年約1〜2例が分離されているが、本年のように多く検出されたことはない。感染者は主に小児であり、保育所や幼稚園、家族内感染例の報告が多いことから、手洗い・うがい等の徹底した感染予防対策が必要である。
- 無菌性髄膜炎と診断された新生児からコクサッキ―ウイルスB1型が分離された。
本年に入って、7例分離されており、うち5例が無菌性髄膜炎を発症した新生児からの分離であった。コクサッキ―ウイルスB1型は、無菌性髄膜炎やヘルパンギーナの原因ウイルスとして知られている。全国では、コクサッキ―ウイルスB1型の昨年の報告数は、過去3年間のおよそ4倍であったことや、本年に入って県内ですでに7例分離されたことなどを考えると、今後の動向に注意が必要である。また、当所においては、コクサッキ―ウイルスB1型は、1993年〜2008年までは分離されていないが2009年に2例分離されている。
- 手足口病を主徴とする成人1名からコクサッキーウイルスA6型とともにライノウイルスが検出され、重複感染が考えられた。
- 非定型例手足口病と診断された小児からコクサッキーウイルスA16型が分離された。コクサッキーウイルスA16型は、手足口病の主要な病原ウイルスとして広く知られている。
全国第29週の発生動向
定点医療機関あたりの患者報告総数は22.1で、前週比81%と減少した。今週増加した主な疾患はなかった。減少した主な疾患は伝染性紅斑であった。
ヘルパンギーナの報告数は12,644人(4.0)で、前週比86%と減少した。宮崎県(10.6)、北海道(7.0)、千葉県・東京都(6.9)からの報告が多く、年齢別では1歳から4歳で全体の約7割を占めた。
手足口病の報告数は27,880人(8.9)で、前週比81%と減少した。福岡県(21.2)、佐賀県(20.5)、熊本県(18.8)からの報告が多く、年齢別では1歳から4歳で全体の約7割を占めた。
全数把握対象疾患
- 1類感染症
報告なし。
- 2類感染症
結核345例
- 3類感染症
細菌性赤痢5例、腸管出血性大腸菌感染症116例、腸チフス1例、パラチフス1例
- 4類感染症
A型肝炎1例、マラリア1例、レジオネラ症18例
- 5類感染症
アメーバ赤痢8例、ウイルス性肝炎1例、急性脳炎1例、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例、後天性免疫不全症候群10例、ジアルジア症2例、梅毒10例、風疹2例、麻しん5例
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