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宮崎県衛生環境研究所の外部評価について

平成27年度外部評価結果を受けて


  1. はじめに
    当研究所は、平成19年4月に「宮崎県衛生環境研究所調査研究課題評価実施要綱」を策定し、研究課題の公平性・客観性・透明性の確保に努めて参りました。
    この調査研究評価実施要綱に基づき、平成27年8月6日に、外部の有識者(別表1)で構成される「調査研究評価委員会(以下「委員会」という。)」を開催し、平成26年度に終了した調査研究課題、平成27年度も継続して実施する課題及び平成27年度から新たに実施する課題の中で特に重要な6つの調査研究課題に対して、幅広い視点から数多くの有益な意見や助言をいただきました。
  2. 評価結果と今後の対応
    今回の課題に対する評価、意見等については別表2のとおりで、評価については5段階評価で、いずれも4(高く評価できる)でした。
    委員会で出された貴重な意見等を参考に、実際に調査研究課題に取り組んでいく中で、一部計画の見直しなどを行いました。
    今後とも、委員会の意見等を踏まえ、所業務の活性化に取り組んでいくとともに、県内における保健衛生・環境保全分野における科学的・技術的中核機関としての職務の遂行に努めて参ります。

別表1 宮崎県衛生環境研究所調査研究評価委員会委員名簿
(任期 平成27年4月1日〜平成29年3月31日)

氏名 所属
南嶋 洋一(委員長) 古賀総合病院 臨床検査部長(宮崎大学名誉教授)
山本 隆一 九州保健福祉大学 副学長
村 一志 宮崎県医師会 常任理事
後藤 義孝 宮崎大学農学部 獣医学科教授
土手 裕 宮崎大学工学部 社会環境システム工学科教授


別表2 調査研究課題に対する評価委員会の主な意見と所としての対応

百日咳菌の分離培地改良および効率的な検査法の構築
課題 ◇ 研究期間 ◇ 評価

百日咳菌の分離培地改良および効率的な検査法の構築

研究期間
平成25年度〜平成27年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 提示されたコロニーの比較は、純培養菌を用いたものであったが、百日咳菌以外の混在菌も増殖してくる検体からの分離培養の場合にも同様の結果が得られるのか。
対応 実際の臨床検体からも同様の結果が得られています。また、従来、菌の分離がほとんど期待できないとされてきたワクチン既接種者や成人患者の検体からも菌が分離されています。
意見2 百日咳菌は増殖が遅いので、従来、1〜2日でコロニーが見られたらまず混在菌とみなす、百日咳菌は培養3日以後にコロニーが出現する、そして1週間コロニーが見られなかったら百日咳菌陰性、と判断してきたが、今回の分離培地の改良は、上記の経験則と両立するのか、あるいはこの経験則の修正を必要とするのか。
対応 今回の改良培地でもコロニー検出までの時間は短縮できておりません。従来通り3〜4日後に出てくるコロニーが百日咳菌となります。
意見3 培養時間の短縮化は菌の特性上かなり難しいと思われるので、こうした細菌学的研究を持続させ、迅速診断法の向上に貢献していただけることを期待している。
対応 菌の分離は重要と考えられますので、遺伝子検査をうまく取り入れながら効率的な菌の分離法について研究を進めてまいりたいと考えています。
VNTR(Variable Numbers of Tandem Repeats:縦列反復配列多型解析)検査導入による県内結核菌分子疫学解析データベースの作成     
課題 ◇ 研究期間 ◇ 評価

VNTR(Variable Numbers of Tandem Repeats:縦列反復配列多型解析)検査導入による県内結核菌分子疫学解析データベースの作成     

研究期間
平成25年度〜平成27年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 保健所の実地疫学調査で浮上した患者間の関連性を裏付けるVNTR型別符合例の蓄積を期待したい。
対応 現在までに施設内・家族内感染以外で、患者間の疫学的関連を裏付けるVNTR型別符合例はありません。今後も保健所と連携を取り、症例を蓄積し未知の感染経路の解明に努めてまいりたいと考えています。
意見2 今後、検査対象となった結核患者の背景(年齢、海外渡航歴、HIV感染の有無など)と治療結果・予後について情報を可及的に収集し、VNTR型別解析の結果と対比した研究が望まれる。
対応 県内の新規登録結核患者の8割以上が60歳以上の高齢者のため海外渡航歴、HIV感染の有無などは認められません。今後若年者の症例が蓄積されてくれば、治療結果・予後等とVNTR型別解析の結果と対比した研究ができると考えています。
意見3 検査データの蓄積が進むことで、宮崎県における精度の高い発生源の特定や感染経路の解明に利用できることを期待する。
対応 精度の高い発生源の特定や感染経路の解明のためには、解析検体数のさらなる蓄積が必要です。今後も研究を継続し期待に応えるよう努力してまいりたいと考えています。
意見4 集団発生事例が注目されやすいが、今や多くの県民が海外に出かけ、多くの外国人が宮崎を訪れる時代であり、そうした海外渡航時における感染が問題になると思われる。それらは多分散発事例として扱われるのであろうが、こうした中には多剤耐性結核菌も含まれる可能性があり、しっかりとした監視体制によって県民の健康を守って頂けることを期待したい。
対応 外国人との接触による県民の感染は、本県ではまだ認められておりませんが、外国人の発症や外国人同士の接触による感染の事例があります。今後はVNTR型別を識別できる体制を構築し県民に情報提供を行ってまいりたいと考えています。
微生物が関与する食品の臭気成分とその識別方法の検討
課題 ◇ 研究期間 ◇ 評価

微生物が関与する食品の臭気成分とその識別方法の検討

研究期間
平成24年度〜平成26年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 臭気は、培地成分(とくに蛋白質が動物由来か植物由来か)、さらにpHによっても変化するので、反応条件の検討が必要であろう。
対応 今回は3種類の培地を用いた試験を行い、その組成の違いで生成する臭気成分に違いがあることを確認しました。今後はpHを含めた諸条件で検討を行いたいと思います。
意見2 対象とする食中毒菌として、カンピロバクターも加えるべきであろう。また、「くさや」、「キムチ」、「納豆」、「ブルーチーズ」などの特有な匂いを発する食品の分析結果をとっておくことは、本アプローチの説得力を高めるであろう。
対応 カンピロバクターも検討したいと思います。また、特有な匂いを有する食品についても分析を行いたいと思います。
意見3 食品の腐敗には、単独の腐敗菌の他、多くの夾雑菌が存在し、その匂いの解析は、困難となる。混在する食中毒菌を迅速に検知することが、研究の目標となる。「夾雑菌+食中毒菌」、「代謝産物と混在菌の同時分析」などの複合的研究とするのも一案ではないか。
対応 多くの夾雑菌が存在しその影響が大きいことが確認できたので、多変量解析等を含めた複合的な研究に取り組み、食中毒菌の迅速検知法を検討していきたいと思います。
食品中残留農薬試験の迅速化についての検討
課題 ◇ 研究期間 ◇ 評価

食品中残留農薬試験の迅速化についての検討


研究期間
平成27年度〜平成29年度

評価:4
(高く評価できる)


意見1 サンプル破砕に使用するホモジナイザーは、近年高効率で安価な機器が市販されるようになっており、従来の仕組みとは異なる新たな機器の使用も検討していただきたい。
対応 現在当所で実施している試験法で使用している機器の中には、ホモジナイザーのように1回につき1検体ずつしか処理のできない機器もあり、迅速化を妨げている1つの要因となっています。 そのため、同時に複数検体の処理が可能となるような機器の導入も含め、効率の良い試験方法の検討を進めていきたいと考えています。
意見2 試験の迅速化は確かに望ましいが、精度管理は大丈夫なのか。従来法で得られるデータとの間に齟齬が生じる恐れがないのかが気になる。
対応 新たな試験方法を検討した後は、その試験方法での妥当性評価を実施し、精度管理上問題がないことを確認いたします。
県内主要河川における水生生物に関する調査研究−水辺環境学習の充実化に向けて−
課題 ◇ 研究期間 ◇ 評価

県内主要河川における水生生物に関する調査研究−水辺環境学習の充実化に向けて−

研究期間
平成27年度〜平成29年度

評価: 4
(高く評価できる)

 

意見1 水生生物調査は、水質汚濁の長期的・複合的な状況を反映しており、調査をとおして河川の水質を知ることができる。宮崎県のこども達のための宮崎県版の教材作成は、水辺環境学習向上に貢献でき、こども達の理科離れ阻止にも役立つものとして、評価できる。実施方法に工夫しながら、進めていただきたい。
対応 調査方法には、当時環境庁の「大型底生動物による河川水域環境評価のための調査マニュアル(案)」や国土交通省の「河川水辺の国勢調査 基本調査マニュアル[河川版](底生動物調査編)」等が策定され、マニュアルを基本とした調査を実施しております。「全国で統一した評価方法を基に、地域の実状に即した方法へ展開している」自治体もありますので、他県等の情報を収集しながら御期待に応えられる調査を実施していきたいと考えています。
意見2 この調査研究を実際の環境保全に結びつけるため、環境学習に必要な情報提供だけでなく、県民自らが水辺環境保全活動等に積極的に参加できるような仕組み作りにもつなげていただきたい。
対応 本県でも、親子で参加できる環境学習イベントの実施等、自然とふれあうことができる機会を設けており、多くの方に参加をいただいております。環境学習を環境保全活動につなげていくために、先進的な取り組みをしている他県の事例を参考に関係部局等と連携し、仕組みの構築について検討して参りたいと思います。
意見3 貴重種が発見された場合の公表について、配慮が必要である。
対応 貴重種に関するデータを公表することによって貴重種の生息域における開発等の回避、減少を期待できる一方、乱獲のリスク等を伴っています。そのため、環境省が公開している一覧及び県のレッドデータブック等を参照しながら、公表について慎重に検討し情報の提供に努めたいと考えています。
意見4 「本県における公共用水域の水質の推移に関する研究」と併せて、今後さらに研究内容を充実発展させていただきたい。
対応 水生生物による解析は、水質の理化学検査を補完する意味で重要ですので、解析の際に「本県における公共用水域の水質の水域に関する研究」との関連性についても併せて検討したいと考えています。
本県における公共用水域の水質の推移に関する研究
課題 ◇ 研究期間 ◇ 評価

本県における公共用水域の水質の推移に関する研究

研究期間
平成27年度〜平成29年度

評価: 4
(高く評価できる)

 

意見1 公共用水域水質の中長期的な推移を把握し、地理情報等を含めて評価する計画は、県民にとって重要なものと思われるので結果に期待している。調査結果は行政への寄与度も高いものになると思われるが、結果を分り易くまとめきちんと公表することで、県民の啓発にもつなげていただきたい。
対応 調査結果については、行政各課に提供するほか、当所の所報、ホームページ等で広く県民の方々に公表する予定としています。また、その際には、県民の方が環境学習の場でも利用できるような、より分かりやすい形で提供していきたいと考えています。
意見2 水質改善が遅れている地域を優先的に解析対象とするとともに、BOD経年変化の解析では、畜産等地域産業にも注目して評価を行っていただきたい。
対応 頂いた御意見をもとに、年次計画を考慮しながら、本県内の水質改善が遅れている地域を優先的に調査を開始しています。今後、対象を県内全域に広げていく過程の中で、畜産等地域産業との関連性も含めて調査・解析を行っていきたいと考えています。
意見3 各水域の有機物や微生物の種類把握等の取組みも併せて検討していただきたい。
対応 ご指摘のとおり、水中の有機物や微生物は、水質と密接な関係性があります。調査を進める中で、一部の地点において微生物の大量発生現象である赤潮に由来すると思われる傾向も確認できていますので、解析の際には、当所が過去に実施した赤潮に関する研究とも関連付けて検討していきたいと考えています。
意見4 公共用水域水質の常時監視により県民は安心して生活できている。調査の結果、水質悪化の傾向が確認された場合に、速やかな対策が実施されるようお願いしたい。
対応 調査の結果、常時監視の地点や頻度等に不足が見られれば、次年度以降の計画に反映できるよう提案していきたいと考えています。なお、現状においても常時監視において水質の悪化が認められた場合は、関係機関と連携して速やかに原因や汚染の範囲の確認を行なっており、所としてもこの仕組みを活用していきたいと考えています。

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