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宮崎県衛生環境研究所の外部評価について

平成28年度外部評価結果を受けて


  1. はじめに
    当研究所は、平成19年4月に「宮崎県衛生環境研究所調査研究課題評価実施要綱」を策定し、研究課題の公平性・客観性・透明性の確保に努めて参りました。
    この調査研究評価実施要綱に基づき、平成28年7月28日に、外部の有識者(別表1)で構成される「調査研究評価委員会(以下「委員会」という。)」を開催し、平成27年度に終了した調査研究課題、平成28年度も継続して実施する課題及び平成28年度から新たに実施する課題の中で特に重要な6つの調査研究課題に対して、幅広い視点から数多くの有益な意見や助言をいただきました。
  2. 評価結果と今後の対応
    今回の課題に対する評価、意見等については別表2のとおりで、評価については5段階評価で、いずれも4(高く評価できる)でした。
    委員会で出された貴重な意見等を参考に、実際に調査研究課題に取り組んでいく中で、一部計画の見直しなどを行いました。
    今後とも、委員会の意見等を踏まえ、所業務の活性化に取り組んでいくとともに、県内における保健衛生・環境保全分野における科学的・技術的中核機関としての職務の遂行に努めて参ります。

別表1 宮崎県衛生環境研究所調査研究評価委員会委員名簿
(任期 平成27年4月1日〜平成29年3月31日)

氏名 所属
南嶋 洋一(委員長) 古賀総合病院 臨床検査部長(宮崎大学名誉教授)
山本 隆一 九州保健福祉大学 副学長
村 一志 宮崎県医師会 常任理事
後藤 義孝 宮崎大学農学部 獣医学科教授
土手 裕 宮崎大学工学部 社会環境システム工学科教授


別表2 調査研究課題に対する評価委員会の主な意見と所としての対応

本県における重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関する実態調査









本県における重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関する実態調査

研究期間
平成26年度〜平成28年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 抗体陽性が4例あるのでウィルスがいることの証明にはなっているのでしょうか。野生の動物で検査できれば良いのでしょうが。
対応 抗体陽性は、ウイルスがいた(ウイルスに感染した)証明になると思われます。野生動物については検討中で、検体の保存、運搬方法等支障がクリア出来れば実施したいと考えています。
意見2 SFTSVの県内分布状況を把握するためには、捕獲された野生動物や家畜、伴侶動物に寄生するマダニとそれら動物が保有するウイルスまたは抗体の調査が有効だと思うので、獣医師会や関連団体と連携した調査研究を継続していただき、ヒトへの感染ルート解明に努めていただきたい。
対応 今回の犬・猫の調査に関しては宮崎県獣医師会及び所属の獣医師に多大なる御協力を頂き調査研究を進めることが出来ています。今後も獣医師会や宮崎大学、猟友会等と連携しながら、県民の為に有意義な調査を実施したいと考えているところです。
意見3 マダニはSFTSVのみならず紅斑熱等のリケッチアも保有していることから、ダニ媒介性感染症という観点からの研究も併せてお願いしたい。
対応 現在得られている犬、猫の血液等を基にこれらの関連性についても検討を行いたいと考えています。
意見4 犬、猫の調査事例を増やす必要がある。
対応 現在のところ本県北部、県央北側及び県西の一部のみですが、残りの県央南側、県南部、県西部についても順次調査を実施していく計画で、最終的には犬・猫各250匹程度検査を実施する予定にしています。
意見5 本調査研究は、以下の課題・疑問の解明に寄与するものと期待される。
@自然界におけるSFTSウイルス(SFTSV)の感染環
ASFTSV保有マダニは全国に遍在するのに、なぜ感染者は西日本20府県に偏在するのか、その理由
B宮崎県は感染者が33名で、なぜ日本一であるのか、その理由
対応 @について
調査はダニからのSFTSV遺伝子検出が必須であると考えられるため、今後更なる検討を実施していく予定にしています。

Aについて                       
感染者が西日本に偏在する理由の調査は、感染者のいない県との比較が必要となることから当県のみの調査は難しいと考えています。国立感染症研究所等の調査から現在出ていない東日本でも今後発生する可能性はあると考えています。

Bについて                       
宮崎県が患者数第1位の理由は不明ですが、平成25年から平成27年までの年間患者発生数はほぼ横ばいであり、一例として全国第2位の患者数である愛媛県では、SFTSに対する啓発活動で患者発生数が大幅に減少しており、感染症対策室も含めて調査結果をいかに県民に周知させるかも大切であると考えています。
意見6 方法論としては、春から秋の、マダニの活動期であり、感染者も多発する時期に、発生した患者の生活環境を対象にスポット調査する、というのは如何であろう(一部日南で行われたように)。
また、シカとの接点は如何であろうか(他県との比較上)
対応 スポット調査は現在も実施しておりますが、他の発生地についても可能な限りスポット調査を実施していきたいと考えています。野生動物に関する調査についても、採血した検体の保存、輸送問題等、調査上の支障についてクリア出来れば、実施したいと考えているところです。
意見7 マダニが冬季でも活動し感染症を引き起こす可能性があることなどを明らかにしており、県民への冬季におけるマダニ対策についても広報活動をしっかりおこなっていただきたい。
対応 今回の中間報告、過去の調査結果及び今年度実施予定の調査結果については取り纏めを行い、所報や研修会、また感染症対策室と協力し県HP等で広く県民への広報を実施したいと考えています。
意見8 ペット動物の1〜3%がマダニに噛まれてSFTSウイルスに感染した形跡が認められており、ペットに対するマダニ対策についても提言していることは、高く評価される。
対応 今回の犬・猫関連の調査は飼い主への意識調査と、調査結果を基にした飼い主へのSFTSに対する情報提供、防除方法の周知が目的の一つとしてあります。調査が全てまとまった後は衛生管理課や獣医師会と協力して小動物臨床病院等を通じて飼い主への周知を行えればと考えているところです。
県内で分離された乳糖非分解性大腸菌の解析     









県内で分離された乳糖非分解性大腸菌の解析

研究期間
平成27年度〜平成29年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 E.albertii の下痢症患者から分離された同菌のルーツ・原因・媒介食品を知りたい。また、E.fergusonii の由来や薬剤耐性を知りたい。
対応 ルーツや原因などを明らかにすることは、重要な問題だと考えています。現在のところ、E.albertiiE.fergusonii も分離数が少ないことから、今後さらに菌株を収集し、調査を継続していきたいと考えております。
意見2 CDTは、E.albertii の場合、全例陽性であり、病原因子の1つと解釈できないであろうか?
対応 病原因子の一つである可能性は高いと考えられますが、本研究は遺伝子の検出のみで毒素タンパクの定量が行われていないことから、病原性との関与が明確にできないのが現状です。病原因子の一つとするには、さらなる研究が必要だと考えています。
意見3 CDTは、ジフィシル菌のCDTとの混同を避ける上で、例えばEalbCdt といった表記などは如何であろうか。CDTには細胞致死性膨張性毒素"なる訳語が散見されるが、distendingを膨化"とする貴訳には賛成である。ただ、致死″は通常個体を対象に用いられるので、もし定訳(学術用語)がまだ無ければ、宮崎衛環研オリジナルの細胞致死性膨化毒素"などは如何であろうか。
対応 ジフィシル菌のCDTとは、たしかに混同しやすく区別できるような表記が望ましいと思います。ただ、現在散見される文献ではCDTと略されることが多いのでCDTと表記させていただきたいと思います。CDTの訳語については、定訳がないことから、細胞致死性膨化毒素を訳語として使うことを検討したいと考えております。
意見4 下痢患者の大腸菌の解析は重要であるが、研究課題名からは、報告された研究内容を掴めない恐れがある。
対応 研究の進捗により課題名と研究内容にずれがあると思います。最終的な報告時には、当初の課題名が変更になる可能性があることを了承いただき、研究内容に沿った課題名にしたいと考えております。
意見5 課題内容の前半と後半(乳糖非分解性菌とCDT)の関連性はないのでしょうか。
対応 乳糖非分解性菌であるE.albertii は、CDTが検出されるという知見があったため、乳糖非分解性とCDTには関連性があるのではないかと考え、調査を行いました。しかし、乳糖非分解性の大腸菌からはCDTがほとんど検出されなかったことから、結果として関連性の低い内容となっております。
意見6 本県の下痢症患者から分離される病原大腸菌解析の一環であることは理解できるが、最終目的(この研究で何を明らかにし、県民の負託にどう応えたいのか)をもうすこし明確に記述されたほうが良い。課題名もこの調査研究の重要性を感じ取ることができないので工夫されては如何かと思う。
対応 目的を明確にし、当初の課題名が変更になる可能性があることを了承いただいた上で、研究内容に沿った課題名になるよう工夫したいと思います。
意見7 下痢症患者から分離される病原因子不明のE.coli 株(乳糖非分解性株を含む)と疾病との関連性を明らかにすること(関連性を評価する方法の検討が必要)に尽きるのではないかと考える。
対応 疾病との関連性を明らかにするために、今後も病原因子不明のE.coli 株については、継続して菌株を収集していきたいと考えております。
食品中残留農薬試験の迅速化についての検討









食品中残留農薬試験の迅速化についての検討

研究期間
平成27年度〜平成29年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 今後の試験対象として、輸入農産物の「ポストハーベスト農薬」を加えてみてはどうか。
対応 ポストハーベスト農薬は食品添加物としての残留基準が定められているため、現在当所では食品添加物試験で対応しています。しかし、あくまで「農薬」であるため、残留農薬試験の試験対象に加えることについても検討の余地はあるかと考えます。
意見2 農産物の試験品目に「マンゴー」は入っていないのか。
対応 本年度の農産物試験品目にはマンゴーは含まれておりません。しかし、マンゴーの生産量は全国第2位であり、本県の代表的な農産物として挙げられることも多いことから、今後関係課とも協議し、試験品目の候補の1つとして検討する必要があるかと考えます。
意見3 今後も引き続き、試験の精度向上とコストの削減方法など、問題となりそうな部分について、改善に向けて努力してほしい。
対応 昨年度は畜産物中の残留農薬試験の迅速化についての検討を行い、妥当性評価も終了しましたが、検討した全ての農薬で妥当性が評価されたわけではないため、さらなる試験法の改良及び精度向上についても今後検討していく必要があると考えます。また、コストについては作業性や作業時間と比較しながら、削減の余地があると判断されればその方法を模索したいと考えます。
意見4 他県の試験研究機関等と連携することで、より効率的な研究が期待できる。
対応 全国や九州の試験研究機関が参加する協議会が毎年開催されているため、そのような場を利用して担当者間での情報の共有及び解決への協議等行っていきたいと考えます。
牛乳及び蜂蜜中の残留動物用医薬品の迅速分析試験法の検討及び妥当性評価









牛乳及び蜂蜜中の残留動物用医薬品の迅速分析試験法の検討及び妥当性評価

研究期間
平成26年度〜平成28年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 コリスチンはヒトの耐性菌感染症治療として広く使用されているが、近年、家畜へ成長促進として乱用されたことで、プラスミド媒介性の耐性遺伝子を持つ家畜由来の大腸菌が出現しています。このことから、コリスチンの家畜等への残留をモニタリングすることは重要であるので、動物用医薬品の試験対象品目に加えてみてはどうですか。
対応 薬剤耐性菌の出現と拡散に関しては公衆衛生上重要な問題です。今後、残留動物用医薬品の検査項目にコリスチンを追加する方向で検討いたします。
意見2 本調査研究で検討された試験法では、テトラサイクリン系抗生物質の定量試験に適していなかったので、今後の当該試験法の改善に努めてください。
対応 今後はテトラサイクリン系抗生物質に注目し、試験法の改善を行います。
九州・沖縄・山口地方酸性雨共同調査研究









九州・沖縄・山口地方酸性雨共同調査研究

研究期間
平成25年度〜平成28年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 非常に価値ある調査研究である。
環境モニタリングは継続性が重要であるため、今後も研究の継続が望まれる。
対応 測定データを蓄積していくことは非常に重要だと思いますので、今後も環境モニタリングを継続していきたいと思います。
意見2 県民に向けてのわかりやすい成果の公表が望まれる。
また、国際的な場での発表も期待する。
対応 衛生環境研究所成果発表会において本内容を報告する予定としておりますので、県民の皆様にもよりわかりやすく説明を行いたいと思います。その後、概要を研究所年報にまとめるとともにホームページ上に広く公開したいと思います。
また、発表の場については、まず、九州衛生環境技術協議会大気分科会において口頭発表を予定しておりますので、共同研究の皆様のご意見も踏まえ検討したいと思います。
意見3 大気汚染の原因物質について、自然由来と人的な活動由来を区別できる方法の開発を期待する。
対応 自然由来と人的な活動由来を区別する方法としては、大気の測定結果から逆に辿って、各種発生源の寄与割合を推定する方法があり、現在、環境省等により、PM2.5の成分分析結果に係る発生源粒子の化学成分データ(発生源プロファイル)の整備が進められております。
これらには酸性雨調査で測定しているイオン成分も含まれることから、今後、研究の参考にしていきたいと思います。
意見4 硝酸イオン濃度の季節変動について、経年変化の有無について解析してほしい。
対応 硝酸イオン濃度について、各地域ごとに、各季節ごとに経年変化を解析してみましたが、不規則に増減を繰り返しており主立った傾向は見いだせませんでした。
ICP-MSによる県内事業場排水中重金属類分析条件の検討









ICP-MSによる県内事業場排水中重金属類分析条件の検討

研究期間
平成26年度〜平成28年度

評価:4
(高く評価できる)

意見1 分析手法の検討という技術的な課題であり、さらなる進展を期待する。
対応 当所における検査は、事業者を行政指導する大切な根拠となることから、今後も分析手法の検討を含む技術の向上を継続し、期待にお応えできるよう努力してまいりたいと考えています。
意見2 県民に向けてのわかりやすい成果の公表が望まれる。
対応 研究成果については、当所の研究成果発表会や所報等での報告の他、ホームページへの掲載により広く県民に公表する予定としています。その際には、可能な限り、県民に分かりやすい内容で情報提供していきたいと考えています。
意見3 本研究の最終目的がどこにあるのか、今回の報告では良くわからなかった。
対応 事業場排水中の重金属類(Cd、Pb、Asなど)は規制強化により、より低濃度を正確に分析することが要求されています。また、事故や災害等を含め環境汚染が懸念される場合、多くの検体を短時間で分析する必要があります。本研究は、従来よりも短時間、かつ、正確な微量成分の分析を目的としており、これにより、水質汚濁とそれに伴う県民の健康被害の未然防止のための行政の迅速な対応が可能となると考えております。

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